第10回  ヒャダインへの期待

 第2章に於ける魔法使いブライは、正直、序盤に関しては、さほど活躍するキャラクターとは言い難い。

 

 一応、お得意の攻撃呪文ヒャドを最初から習得しているため、アタッカーとして活躍できる・・・と思いきや 実はさほどでもない。

 勿論、アリーナやクリフトの攻撃が貧弱な最序盤でこそ、パーティーNO1のアタッカーとして、一瞬の輝きを見せるのだが、それも長くは続かないのだ。


 この理由は明白で、本作でのヒャドという呪文の威力設定による。

 

 前作Ⅲを先にプレイしたことがあるユーザーならば、初めてブライが仲間になったときに、そのステータス画面で、レベル1にしていきなりヒャドを習得していることに驚き、狂気乱舞(流石に大袈裟か)したのではないだろうか。

 

 というのも、前作でのヒャドは同じ単体攻撃呪文初歩であるメラの優に3倍のダメージを叩き出すという高威力呪文だったのだから。

 勿論、その分、最初から習得しているはずもなく、5レベル前後までレベリングをしてようやく習得する呪文なのだ。消費MPに関してもメラが2に対して3と、一応の差別化は図ってあった。

 ただ、それであってもレベル5で攻略できるエリアなど、やはり序盤であることには変わりなく、その時点のモンスターなら一撃で軽くおつりがくるくらいの威力を見せたのだ。

 ※このあたりは、第1回でも少し触れているので参考までに


 そんな前作でのヒャドのイメージを持ち、期待したであろうユーザーをあっさり裏切ってしまったのがⅣでのヒャドだった。

 なんと、その威力はⅢでのメラと同等に下方修正されてしまっていたのだ。無論MP消費も2に抑えられたわけだが

 

 これは一体どういうことか。それも、これまでの筆者の考察を読んでくれたならば、すぐに察せられるはず 

 そう、これは魔法使いの呪文の習得2分化の弊害なのだ。

 本来、Ⅲでは魔法使いが最初に習得していたメラの呪文を、今作のブライは割り当てられていない。

 しかし、第2章で唯一の攻撃呪文の使い手として、やはり最初から攻撃呪文は習得させるべきだし、実際そうしたい。

 そう考えたとき、唯一割り振られた攻撃呪文であるヒャド系の初歩であるヒャドを

レベル1から習得させておくというのは、至極当然の選択だろう。

 ただし、その際に、Ⅲでの威力をそのままに実装すれば、さすがに強力すぎる。

 だから、威力を下方修正した。というのがこのような事態に至った顛末だろう。

 

 誤解を恐れずに言えば、これは、ヒャドではない。ブライ専用のメラだ。


 何故、こう言い切るか。それは、ヒャドが敵モンスター専用呪文としてのみ登場する次作Ⅴは置いて、その次のⅥでミレーユ専用の攻撃呪文として復活を遂げた際には、Ⅲ登場時と同程度のダメージに再調整されていたのだから

 

 つまり、今作のヒャドは皆が知る一般的なヒャド、強いヒャドとは別物なのだ。

 

 ここへきてヒャダインだけでなくヒャドの不遇まで言及することになってしまったのは皮肉なものだが、とりあえず ヒャドはまだ良い。

 次作で、危うき目に見舞われながらも、未だにシリーズで登板しつづけているのだから 問題はあくまでヒャダインなのだ。


 さて、そんな弱体化ヒャドのおかげで、せっかくのマニュアル戦闘ながらもその存在感をいまいち発揮できずにいたブライだが、実は、本章後半に突如として覚醒するのである。

 ヒャドの後、補助呪文や移動系呪文ばかり習得していき、その弱き氷刃ヒャドで細々と戦うのが関の山だったブライに転機が訪れるのはレベル11に達した後だ。

 ここへきて念願の次のヒャド系呪文であるヒャダルコを習得するのだ。

 

 このヒャダルコも、実は威力自体はⅢより下方修正されている。おそらく威力からみて前作のベギラマと同等といったところか。

 これも第1回で言及しているが、前作でのヒャダルコはベギラマを1回り強くしたような呪文であった。(ダメージにして10~20差程度)

 それがベギラマ同等に調整されているのだ。

 実はこれについても、先ほどのヒャド=メラ論で、説明が着く。

 前作で魔法使いがベギラマを習得するのがレベル14、それに対してヒャダルコは20レベルまで上げねば覚えない。

 つまり、このレベル11時点で、前作の魔法使いの習得呪文に合わせるならば、ベギラマが妥当だという話なのだろう。

 従来のヒャダルコではバランス的に若干強すぎるという判断の結果なのではないかと推察するわけである。

 

 しかしまぁ、ここまで前作のゲームバランスに準じなければならなかったのは、それだけに前作の成功が尾を引いていたということの顕れなのだろう。恐るべしドラクエⅢ

 

 さて、このようにヒャドに続いて下方修正されたヒャダルコであったが、なんとそんな事情などおかまいなく、本作では大活躍してしまった呪文なのだ。


 まず、この第2章では初めて習得できる範囲攻撃呪文であり、クドイようだが、それは=初の範囲攻撃手段なのだから、その時点で当然役に立たぬわけがない。

 さらに、前作より弱体化したとはいえ、習得レベルを考えればその差9である。

 しかも同威力のベギラマよりも低レベルで習得できるという点で、時期的に考えてもむしろ強いほうだといえる。

 そして何より、このあたりのレベル帯で訪れるであろう、第2章の随一の難所『さえずりの塔』の攻略では、この呪文の有無で、目に視えてその難易度が変化する。

 

 ブライがヒャダルコを習得する同レベル帯では、まだアリーナのステータスの伸びが緩く、前衛なのにパッとしない(この後、ぐんぐん成長する時期に入るのだが)ことに加え、早くもクリフトの非力さ加減が露見し始める。

 

 そんな中で、初登場する手強いモンスターたちを、たった1発で壊滅させられる

ヒャダルコはまさに救世主に他ならないのだ。

 アリーナの打撃1発では、とりこぼしてしまうようなモンスターさえ難なく葬れる

それがヒャダルコの威力なのだ。

 しかも、一部のモンスターを除けば割と効き易いのも、またこの呪文が使い勝手が良い印象を残すことに一役買った。

 

 このヒャダルコのおかげで大躍進のブライ爺。このままいけば、次に待ち構えた我らがヒャダインの活躍にも、期待が持てそうなものだが、現実はそんなに上手くはいかないもの


 結論から言わせて貰おう。


 ここまで愛読してくださった方々は、薄々感じてはいただろうが、ご察しのとおり第2章で、ヒャダインがその猛威を奮うというのは、非常に厳しい話なのである。

 

 ただし、あくまで『厳しい』のであって、全くそれが不可能という話ではない。

 そこへ至るには、悠遠とも思える道のりが待っているのだが・・・果たしてそれは・・・

                              



 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る