三十六章



 牙族によって沙爽を奪還され、計画の狂った二泉主と撫羊はよう州へとって返した。悠浪ゆうろう平原では、連日の大雨で戦況は互いに芳しくなく、進むことも退ることもほぼない。両軍とも主の不在という状況で思いきった行動は出来ずにいたし、瓉明さんめいとしてはいまだ沙爽の心情をおもんぱかって撫羊の誅伐ちゅうばつではなく捕縛を望んでいた。その当人も敵軍内にいないとなって、総攻撃の機会であると配下たちにも牙族高竺こうとく軍にも説かれたが、二泉軍にはかつて猛将なりと他国までその名を轟かせた現大司馬であり大将軍の騰伯とうはくがいる。小競り合いで兵を損耗させて寡軍で総力戦を迎えるのははばかられた。それに各諸都市は泉川の氾濫と決壊に注意すべき時節、州兵が出兵している今、戦後戻る者を失っては水工に支障を来たす。大きな泉では都水官と徒刑囚ざいにんだけでは人夫が足りないからだ。それで集めた州兵を一部帰還させるなどという平和呆けした意見も出されたが、それは儀同三司ぎどうさんしの怒りを大いに買った。鬼のように各都水台に文を送りつけ、泉川の異変に特に留意し、水工に人手が必要であれば民から徴用するよう命を下した。

 いずれにしても甜江てんこうの開放と梅雨は敵にとっては恵みとなり好都合で、戦いは長期化の様相を呈していた。




 族領の叛乱を収めた珥懿はすぐに四泉へ戻る旨を合議で示した。驟到峰しゅうとうほうから牙領へ向かっている四泉主一行は到着次第そのまま留め置き、戦況を落ち着けてから本国へ招請することは依然変わりない。当主も伴當はんとうも出払うので、叛逆者らの処罰も帰還してから行うことになった。


 依然、侈犧を筆頭に兵五百はそのまま牙領を守護させる。斬毅ざんき鈴榴りんりゅうの軍には蓮宿を守っていた灘達なんたつ軍が合流した。灘達が兵を動かしたということは二泉国府は越境していない州兵の出兵を完全に中止したということだ。しゅく安背あんはいの混乱は凄まじく、想定したとおりそれを聞いた二泉民が危機感を募らせて泉畿せんきに殺到していた。

 珥懿は斬毅たちと合流したのち、後背から二泉の本体を攻める。見合わせて斂文れんもん軍と四泉本軍とで三点挟撃する予定となった。



 随伴ずいはん砂熙さきのみ、行きと同じく東の獣道を通り国境の霧界へ出る旅程だ。野牛に跨ったところで、門から妹が駆けてきた。

「どうぞお気をつけて」

「歓慧、まだ寝ていなくてはならんぞ」

 心配顔は珥懿と砂熙を交互に見た。

「絶対に、帰ってきてください。歓慧はずっと待っています」

 砂熙が力を込めて頷いた。珥懿も無論だ、と言って手綱たづなを取る。

「お前の罪とやらを裁いてやるのはこの私だからな」

 言えば泣きそうに頷いた。それで珥懿はもう振り返らず、野牛は地鳴りを立てて平原を駆け抜け霧と森の中に見えなくなった。



 翌日の夕刻、入れ違うように牙領入りを果たした沙爽は甕城おうじょうの内門の前で待ち構えていた少女の姿をみとめ、思わず馬を下りた。静止を聞かず一目散に走る。あかい夕陽が広場を照らして髪も肌もだいだい色に染めあがった少女は琥珀の瞳を細めて微笑んだ。

