第15話 討伐完了

 -冒険者の集合場所-


 マルグリットはソワソワしながらテントの中でマサキからの連絡を待っていた。


「こちらマサキ、マルグリットさんどうぞ」


「おお、マサキ殿の声が聞こえるぞ」


「大変な事が起きた!」


「何があったのだ」


「洞窟の中から地竜が出て来たんだ」


「な…何だと! 馬ですぐにそちらに向かう」


 マルグリットが慌ててテントから飛び出すとほかの冒険者や町の人たちが集まって一方向を見て騒いでいた。

みんなが指差してる方を見ると、数キロ離れた丘の上が燃えているのが見えた。野盗どものアジトがある所だ。


 討伐に向かったシーフの1人が息を切らしながらコチラへと走って来た。


「ハアハア……大変だ。野盗どもがコチラに向かって来ている!」


「えっどういう事ですか。

 冒険者達は何をしているんだ?」


「ハア、ハア……ケシャ達はドラゴンを抑え打ちに行った。もうすぐ野盗どもがここにたどり着く」


 今ここにいるのは応援で参加した街の人達とEランクの冒険者3名と狩人のクリフ殿……まずいぞ





 ◆




 オレは野盗どもに捕まっていた人達とともに安全地帯である冒険者たちの集合場所へと向かっていた。さっき魔法袋マジックバッグから「韋駄天化」という札を引いたのでみんな通常の数倍の速度で移動している。


 よし、ようやく天幕が見えて来た。

 よく見るとみんな逃げた野盗どもと戦っているようだ? しかも人数差で押されまくっているし


 だが韋駄天化されたオレと捕まってた人たちが一斉に飛び込んでいくと一気に形成逆転していった。

 まずおっさん2人が距離をとってスリングショットで野盗を1人ずつ狙い撃ち、フライパンを持ったおばさんがすかさず受けに回るという連携プレイを見せてくれた。


 いやーまさかここまで活躍してくれるとは思わなかったよ。ナイスフライパン! ナイスおばさん!

 間違ってオレを襲わないでよ。


 そのほかにも催涙スプレーや殺虫剤を持った人も大活躍していた。


「だらしねえ子分どもめ! このダキルス様が皆殺しにしてくれる!」


 ダキルスはオレめがけて走り、剣を振り下ろす。

 ———が突然現れたマルグリットさんがレイピアで受け止めた。


「ずいぶんと早い到着だったなマサキ殿」


「な…何だこの女騎士は?このオレ様のジャマをするのなら斬り捨てるぞ」


「ほう、やれるものならやってみるがいい」


「女ぁぁっ! くたばりやがれぇぇ!」


 ダキルスはは左右上下に体を動かながらフェイントをかけマルグリットがその動きにつられてほんの少し右に出ると少しタイミングをずらして勢いよく飛び込み彼女の喉元目がけて鋭い突きを放つ———が彼女のレイピアがその行く手を拒んだ。


「バカな」


「フン、騎士であるこの私がそのような下らぬ

 フェイントに引っかかるとでも思っていたのか?」


 剣と剣が激しくぶつかり合い、高い金属音があたりに響き渡る。



 何度も何度も剣を切り結ぶがダキルスは木の根っこにつまずきバランスを崩した。

 マルグリットはその一瞬のスキを逃さなかった。

 スパッと踏み込み、ダキルスの心臓を突き刺しとどめを刺した。


「バ…バカな————」


 その光景を見た野盗どもはガクリと膝を付き、自ら降伏の白旗をあげた。


「マサキ殿、無事か?」


「マルグリットさんこそ」



 オレ達が一息ついているとケシャ達が戻ってきた。

 地竜どもは何とか倒したらしい

 ドラゴン倒すとかコイツらすげえな?


 野盗どもを討伐した俺たちは、町への帰途に就いていた。


 冒険者たちの顔には、深い疲労と、それ以上の喜びが浮かんでいる。


 冒険者、騎士ふくめて13名の死傷者が出ていたが、今回の規模の魔獣災害で、その程度の被害で済んだことは寧ろ幸運らしい。


 騎士達は男爵の屋敷へ、冒険者達はギルドへ報告と降伏した連中を引き渡しに行くそうだ。


「じゃ、宿で勝利祝いの飯にするか?」


 宿屋の主人に頼んで厨房を貸してもらい、オレ、捕まっていた人達、街の人達のみんなで鍋の準備していた。野菜、キノコ類を切ったり肉や魚介類などの下ごしらえを手伝ったのですぐに食堂で鍋に火を入れる事が出来た。



「アラー、美味そうな匂いがするねえアタイも混ぜとくれよ♡」


「ほほう、よかったらコレもどうだい?」


 ほかの宿に泊まっている人達も山菜やキノコを持って集まって来た。


 そういえばスーパーで買ったお肉や野菜が冷蔵庫の中にあったな?


 オレは魔法袋マジックバッグから豚肉、白菜(1/4カット)、袋ラーメンを出した。


 ドサッと鍋に放り込みグツグツと出来るのを待っている宿屋の娘と夫婦、そして宿泊者達……


 みんなの深皿を集め、魔法袋マジックバッグからお玉を出して肉や野菜を取り分け、スープを入れてやる。

 人数分の食器を用意して準備が整うと皆が一斉に料理にかぶりつきはじめた。


「ん、おおっ美味い」


「スープがウメェよ!これはイケるな!」


 とくに捕まっていた者達はしばらくロクなものを食べさせてもらってなかったからかもの凄い勢いでバグバグ食べ始めた。まさかこんなにウケるとは思わなかったな。よし、最後に締めのうどんを入れてやる。


「なぁ、アンタらはこの後は自分達の住んでいた所に戻るのかい?」


 捕まっていた者達が首を横に振る。

 村に帰っても貧しい生活しか待っていないそうだ


「それならば我が領地に来ないか?」


 マルグリットさんの所で領民を募集していたそうなのでちょうどいいじゃん!

 ちなみに彼女が街に来た目的も領民集めだったとか、残念ながら領主である伯爵には却下されちゃったみたいだけど……


「あ…ありがとうございます。騎士爵様!」


 捕まっていた者達がマルグリットさんに平伏する。


 その後、オレ達はケルトブルクの街へと戻り、

 ギルドから報酬をもらい宿へと戻る。


 捕まっていた人達は明日マルグリットさんとともに村へ戻るそうなので仕方なく今晩はとなりの部屋に泊まってもらった。


 声が聞こえちゃうとマズイので今回もマルグリットさんとの楽しい夜は中止という事に……(泣)

 結局、1つのベッドで普通に抱き合って寝ることにした。


 マルグリットさんとはまた村へ会いに行くと約束してオレは再び両親に会う旅に出る。

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