潔癖錬金術師は異世界を殺菌したい

マルコフ。

第1話 絶望よ、こんにちは

目が覚めたら、そよそよ揺れる草が顔をくすぐっていた。

晴れ渡った雲一つ見えない青い空の下、視界の端には名前も知らない草が生えている。緑色で細長い。それが無数に頬に触れている。

それを認識したとたん、服越しに伝わる冷たい地面の感触を意識した。


知っているだろうか。

野に生える草にはアーバスキュラー菌をはじめとする菌類が付着している。野に晒されているのだから、菌の発生数は推して知るべしであるが、土壌などもう考えられない。


―――見えないけれど彼らは存在している。

『日本草と土壌を考える学会』の会長である土川草雄の絶望を思わせる言葉だ。

草と土壌について研究している学会であり、会員である自分に深く刻み込まれた言葉である。多分、会長とは全く別の意味で。


だからこそ、今は考えることすら放棄したい。

例え服越しと言えども、地面に横たわっている時点で、タカヨシは死んだ。


もちろん、心が、だが。


「#@ー〇〆々∞♀℃●★◆▼※*#%¢∂っ」


声にならない絶叫を、魂から振り絞るかのようにあげて意識を手放したのだった。



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