「鼎添さま、おかえりなさいませ。私のせいで二泉に、」

 沙爽は駆けてきた勢いそのままに抱きついた。


「良かった…………‼」


 様子を箭楼せんろうから見ていた跿象としょうらが野次を飛ばす。おだてる声にやかましい、と暎景が一喝した。

 落ち着いたのか力を緩めた彼に、呆気にとられていた彼女は笑いなおした。

御髪おぐしが黒いのでどなたかと思いました」

 ああ、と髪をつまむ。だいぶん色が抜けて茶色に変じていた。

「早く洗いたいな。さすがに脂で湿って気持ちが悪い」

「すぐに湯のご用意をいたします」

 沙爽は歓慧を覗き込んだ。

「体は平気なのか?随分とやつれたようだが」

「鼎添さまもお痩せになりました」

 うん、と情けなく自分を見下ろした。まだ痣も消えておらず骨が浮き出ている。

「貧相な姿になってしまったな」

「育ち盛りではありませんか。すぐに元に戻ります」

 そうだな、と返して微笑む。近づいた暎景から手綱を受け取ると再び跨り、馬上から手を伸べた。首に提げた羽飾りが揺れる。

「歓慧どの。薔薇閣しょうびかくに行こう。私たちの滞在先はあそこと決まっている」

つつしんでご案内致します」

 歓慧も再び笑ってその手を取った。





「……そうか、やはり牙公はどうあっても私を戦場に出すつもりはないと」

 久しぶりの歓慧の手料理に舌鼓を打ちながら、沙爽は不服に顔を歪ませる。しかし暎景と茅巻は珥懿に同意した。

「今度こそ御身の安全を図り、ここで戦況を見守ってもらいます。泉主が無事におられるとわかっていれば瓉明どのも懸念がなくなり戦いやすいでしょう」

「それはそうだが、瓉明はすでに私が穫司にいないことを知ったのだろう?燕麦えんばくとは顔を合わせたことさえない。私自身がいなければ士気は上がらないのでは?」

「確かに拝顔叶えばそれに越したことはありませんが、泉主が危ないところにいればそれだけ気を乱すことにもなり得ます。瓉明どのは俺ほどには牙族を嫌ってはいないようです。族軍もついていますし」

 難しげに黙る。暎景は茅巻と目配せし、さらに畳み掛けた。

「お気持ちは分かりますが、今はお体の回復が第一です。場当たりに出て行って族主の足を引っ張ってもお嫌でしょう」

 沙爽は二人の言に渋々頷いたが、納得していないのは明らかだった。



 とどまって数日、戦況は目まぐるしく変わっているようだった。本隊こそ全軍を動かしての総力戦はまだないものの、珥懿と砂熙が帰還する前に斬毅らの軍は二泉軍から葉州山柏さんはくを奪い返し、逆に州の斂文軍は伏兵に隙を突かれ交戦中、燕麦は瓉明に斂文軍を加勢するよう要請した。斉穹と撫羊は然濤ぜんとう阯阻しそ間の街道を通過し種州の中ほどから悠浪平原へ合流の帰途にあった。珥懿たちが捕らえようと回り込んでいるが間に合うかは分からない。おそらく、二人が本陣に帰還すれば一気に大戦の火蓋が落とされる。



 自分はこんなところにいてはならないのに、と沙爽は東の大庭を歩きながら空を見上げていた。猶主ゆうしゅである沙爽には牙領である程度の自由が与えられており、独りになりたいと思いつめた様子で言った彼にさすがの暎景も不承不承、散歩を認めたのだった。


 くれぐれも中に入らないよう言われているゆずりはの木杭の並ぶ平野を見渡し座り込んだ。つやつやと若芽を出した牧草が日光を反射させ、爽やかな風でなびくさまはまるで戦など存在しないかのように穏やかな情景だ。しかし沙爽の心を晴れさせはしなかった。

「いったい、どうしたら……」

 すぐにでも燕麦や瓉明のもとに行きたい。自分には見守ることしか能がなくとも、労って心の支えになることは出来るはずだ。遠い地で文だけ読んでいるのと、戦えずとも現地にいて同じ時を共有しているのとでは全く心境が異なる。

 体はもう支障ないように思う。侈犧に稽古をつけてもらっても剣を取り落とすことはないし、数回打ち合っても息も切れない。

 沙爽は木棒を背にしてうずくまった。無力というのがこれほど情けなく辛いものだと知らなかった。過去の安穏としていた自分を殴ってやりたい。


 俯いたまま、脚の間にある草をぼんやりと眺めていると、すぐ側で聞こえた荒い息遣いに弾かれて頭を上げた。


 体をよじって振り返れば佇んでいるのは巨狼。長い二つの犬歯からよだれがつたっている。座ったまま後退ったが、ふと首を傾げた。どこか見覚えのある狻猊さんげい……ヒョウだったからだ。


「もしかして、可弟かとか?」


 牙族のものは大きさも体表の模様もみな同じようなので見分けがつきにくいが、少しは個体差というものはある。

 可弟は大きく欠伸あくびをすると杭の向こうで伏せた。そのまま爛々らんらんとこちらを見つめる。もしかして、あちら側に来るのを待って食う気なのかも、と沙爽は笑み、境界を隔てて向かい合わせに膝を立て座り込んだ。

「その節は世話になったな。礼を言う」

 可弟は前肢の間に頭を挟み、眼だけを忙しなく動かした。こうしているとただの大きな犬のよう、なんとなく愛着が湧く。そういえば、この最凶最悪な妖たちは今回すべて留守番だった。

