第43話――魔王さんと勇者様ご一行、最終決戦! 3

 晋太郎は眼鏡を取ると三人の少女を見回した。

「みんな、変身だ! いくぞっ!」

「「「「グラスチェィンジ! 学園戦隊、メガネンジャー!!」」」」

 顔にかけられた眼鏡をいったん外し、かけ声と共にかけ直す。一瞬、身体が閃光に包まれ、次の瞬間、四人はそれぞれのバトルコスチュームに身を包んでいた。

 ましろは超ミニの学園制服にニーソックスと指なしグローブ。肘と膝にはガードがついている。スカートの裾からは、今にも見えてはいけない布地が見えそうだ。

 郁乃はパールピンクのフリフリワンピースに、つばの大きなリボンのついた帽子。背中には赤いランドセルを背負い、手には巨大なハンマーが握られている。叩かれたら光になりそうな大きさだ。

 水琴は白衣に緋袴、白足袋に草履。長い弓を持ち、光の矢を携えている。近接戦闘の時は、弓は背中に背負えるようになっているようだ。まさに『遠近両用』の巫女さんである。

 そして我らが晋太郎は……いつもの通り、代わり映えのしない学園の制服姿だった。

『ふん! あくまで抵抗するというか! このコンタクトの魔王の力を舐めるな! ハイグレードコンタクトレンズビームっ!』

 爆音とともに体育館の壁という壁が破壊される。眼鏡を回収しようとしていた教師たちも、これはまずいと感じたのか、生徒たちを誘導して避難をはじめていた。

『あのビーム、オレが引きつける! その間に攻撃を!』

 眼鏡を通して晋太郎が四人に伝える。避難する生徒たちとは反対の方へと走りながら、晋太郎は一気に方向を変え、由隆たちに躍りかかった。

「ふん! 小賢しい! ハイグレードコンタクトレンズビームっ!」

 ビームは晋太郎の土手っ腹に直撃した。晋太郎の身体をはね飛ばしたビームは、そのまま天井を突き破り、天空へと消えた。天井からは鋼材などが落ちてくる。晋太郎以外の三人は、素早く動くと、天井の破片が生徒たちに当たらないようにはじき飛ばした。

「松原先輩、大丈夫ですかっ?」

「晋太郎ちゃん、役に立たなさすぎ!」

 巨大なハンマーで鋼材を派手に吹っ飛ばしていた郁乃が、倒れている晋太郎に容赦のない一言をあびせる。

「これでも頑張ってるんだよっ! 努力は認めてよっ!」

 叫び終える間もなく、晋太郎を新たなビームが襲う。

「ハイグレードコンタクトレンズビームっ!」

「うおわぁぁぁっ! いくらバトルコスチュームが強化されてるからって、当たったら痛いんだぞ!」

「では変身を解除すればいい! 痛みを感じる前にあの世行きだ!」

「断るッ!!」

 慌てて立ち上がり、全力で距離を取る。そしてまた方向を変えて由隆に躍りかかる。背後から水琴が放った援護の矢が追い抜いていき、由隆に襲いかかる。由隆はそれを黒マントを翻らせながら避け、必殺のビームを放った。

「うぼあ――――!!」

 またしても胃の真上にビームが直撃する。晋太郎は口の中に酸っぱいものがせり上がってくるのを感じていた。朝飯を抜いてきてよかった。着地とすると同時に、すぐさままた走り出す。

 晋太郎の逃げ足の速さは本物だ。

『不慮の事故により、全校集会をこれにて終了します。全校生徒は直ちに教室に戻ってください』

 すでに教師も生徒も残っていない体育館に、司会進行役の生徒の声がむなしく響く。

「うおおおおおおおお! ハイグレードコンタクトレンズビームっ! 乱れ撃ちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 ついに天井を支えることが出来なくなった壁面が、完全に崩れ落ちる。メインアリーナは瓦礫の山と化していた。

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