第28話 遠足前のワクワク感


お祭り本番を明日にひかえたワタシは、

ワクワクした気持ちを抑えながら本日の旅館業と向き合っている。


「何だか楽しそうね。タケちゃん」


「早く明日にならないかな〜って、

サイトウおばちゃんは、楽しみじゃないの???」


「もう何年もやってからね。これでも楽しみにしてるわよ」


楽しいことが待っていると、

いつもより動きがよくなるのはワタシの単純な性格のおかげだ。


「ありがとうございました!」


本日のお客様全員のお見送りを終え、

午後からは明日の準備のため、旅館はお休みとなる。


「さて、みなさん最後の準備をしましょう!」


女将の気合いの掛け声で、

みんなが休憩室に集まり、最終調整に取り掛かる。


「袋詰めもしておきましょう」


女将の提案により、

タオルをそのまま売るのは良くないのでは?となり、

旅館で提供しているように作ったタオルを袋に入れることになった。


「よし、やってやるぞ〜!」


「ガンバリマショウ!」


ケンさんとジャックも気合いが入っている。

ケンさんもワタシに似て単純な性格だ。


否定的であった態度は数日後にはすっかりと変わっており、

誰よりもタオルを作っていた。


その姿をいじりたい気持ちに何度もなったが、性格を理解しているため、

あえて触れずに、お祭りが終わった後の楽しみに取っておくことにしている。


「これをこうしたら、もう少しキレイに包めますよ」


「なるほど勉強になります。Bさん」


おじいちゃんも何でもできる訳ではない。

サイトウおばちゃんに教わりながらタオルを作っていった。


「よし。あとはこれね・・・」


「これもお願いね・・・」


みんなが明日の成功という同じ目的に向けて動いている。

いつもは、おしゃべりでにぎやかな休憩室は、

このときは図工室、いや美術室、工場といったらよいであろうか。


時間は淡々と過ぎていき、

窓から見える景色が暗くなりかけたぐらいで作業を終えた。


「終わった・・・」


「このぐらいで十分でしょう。

後は明日のために身体をしっかりと休めてください」


終わりの掛け声も女将が行い、

みんなが帰り支度をはじめた。


「では明日も頑張りましょう。お疲れさまです」


「俺も帰りやす。お疲れした」


いつもならお客様の夕食を準備していたり、

受付に待機していたりする時間だが、今日はそれらがない。


「さて私達も早めの夕食を取って、早く寝るようにしますかね」


女将とおじいちゃんで夕食を取った後は、

温泉にもゆっくりと入った。

準備は完璧であろう。


「女将、おじいちゃん、おやすみなさい」


「おやすみなさい。明日は頼むわよ」


「任されました。おやすみ〜」


時計は21:00を示しており、

寝るのは早いと思ったが、明日のことを考えて、布団に入ることにした。


「・・・」


「・・・」


暗闇の中、天井を見ながら瞬きをする。


「・・・ん?」


「・・・あれ?」


「・・・」


「・・・眠れない」


そうだ。

これはあれだ。

遠足前の眠れないやつだ。

眠ろう、眠ろうと思うほど眠れないものである。


「よし!なら・・・羊が一匹、羊が二匹・・・」


何匹か数えていくと、

なぜ羊なの?と思ってしまい、逆に眠れなくなってしまった。


結局羊ではなく、

明日のイメージトレーニングを始めてしまい、

数時間ほどしてやっと眠っていたようである。

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