「お前たちが出てきてくれればいいのにな……」

 牙領での猋たちの活躍を沙爽は実際には見れなかったが、詳しく聞いている。

「可弟、私を四泉に連れて行ってはくれないか。狻猊の脚ならすぐだ……なんて」

 冗談めいて肩を竦め首を振った。じっと鬱金うこんの瞳でこちらを見つめていた可弟はふいと立ち上がると平原の奥へと駆け去ってしまった。

 それを見送り、ため息をついていると今度は城のほうから声が掛かった。


孩子ぼうず、何やってんだ。危ねぇぞ」


 以前一撃食らわせたことも忘れたかのように態度の変わらない挨拶に沙爽もわだかまることなく笑みを見せる。侈犧の隣には小柄な少年がいた。

はんどの!長らく久しぶりだ。身体の具合はいかがか」

「いつの話をしてるんです」

 淡雲たんうんは苦虫を噛み潰したように渋くそっぽを向く。侈犧が声をあげて笑った。

「相変わらず愛想のない奴だ。孩子が帰ってきたから顔くらい見せてやれと言ったらひとりでは行きたくないと言うんでな」

 うるさい、と淡雲は腕を組んで背を向けた。

「蕃どのが私を守ってくれなかったら、今頃ここにこうしていなかった。改めて礼を言う。ありがとう」

「任務だったから、当たり前です」

 つっけんどんに返されて相変わらずだと苦笑する。彼は当初からこんな態度ながら、泉畿への行き帰り何かと世話を焼いてくれた。

「蕃どのは城の守りか」

「今は俺の指揮下五百といる。ま、このまま何事もなけりゃ出兵することはねぇな」

「……侈犧どのは、自分が本軍から外されて不満に思うことはないのか?」

「どういうこった?」

 不思議そうに首を傾げた。

「なにも前線から後方に回されるのは役立たずだからじゃない。むしろ逆だ。敵に攻め込んでも領地が無いんじゃあ帰れなくなるじゃないか。戦は攻めより守りのほうが難しい。それを任されるのは信用されてるってことだ」

「それは主君でも同じことが言えようか。主だからこそ、牙公のように皆を率いて前線へ行くべきなのではないだろうか。二泉主や撫羊でさえそうなのに、私だけ安全地帯にとどまっているのはやはりおかしい」

「一概には言えねぇ。俺たちが戦場で死んだってそのせいで水が飲めなくなるわけじゃないからな。泉主を絶対に死なせたくないのなら、敵のいない陣地に置いておくほうが守らにゃならん兵たちにとっては安心だし、民も別に責めやしないだろ」

 沙爽はこぶしを握った。

「では、私が出て行かないせいで戦が長引けば?私が危険を忌避するあまりに、民が余計に死ねば、もし勝利したとしても彼らは戦に尻込みしたそんな泉主を受け入れるだろうか。きっと尊敬は得られない。もちろん、私は剣技にうといし、二泉主のように戦慣れもしていない素人だ。しかしここで立たねば、民は自らの王はどうしたと不安に思うだろう。守るべき者が居処いどころもわからないのでは、自分たちは一体誰のために戦っているのだと虚しくなるのではないか。守るに値せぬと、そう思うのではないか。私が一兵士だったら、たとえか弱くとも小童でも、ときの声の号令くらいは掛けて士気を鼓舞してほしい」

 心中を吐露すれば相手は困ったように頭を掻く。

「気持ちは分からんではないが、俺たちにどうこうできるもんでもない。当主のめいだしな」

「……そんなことはない」

 沙爽は二人を見据える。なぜか淡雲の顔色が変わった。

「私は牙族と同盟を組んだ。しかし、牙公の下についたわけでは断じてない。盟約は対等な関係をうたったもの、たとえここでは牙公が主としても、十三翼も万騎も四泉のものにもなったということだ。つまり私にも指揮権はある」

