猫のいる図書館

そら

小手鞠るい 「きみの声を聞かせて」 (偕成社)

短かな人の優しい言葉より、知らない人が作った音楽や物語や絵に心癒されるときがあります。

もちろん、周囲の人たちに支えられて立ち上がるんですけど、ふとした瞬間、そういう芸術がすっと心に寄り添ってくれる…気のせいかもしれないけれど、自分に語りかけてくれているようで、そんな瞬間、唯一無二の親友に出会えたような気持ちになります。

「きみの声を聞かせて」は、心に傷を負い、声がでなくなった少女の物語。

彼女はSNSを通してアメリカに住むピアノ弾きの少年と出会います。

顔も名前も知らない2人は、自分たちの作った音楽と詩の往復書簡を始めます。

彼から彼女へ、音楽を。

彼女から彼へ、詩を。

文章も会話もありません。

でも、優しく柔らかな想いが、互いの心に降り積もっていきます。

つらいこともあるけれど、それでも優しいこの物語は、いつのまにか、読者であるわたしの心にも優しく柔らかなものを届けてくれます。

open end なので、本をパタンと閉じた後、ラストのその後へと想いをはせます。

彼らは、きっと、ちょっとはにかみ、それから彼らのそれぞれの言葉で語り合うのだろう。

それがわたしだけのラストシーンです。

みなさんの心にはどんなラストシーンが描かれるのでしょうか。

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