第24話 最弱な戦士8

『俺って、気持ち悪い奴じゃないか?』

 ルカはお酒を片手に、星を見ながら、呟いた。

『スケベな所は気持ち悪いわ』

『そうか、違うって、クォーターつー所だよ』

 ルカは笑った。

『ああ、そこね。別にそうは思えないけど……』

『俺、目が赤いんだぜ。身体能力も人間に比べれば高いし、中途半端だろう?』

『それがどうしたの? 人間には変わり無いでしょう? ああ、魔族かな~? 別に目の赤いのは血のせいだし、魔力が解放しなければ、出ないでしょう? それにそんな体質羨ましいわ。なんか、お話に出てくるみたいで、魔法遣えそうじゃん』

 ニアは本心から言っていた。

『あははっ、そう言って貰えると嬉しいよ』

『でも、実際はどうなの? 魔族って魔法みたいなの使えるの?』

『うーん、魔力があるから、魔王や上級クラスになれば、魔法みたいなのは遣えるよ。じーちゃんは魔力を放出し、物質を動かしたり、止めたりするいわゆる超能力が遣えるし』

『ルカは遣え無いの?』

『うーん、本当は遣えない事は無いとは思うけど、じーちゃんの力がいくら強くったって、俺はクォーターで、半分以上が人間の血だから、人間に近い訳じゃん。遣えた事無いな』

『そうなんだ~』

『でも、俺も遣えると思ってガキの頃よく、物体を上げようとしたよ。こうやって、念をこめてね』

 コップを置いて、浮き上げようとして、力を集中させた。

 微かに揺れている。

『……』

『……』

 コップが倒れた。

『ルカの力じゃないよね?』

『うん……』

 風の力で倒れ悔しいのか、ルカは落ち込んでいた。

『はははっ、ルカは人間だよ。少なくとも私はそう思うし、クォーターなんて気持ち悪く無いわ』

『そうか、ありがとう』

 ルカは満面の笑みを浮かべた。


(ルカはずっと、気にしているんだ)

 父親の失踪。

 母親の死。

 そして、今までに出会った人間や魔族に言われた言葉。

 ルカの『自分を大事にできない』態度や言動には理解できないし、したくもなかったが、ルカはずっと悲しみを引きずっている。

 魔族が人間に出会って二百年。

 差別は未だに消えていない。

 お互いが理解しあっていないのに、ハーフやクォーターはもっと、肩身が狭いのだろう。

 ニアはどちらも平等であると、思っている。

 勿論、ハーフやクォーターも例外ではない。

 魔族と人間が差別しあう事そのものが、ニアには理解が出来ないのだ。

 今、そこに魔族も人間もいるのだ。

 ギギも差別されていたと、言っていたが、ルカもそうとう辛い事を経験していたのだろう。

 だから、どうでもよくなったの?

(分からないわ)

 ニアには理解し難いものだった。

 しばらく沈黙が二人を襲った。

(私が沈んでどうするのよ。辛いのは彼よ)

「ねえ、ルカ」

 ニアが再び話しかけた。

「なに?」

 まだ、少し落ち込んでいる。

「今日の晩御飯何がいい?」

「えっ? なんで?」

 いきなり質問されてルカは驚いて、瞬きを何度もした。

「うーん。そうだな」

 次には真剣に考えている。

「なんでもいいわよ」

「んじゃあ、ニアの一番の得意料理がいい」

「分かったわ」

 ニアは笑って見せた。

 ルカもそれにつられて笑う。

「ありがとう。ニア」

 ルカが呟く。

「なにか言った?」

「いや。なんでも無い」

 部屋の前に着き、ルカが扉を開けた。

「二人ともいつまで一緒にいるでしゅ!」

 中でギギが顔を膨らまして待っていた。

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