「ちょっと待て」

「待たない。お主のごとし、と牙公もそれを認めただろう。族民は私に当主に対すのと同じように仕えよと。であれば、族領で私が権力を制限されるいわれはないはずだ」

 侈犧はそれはそうだが、と困って黙ったままの淡雲に助けを求める。しかし彼は二人に構わず、じっと一点を見て動かない。


「……?おいどうした」

 侈犧が問うて、少年は目線を外さないまま丘を指差した。つられて両人も境界の彼方を見る。

 軽快な足取りで近づいてくる群れ、黒雲のような猋たちが一直線にこちらにやってくる。

「……なんだ?」

 三人とも息を飲んで近づいてくる獣たちを凝視する。そのつらがはっきりと見える位置まで近づき、たまらず淡雲は剣を抜いた。侈犧はそんな彼を制す。

「境界を越えることはないさ」

「分からないだろ!越えてきたらどうする!」

 忌々しげに手を振りほどいて構えた。

 群れは一斉に三人のもとへと集うと、ゆずりはの境界のきわで止まった。沙爽は呆然と見回す。

「飯の時間だと勘違いしたんじゃねぇか。寄り過ぎたな。離れよう」

 侈犧が言ったが沙爽はその場にひざまずいた。先頭にいるのは可弟、何かを訴えかけるような目でこちらを見た。



 沙爽は震えた。その可能性に驚愕すると共に、内心膝を叩いたもう一人の自分がいた。



「四泉主?」

 牙族の二人はなにかを呟いた小声に不審な目を向ける。


「……よし」


 猋に言っているのだと理解して侈犧が素早く肩を引いた。

「孩子、やめろ。冗談でも言うな」

「冗談で言っているのではない!」

 つよい剣幕に目をみはる。改めて沙爽は手を伸べた。

「おいで、可弟」

 しかし可弟は境界を越えず、逡巡ののちしばらく動きを止め、そうして鼻を上に向けて高くいた。小犬が甘える時のような切なげな音だった。

 群れが二つに割れた。その道の真中を歩んでくるのは特に大きな一頭、片耳が欠けていて全ての髭が白い。

「たしか……嘉唱かしょう

 珥懿の連れていた猋の頭目だ。顔躯の所々に古傷をつけた立派な犬狼はゆったりと立ち止まると沙爽を窺うようにこうべを低くした。


「嘉唱、お前の許しがほしい。私を四泉の国境まで連れて行ってはくれないか。いま行かなければ、私は一生このことを恥として生きていかなければならない。私は牙公のしもべではなく、義兄弟きょうだいなのだ。守り守られる存在でありたいのだ」


 人に相対あいたいするように嘉唱の瞳を真摯に見据える。じっとこちらを捉えた瞳はまるで心を見透かすようだ。やがて、大きな鉤爪かぎづめが地を掻く。なにかを期待するように。



「……よし!」



 叫んだ声に呼応して、嘉唱が杭のこちら側へ悠々と前肢を踏み出した。後ろで見ていた侈犧と淡雲が仰天して後退る。

「おいおいおい、どういうことだこりゃあ」

「俺が知るか」

 剣から手を離せず遠巻きにした二人を後目しりめに越境者は沙爽の周りをうろうろと歩き回り、鼻を近づけた。高鳴る心臓の音をなだめながら、沙爽は鼻先にそっとてのひらを伸べる。ごわごわとした手触りの額に触っても、嘉唱はその獰猛な口を開くことはなかった。


「鼎添さま!」


 悲鳴を叫び、城から歓慧が走り出てくるのが見えた。

「歓慧、当主からなにか聞いてるか」

 侈犧に問われた歓慧もまた狼狽しながら状況を把握しようと首を巡らす。

「なにも。いったい、どうして」

「わからない。だが嘉唱は協力してくれるようだ」


 沙爽が微笑んだのを牙族の面々は唖然と見つめる。初めてこの少年にただならぬ異常さを感じ取って無意識にさらに一歩退った。


「本当に境界から出ている……」

 歓慧は背筋に悪寒を走らせながら猋の群れを見渡した。木杭を越えたのは嘉唱のみだが、他の猋たちも今にもこちらに流れ込みそうな勢いだ。

「可弟、お前もおいで」

 沙爽がさらに呼ばわり、若い一頭も平気で寄ってくる。歓慧は頭が追いつかないままともかく静止に入った。

「鼎添さま、これ以上猋をお呼びになるのはおやめください」

「呼んだら、出てきてくれたが。牙公の命か」

「私には分かりませんが、おそらく。猋は本来、あまり人に近づけてはならないものです。どうか」

 沙爽は頷いて、顎を撫でるとお戻り、と優しげに声を掛けた。すごすごと可弟が境界の中に戻る。

「嘉唱も、ありがとう。また呼ぶ」

 歓慧は、だめです、と訴えたが沙爽は構わず手を振った。





 沙爽は三人に半ば連行されるように薔薇閣に送り届けられた。迷路の道を辿って城へと戻りながら侈犧が唸って頭を捻る。

「あんな光景は初めて見たぞ。猋があれほど易々と当主以外の命を聞くものか」

「だから猋なんて信用ならないんだ。あんな危険な化物、飼う必要はない」

 淡雲は憎々しげに言った。侈犧が押し黙っている歓慧に振る。

「ほんとに珥懿の命か。孩子に呼ばれたら、出ていいと?」

「猋は主の言うことしか聞かないし、聞けない。でも主の権そのものに取ってかわるような命令は、主自身にだって出来ないはず」

 歓慧は俯き加減で歩く。いまだ混乱していた。もしそんなことを本当に珥懿が命じていたのなら自分には話しているはずだ。

「しかしあれだ。前もあっただろう、孩子が同盟文を持ち帰ってきたときに」

 侈犧に言われて、歓慧はやっと顔を上げた。

「でも、それは姉上が無意識に鼎添さまを認めていたからで」

「同じことじゃないのか。珥懿が猶主と認めているってことは、孩子は牙族主でもあると猋に認識されたってことじゃ?」

 もっともらしいがそれは違う、と歓慧は冷静に考える。


 それが通るなら、代々の当主は猋を隷下に置くために『選定』なんてする必要がないということになる。当主である親が継嗣あとつぎである子に対して心から自分と同じ立場だと願えばそれで成立してしまう。それに、以前沙爽が触れるのを猋が許したのは境界の外、珥懿が傍にいる状態での接触だった。しかしいま主は遠く四泉の死地、猋たちに声を届けるすべもない。その状態で、猋がどういう理屈で境界を越えたのか歓慧には理解できなかった。明瞭に、彼らは沙爽の声を聞いて従ったのだ。それが何を意味するのかわからない。


