P9

それからしばらくのあいだ、


女たちや子どもたちがあつまりつづけ、


うたい手は、知らず知らずのうちに、


五人の妻と十八人の息子と娘に囲まれるようになった。


うたい手は、海からあがると、毎日、


かわるがわる妻たちと子どもたちをだきかかえて


うたをきかせた。


そのうた声は、


若いころの哀しみと孤独にみちたものとはちがい、


きくものを幸せにみちびき、


人生に必要なことは世界をいつくしむことだけだと


悟らせてくれるような、


いとしさと優しさにつつまれたものとなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る