第19話 最弱な戦士3

「凄い~」

 ニアは目を輝かせていた。

 部屋は六畳程の広さに、カーペットが敷かれ、ベッドが二つとテーブルが一つあるだけのシンプルなツインルームであった。

「これでも安い所何だが、もっと凄いスイートルームもあるぞ」

「本当に!」

「ああ、桁が違うから俺も一回しか泊まった事無いがな。俺も凄いと思った。サービスから何まで全部が凄くてな」

 ギギを籠から放した。

 ギギはすぐに籠から出て、飛び回った。

「そうなんだ~」

「まあ、新婚旅行に変更するなら、手配するよ」

 ニアの顔に近付いて話した。

「その一言はいらねーよ!」

 ニアは笑顔で、そんなルカの顔面を容赦なく殴った。

「痛い」

 顔を抑えていた。

「あたたたた」

 ルカはしゃがみ込む。

「他に部屋はあるの?」

「ああ、あるよ。もっと安い大部屋もあるが、それはギギもいるし、少し高いがツインにした」

「お金いいの!」

「いいさ。金なら困って無いしな」

「それならいいけど、ねえ、ルカ。そー言えば、何で私が魔界行くって言って、簡単な条件でオッケーしたの?」

 ルカは自分の経費を請求する事は無かった。

「ああ、そんな事か、俺も魔界に用があって、どっちみち魔界に帰らなけりゃいけなかったからな」

 ルカは腰の剣を枕元に置きベッドに座った。

 どんな事があっても、胸ポケットの銃を出そうとしない。

 そうとう大事な物のようだ。

「だから、オッケーしたの?」

 ニアもベッドに座ると、列車が発車した。

「ああ、ちなみにこの列車が最短ルートだよ」

「他にルートがあるの」

「まあな。山を渡るルートや、船を渡る事も出来るが、海上列車は一番速度が早い。船よりは金はかかるが、船の揺れは好きじゃねーんだ」

「へー」

 ニアは列車の窓から空を見ていた。

 列車と言うからには線路があり、線路が光っていた。

 太陽が海面に反射して光っている訳では無く、線路自体が光っていた。

「ねえ、どうして、列車が海上を走っているの?」

 考えてみたら、不思議だった。

「ああ、魔界のテクノロジーで」

 ルカはベッドに座った。

「簡単に説明出来る?」

「うーん。要は浮いているんだよ。電車と線路に魔力を与え魔力同士が反発しあっているんだ」

「じゃあ、何で、線路は消えるの?」

「消えてなんかいないよ。消えているように見えるだけだ。海に擬態出来る色にして、列車が通る時に魔力を放つ、その時、光も出すんだ。ちなみに列車が通らない時は船も通るからこの線路つーのは、見た目以上に丈夫で薄く出来ているよ」

「へー。ルカって詳しいのね」

「あんたが無知過ぎるだけでしゅ」

「五月蝿い、バカコウモリ!」

 二人はさり気なく言い合っていた。

「ギギも知らなかっただろう。確か、俺が教えたと思うぞ。俺はそー言う学校通っていたからな」

「学校?」

「ああ、魔界に行けば、魔力と科学とメカを専門とする学校があるんだ。まあ、機械イジリ好きだったし、じーちゃんに頼んで、通っていたんだ」

「確かにメカに強いわね」

 バイクを整備していた事を思い出していた。

「まあ、好きだけど、それで飯食おう何て思わなかったのは、好きと仕事にしたいは違ったんだと思うんだ。それに血のお陰か、剣士の適性がバカみたいによくってな」

「へー」

「んじゃあ、車内見に行くか?」

 ルカは立ち上がった。

「うん。行く」

「ギギ、お留守番宜しくな」

「えー」

 ギギはふてくされていた。

 ペットは部屋から出てはいけないのだ。

「ほれ、銀貨だ」

 ルカは剣を腰に差すと、ギギに銀貨を一枚渡した。

「いってらっしゃぁ~い♪」

 ギギは笑顔で手を振った。

(分かり易い小動物)

 ニアは呆れていた。

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