「わからない。わからないけれど、このことは黙っておいたほうが良い。鼎添さまに力が傾いたと知れればどんな軋轢あつれきがあるとも限らない。侈犧、蕃淡、これは当主の命ということにしておいてください。姉上が帰ればどういうことなのかわかる」

 二人は頷いた。しかし、と侈犧は息を吐いた。

「さすがに肝が冷えた。猋に食い荒らされる終わりが頭をぎったぜ。それにあんな居丈高えらそうな孩子も初めて見たぞ。淡雲、お前知ってたか」

 そちらはつんと上向いた。

「さあな。だが同盟を認めさせる為に朝廷に赴いた折には、反対する諸卿に啖呵たんかを切って皆を驚かせたと聞いた。あながち泉主としての器量はあるんじゃないか」

「虫も殺せないような顔なのになぁ」

 歓慧はそっと息をついた。これは吉事であるのか、はたまた凶事か。前者であることを願う。どのみち思わぬ力を得た沙爽は四泉に戻ろうとする。それはもう誰にも止められないだろう。




 予想どおり、翌朝歓慧が薔薇閣を訪ねると、すでに起き出していた暎景が苛立った目で詰め寄ってきた。

「あの犬ころをどうにかしろ。でかくて邪魔だし獣臭いし油断したら食われそうで心が休まらん」

 共に居室いまに入れば爽やかな笑みを浮かべた四泉主は足下に可弟を従えていた。

「鼎添さま、境界からお出しになるのはおやめくださいと」

「そう思ったんだが、夜明けに散歩していたらついてきてくれて」

 はじめの恐怖はどこへやら、沙爽はまるで子猫に対するかのように可弟を撫で、その様子をかなり離れたところで茅巻が複雑そうに見ている。処置なし、と歓慧は内心呆れた。まあともかく、と思い直す。珥懿が主である限り理を失って暴れだしはしないし今のところ害はなさそうだから放っておこう。

「歓慧どの、城の者たちに伝えて合議をはかりたいのだが」

「なんのためにでしょう」

 もちろん、と沙爽は意気高く頷く。

「我らも出陣するんだ」

「泉主、本気ですか」

「今ならまだ瓉明や牙公の助けに間に合う。一人でも私は行くよ」

 場の三人は溜息をつく。おっと、と沙爽はにこにこと笑んだ。

「また誰かを使って気絶させようなんてことはさせない。その為に可弟を護衛として呼んだのだ」

「先ほどはついてきたとおっしゃいましたが?」

 それにはあはは、と悪気なく笑う。いくら反対してももう聞く気はないようだった。



 猋が沙爽に従う――実際に見ていない者は一様に怪訝な様子だったが、連れているのを見てやはり驚きに包まれた。

 合議といっても、城に残っている伴當と僚班りょうはんはごくわずか、丞必は意識があるもののいまだ起き上がれず、烏曚うもうも長距離を移動できないので、合議の場所は大広房おおひろまではなく通常商談で使う小房こべやで行われた。


 沙爽の意思が堅く揺らがないのを見てとり丞必もついに折れた。それで、行かせるとなれば絶対に安全な道筋を辿らなければならない。


灌鳥かんちょうが目をつけられて使えず、伝鳩はとを使ってのやりとりゆえ、当主との連絡に時差が生じているが、今現在まだ山柏さんはくにとどまられておられるのは間違いない」

