夢 (午前四時の幻想)

夢 午前四時の幻想

 夜が、終わった。空にわずかな藍色。


「今日が」


 はじまる。すぐに太陽が昇ってくる。それまでの、ほんの少しの間の藍色。


 もうすでに、昨日の記憶はない。夢を介すると、もう何も覚えられない。


 自分にとっては、夢がすべてだった。

 眠りに落ちるその瞬間。そして、眠りから醒めても夢を覚えている瞬間。

 そのためだけに、今日を生きる。覚えていない夢のために、現実を使う。


 細い線のように繋がっていた夢の記憶が、だんだん千切れていく。その音が聴こえる。


 一度失われた記憶は、戻ってこない。

 それでも目をとじる。ついさっきまでそこにあった幻想を、もういちど繰り返すために。

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