人形ちゃんは知りたい!

徒花 睡蓮

オタクと人形ちゃんの出会い

第一話 オタクと人形ちゃんがゲーセンでばったり出会う

「……西宮くん?」


「人違いです」


週末、日曜日。

僕─西宮拓斗は、高校が始まって2か月ほど来てなかった駅前のゲームセンターに久しぶりに来ていた。両親は転勤で僕を置いて他県に行ってしまったため、高校になってから急にまた一人暮らしが始まって、色々忙しくここにはこれてなかったのだ。


そこでばったり出会ったのは、学年一の美少女と名高い柊有栖だった。

柊さんと言えば、柊グループという大きい会社の社長令嬢で学校は主席で入学そのテスト結果からガリ勉と思われていたが。入学後は勉強だけではなくスポーツにも才能があるとわかり、体育では運動部と変わらない動きをしているような完璧超人だ。

クラスが同じなので時々話している内容が聞こえてくる。基本的に女子と喋っているが、その内容は基本的に勉強のことや授業のことが大半で、クソ真面目だなという印象があった。

ちなみに、学年一の美少女といったがどんな容姿をしているのかというと、無表情で感情を表に出さないが、童顔で目は二重でパッチリしていて、身長は小柄で今見た感じだと150後半くらいだと思う。髪の毛は栗色でつやつや、その髪の毛を肩下まで伸ばしたという感じで、その可愛らしさと変わらない表情から、ついたあだ名が人形ちゃん。

その容姿から告白する人が相次いでいるらしい。というか、僕も何度かその現場を見たことがある。まぁ、噂で聞く限りはすべて断っているらしい。


ただ、僕は、彼女のことが苦手だった。

確かに、容姿は整っていて、すごくかわいいとは思う。だけれど、その一歩引いた感じから、なんか裏がある感じがして、どうしても好きになれなかった。


まぁ、そんな感じの印象から、いいとこ育ちでクソ真面目な印象しかない、柊さんがゲームセンターにいるのはひどく違和感があった。どうせ誰かに誘われたんだろうと思い、その誰かに見つかると面倒だと、僕はため息を漏らした。

そのため息が不満だったのか、かわいらしく頬を膨らませた。


「…私をバカにしないで、クラスの子の名前と顔はもう覚えた。あと、そのため息は心当たりがある証拠だと思う」


そう言われて、面倒だと思いまたため息を漏らした。


「むぅ、またため息、そんなに私と会うのはいやだった?」


「いや、だれでも休日に友達でもない人に私生活がバレたりするのは嫌だろ…」


「それでも、ため息は失礼だと思う」


「ごもっともで」


あぁ、なんで休日に苦手な存在と喋らないといけないんだろう。

そう思い、早々と話を切り上げてクレーンゲームか音ゲーでもして遊ぼうかと考え、「それじゃ」と短く言い、ゲームセンターの奥のほうに足を進めようとしたが「まって」という言葉に足が止まった。

振り返ると、珍しくおろおろした感じで立っている柊さんが居た。


「…まだ何か?」


「あの、こういう場所に来るのは初めてで、その、何をして遊んだらいいのか、わからないから教えてもらえませんか…?」


そう言って、ペコリと頭を下げた。


…こういうお願いは、ほんとに嫌だった。

僕はクラスで孤立している。というか、中学の頃ここら辺の中学に転校してきて、そっから3年友達を作ることなく過ぎていき、現在の高校に入学した。だから、もし、ここで僕が断ってしまい、そのことを目の前の美少女がクラスそのことを言ってしまったと仮定する。すると、陽キャと呼ばれるグループや女子グループ、他にも振られた人たちから嫌がらせや変な噂が発生する可能性がある。

つまりは、拒否権がないのだ。

その事を多分理解していないであろう美少女は、僕の機嫌が一気に悪くなったのが分かったのか少し怯えたような、悲しいような表情をした。


あぁ、めんどくさい。そう思いまた、はぁ…っと、ため息が出た。


「わかった、今回だけだからな」


「そうだよね、唐突に言ってごめんね…っていいの…?」


「…今回だけな」


「おぉ…あ、ありがとう」


そう言って、目の前の美少女無表情のまま少し嬉しそうにそういった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る