 長靠椅ながいすに背を預けたまま、丞必は鉄扇を指し棒がわりに図面を示した。

「一方、二泉主と公主は種州を抜けた。四泉主がどこへ駐屯すれば安全かという問題だが、やはりいま一番安全なのは瓉明軍の背後に控える姚綾ちょうりょうさまの軍だ」

 しかし、と丞必は唸る。

「もしも瓉明軍が撃破されれば敵はまっすぐ北へ進軍してくる。そうなると勢いにまかせて再び穫司かくしに攻め込む可能性も無きにしもあらず」

 すだれの中の人影が口を開いた。

「姚綾軍を半数、西へ移動させて四泉主をその後ろに置いたほうがいい。そうすれば二泉軍を四方から包囲することもできる」

「二泉の逃げ場をなくすのですね」

 当主の彩影はしゃがれた声で続けた。「しかし、どうしても猋を使うおつもりか」

 沙爽は頷く。

「馬や野牛ではより日数がかかる。移動している間に交戦が始まってしまうし、体の不調を最小限に抑えるためにも由霧はなるべく早く抜けたい」

「その前に、何人連れて行く。猋をすべて移動に使ってもせいぜい六十人だが」

「後続で野牛で追えば良いだろう。姚綾軍と合流するならば先遣せんけん六十で事足りる」

「しかし、猋を人里に降ろすことは出来ません。民も混乱します。四泉に着いたら馬を調達しなければなりませんね」

「鈍馬では意味がなかろう。すべて駿馬しゅんめとは言わないがそこそこ速いのを用意しなければ」

 沙爽は顎に手を当てた。「……ろう州の国境守備軍から貸してもらえないだろうか」


 暎景と茅巻はなるほど、と頷く。南北に長い瀧州の西を隔てる国境の城壁は壁上を伝馬で行き来し守備にあたる。異状が生じた時に文面では用意する手間がかかり、伝える内容が制限される鳥だけでは細かな采配に不足があるからだ。よって速力に長けた軍馬を多数保有していた。長城は、北は九泉くせん国へ続く霧界との国境髄大ずいだい、南端は二泉国国境阯阻まで一直線に続いていた。

「瀧州であればまだ灌鳥も飛ばせます。州牧しゅうぼくに依頼して馬を集めてくれるよう要請してはどうですか」

「やはりそれが手っ取り早いでしょうな。となれば瀧州と種州との境に一番近い霧界まで猋で移動してから街に降りて馬を受け取ればいい。距離も稼げる」

 沙爽は地図に目を落とす。場所は、

仰坂げいはん

「そこそこ大きな国境の郡郷です。補給も出来ます。すぐに協力してもらいましょう」

 皆も異論ない。沙爽は見渡して大きく頷いた。

「よろしく頼む」





 出兵の期日までに、沙爽は猋全ての指揮権が自分にあることを再度確認した。そもそも頭目の嘉唱が沙爽の言葉を聞いているのだから、配下も従って当然なのだが、なにしろ前例がないだけに迂闊に猋を扱えない。珥懿のやっていたように口笛などで細かな指示は出せないが、仰坂までの二日間を人を乗せるだけならそこまで難易度の高い指図は必要ない。それに猋はある程度人語を解すわけで、嘉唱がこちらの意図を了解さえすれば仲間に伝えてくれるようだった。


 払暁、歓慧と一緒に餌やりを手伝わせてもらう。歓慧は珥懿が当主になってからというもの毎日朝晩、この仕事をやっているそうで、それぞれの猋の見分けがつき、名を呼べた。


「……これは、大変な作業だな……」

 霧界で狩った鹿や猪などの肉、街で不要とした余った臓物などが溢れるほど詰まった桶を並べた荷台を運びながら、沙爽は額の汗を拭った。新鮮なほうがもちろん良いが腐肉でも別に問題はないらしく、蓋を被せているもののむっとする臭気が肌にまとわりつくようだった。その為ににおい消しの毬香炉まりこうろが欠かせない。貸してもらった銀の透かし彫りの香球たまを腰帯に吊るし、ゆらゆらと揺らしながら門を出た。


「そういえば、歓慧どのは境界の中に入っても平気なのだな」

 杭の中に入って肉片を投げ与えていた歓慧は汚れた手で顔を触らないよう、頭を振って髪を払った。

「ええ。入っても良いようある程度なら当主から許されております。しかし逆は本来、当主でなければできないのです」

「境界の外に出すことか」

 歓慧は頷く。骨の付いたままの鹿の下肢を勢いをつけて放り投げた。

 餌が取り合いになることはない。猋の中では明確に序列が存在するが、年若いものが多く食べられるよう、頭目はじめ上位の者はまだ近くには来ず餌場を遠巻きにしてたむろしていた。

 早い段階で食べ始めた可弟に沙爽は笑う。

「鼎添さま、手ずから餌をお与えになると誤って牙にかけられることがございます。与える時は、投げて」

 わかった、と桶の中を素手でまさぐる。血と腐りかけの肉のにおいはあまり気にならず、むしろ今まで恐ろしいと思っていた獰猛な狻猊さんげいに自分が餌をやっているという状況に興奮して躊躇なく掴み出していく。



 桶が空になるまで与え終え帰ってきた城壁のなか、涼亭あずまやが張りつくようにして立っている突き出した岩山の上からは清水が流れ、黒い岩肌を濡らしていた。歓慧は蹲踞つくばいに寄って柄杓で水をすくい軽く手を洗うと、沙爽にも差し出した。

「歓慧どのはすごいな。こんなことも当主から任されているなんて」

 冷たい水で手を清め、涼亭に座って小瀑を見ながらしみじみと言った。早朝とはいえすでに少しばかり蒸し暑い。

 向かいに座った歓慧はくすりと笑う。

「当主はとてもお寝坊なんです。でも猋は日の出とともに起き出すので、誰かが餌をやらないと。それで私が任されているのです」

「そうなのか」

 相槌を打って、ふと首を傾げた。

「では、牙公が私に初めて顔を見せてくれた時は早起きさせてしまったのかな。申し訳ないことをした」

「いい薬になったかもしれませんね」

 歓慧が言って、互いに顔を見合わせて笑った。まるで、これから戦をしに行くなど嘘のようだった。


 緩やかな風にしばし目を細めていると、呼ばれて我に返る。歓慧は懐から見覚えのある帛紗ふくさを取り出した。


「鼎添さま、これをお返しいたします。黙って盗むような真似をして申し訳ありませんでした」

 捧げ持って涼亭の床に座り込んだのに沙爽も慌てて片膝をつく。

「やはり、そなたが持っていてくれたのか……!」



 包みを開くと現れたのは見覚えのある小さな白玉の、沙爽の、ひいては四泉王家の宝。それに、漆塗りの箱はおそらく同盟文書。

「もしかしたらくしてしまったのかと思っていた。ありがとう歓慧どの。もし持っていたら桂封侯に取り上げられていた」

 歓慧はもう一度額を床につけてから顔を上げた。

「私なんかが持ち出していいようなものではないとは分かっていました。でも、城の伴當たちが襲われ、賊が地下にまで入り込んできて他に預けられるような人もいなくて」

 沙爽は帛紗ごと歓慧の手を包んで首を振った。

「歓慧どので良かった。本当に」

「でも、お逃がしするのが遅れたばかりに、騎馬も失わせてしまって」

「それはそなたのせいではないよ。私がもっと早く馬を走らせれば良かったんだ」

 寂しげに笑う。「しかし惜しいことをした。帆有はんゆうはとても頭のいい駿馬しゅんめだった。ふつう、馬というのは主の指図がなければ動かないものだろう?でもあれは私が迷っていると正しいほうへと向かってくれた。もし地下の隧道すいどうでもたもたしていたら、歓慧どのに累が及んだかもしれない。死んだのは悲しいが誇らしい」


 辛そうな顔をして歓慧は何度も頷いた。戦って死んだ仲間と等しく、愛馬の死は辛いものだ。牙領防衛戦の際に猋も何頭か失われたから、ずっと世話をしてきた歓慧は気持ちが分かるのだろう。


 沙爽は握った手をそのまま離した。

「歓慧どの。これはまだそなたが持っていてはくれないか」

「え……しかし、とても貴重なものです」

「だから私が行軍の途中で落としたりしたら大変だろう?敵に奪われたらなおのことまずい。それなら、安全なここにあるほうがいい」

 歓慧は迷うように手にあるものと沙爽を見比べた。そして意を決したように目力を強める。

「鼎添さま。私とお約束くださいますか」

 相手は瞬き、こちらは居住まいを正した。

「必ず、必ず戻ってくるとお約束くださいませ。でなければ私は四泉から玉璽を偸盗ちゅうとうした罪で処罰されてもおかしくはありません。必ず鼎添さまがこの手から宝をお戻しにならなければなりません」

 国宝を他人に、それも異民のいち娘に預けたと知られればいかに王である沙爽のめいだといえ、朝廷が黙ってはいない。

 沙爽は大きく頷いた。羽根の首飾りを握る。

「約束する。決して惑わされることなく、必ず生きて歓慧どののもとへ舞い戻ってくると誓う」

 彼女は彼をじっと見つめるとふっと表情を和らげた。そのまま深々と拝礼する。

「武運長久をお祈り申し上げます。牙族族長猶主、四泉泉帝陛下のほまれある光熙こうきなる凱旋を、心からお待ちしております」







 族領にいる十三翼と万騎の中から精鋭を選び出し、彼らは沙爽と共に種州仰坂を目指す。すでに後ほど合流する残りの五百弱は牙領を出発している。猋のほうがはるかに速いので途中で追い越すことにはなるが、それでも霧界の移動に慣れた牙兵の移動は駿足だ。合流するのも思ったより時差がないように思われた。


 猋の扱いには遠征でよく利用する万騎はんきのほうがけている。それで指揮は万騎長の侈犧、千長の徼火を主導として三分の二を万騎兵、残りを十三翼兵とした。沙爽の側付きは麾下きかの暎景と茅巻はもちろんのこと、珥懿からたすけとしてあてがわれた唯真ゆいしんが引き続き務める。


「風はどうだ、徼火」


 猋に跨った侈犧が徼火に問うた。由毒が濃い日には風に当てられるだけで不能渡わたれずは具合を悪くすることがある。本来醸菫水じょうきんすいは一定量に飲むものではなく、その日の気候と体調によって調節して服用するものだ。飲み過ぎれば耐性がついて効かなくなる。ことに牙族薬師院の醸成するものは効きが強力だから取り扱いに注意するべきだった。由毒は匂いもしなければ味もないが、たいていの聞得キコエは風に混じる毒の濃さが分かる。


 徼火は騎上で顔を空へ向けた。「それほどでもないかしら」

 それで侈犧は沙爽に「小瓶一口でいい。二日なら追加で飲む必要はない」と言った。

 沙爽は首を傾けた。

「侈犧どのも聞得だろう?」

 わざわざ徼火に訊かなくても分かるのになぜ、と違和感をおぼえた。

 ああ、と侈犧は装備を確認しながら答える。

「俺は毋食ぶしょくだからな。鼻はそんなによくねぇのさ」

「毋食というと、たしか生まれた時は聞得だったが、幼いうちに力をうしなうという、あれか?」

 徼火が近づく。

「よくお勉強してるじゃない」

「姚綾どのが教えてくれた。では、侈犧どのは聞得ではなくただの由歩ということか?」

「いや、俺は取り戻したほうだ。鼻よりも他に能力が寄ってるがな」

 早期に訓練すれば力を取り戻せる場合があるという。

「取り戻すといっても簡単じゃない。死ぬような思いをしても力をくしたままの奴のほうが多いんだ。俺はツイてたんだ」

「しかし、それで万騎長を務めているのは凄いことだな」

 徼火がうふふと笑った。侈犧が呆れる。

「孩子、そこは褒めるとこじゃねぇ」

「そうか?」

「そうだ。万騎ってのはふつうは傭兵として各地に赴く。だが目的地に着くまでにはいろんな危険がある。それを先頭で察知して的確な指示を出せる奴じゃないと無駄に兵を死なす」

「ではなぜ長なのだ」

「あのね四泉主、あたしは前に珥懿さまはとことん合理主義だって言ったけど、なにも全く情が無いわけじゃないの。万騎を統率するには能力だけじゃなくて、荒くれたちを纏めて人望を集められる豪胆な気概と力が必要。侈犧が万騎長でいるのはそこを買われているから。珥懿さまもそれを重んじている」

 徼火が説明して、沙爽は侈犧を眺めて頷いた。

「なるほど。それは確かにそうだ。私を躊躇ためらいなく気絶させられる豪気の持ち主だしな」

 爆笑してせた徼火の横で侈犧が頬をひくつかせた。

「意外と根に持ってるじゃねぇか。悪かったよ、その節は」

「いいや、頼もしい限りだ。そなたたちがついて来てくれればなにも心配することはないな!」


 行こう、と呼びかけた。水先案内は頭目の嘉唱、後を追って沙爽たちは風のように草原を駆け抜ける。東の空には由霧を透かして見える雨気を含んだ灰色の雲。しかしそのよどみに向かって駆けていく沙爽の心は一片たりとも曇ってはいなかった。数月ぶりの故郷、敵から解放するには怖気おじけてなどいられない。最初は二人だけだった味方が、今はこれほどまで増えて手を貸してくれた。彼らは何よりも自分を信じて盟約を交わしてくれた珥懿の配下、沙爽はその期待と想いに応えなくてはならないし、応えたい。


 牙領を訪れたときには、自分が王に相応ふさわしいのかも分からなかった。いつまで経っても神勅しんちょくくだらず、自他共に情けなかった。しかし、今は少なくとも、紛れもなく自分は王だと言える。その自覚は持つことができた。王として民を救わねばならない。そして、真に王たるのが誰なのかを天下に示さねばならなかった。





 沙爽、珥懿、斉穹、撫羊。ついにそれぞれの思惑をかけて四泉に揃う。それは血風の兆しを纏い、火と煙の種を孕んで今にも弾けるわざわいの果実。噴き出していったいどちらに毒となり降りかかるにせよ、多くの犠牲が捧げられることは明らか、それぞれがそれぞれに、はたして見合ったものを得られるのかどうか。


 分からない、と沙爽は思う。だが、己はすでに義を掲げた。国主として民を守り、敵を排除するのは王の務め、沙爽の義こそが正義であると、なにより己自身が信じなくては仲間に申し訳が立たず、この戦いに意味が無くなる。

 自らが君臨するために、多くのものを巻き込み、死なす。むくいるにはただ勝利することによってのみ。敵がたとえ今も愛している妹であっても、加勢してくれる人々の為に手を下さなければならない。



 それに、それが唯一、彼女を救う方法なのだから。




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