Andalusiteに包まれて

森沢真美

Prologue - プロローグ -

Andalusiteに包まれて - アンダルサイトに包まれて -

1.Prologue - プロローグ -

正月明けに昔の・・大学時代の友人、粟司(あわつか)君からメールが届いた。

タイトル:粟司です。

なんて分かりやすいタイトル。

それにしても、

『あれ・・なんでメルアド知ってるん?』

そう思った瞬間、思い出した。

『ああ、年賀状にメルアド書いてたかな。』


『何の用やろ。』

メールを開いてみると・・


『何で年賀状今年で終わりにするんやー。毎年、楽しみにしてたのにー。直接話したいから、携帯の電話番号教えてくれ。』

なんて分かりやすい用件だけのメール。


『確かに、“葉書での年始の挨拶は終わりにします。”って書いたけど、年賀状ごときで何でそこまで・・。球体関節人形写真と背景を合成加工した年賀状を送ってたけど、気に入って貰えてたんかな。』

そう思いながらも、私も久しぶりに話がしたくなって、電話番号を記載して返信した。


ピロロローー。

速攻で電話がかかってきた。

「早っ!」


「はい、田川です。」

粟司君からじゃなかったら恥ずかしいから、冷静に応対。


「久しぶりー。粟司やー。」

懐かしい元気な声が聞こえてきた。


「おひさー。」

私も軽くご挨拶。


「早速やねんけどな、何で年賀状終わりにすんねん。俺、お前の年賀状の人形の写真、楽しみにしてたのに。」

いきなり用件を言い出す粟司君。

しかも、もうお互いいい歳なのに拗ねた声で。


「何でって・・、もう20年も会うてないし。。WEB版アップするし、それでええかなって。それにいろいろ身の周りを整理していこかなって思たりもして。。」

確かに理由は言ったとおりだけど、何故か申し訳なさそうな声で応えてる私。

私は悪くないのにーーーーっ☆


「・・・なんか重病にでも患ってるんか?」

一瞬の間が空いた後、今度は心配そうな声で聞いてくる粟司君。

突拍子も無い事を聞いてくるなぁ。


「はは・・・ちゃうちゃう、そんなんとちゃうから。」

電話だと分からないが笑いながら否定。

ああ、でも重病じゃ無いけど、 当たらずといえども 遠からず・・かな。

それは言わない。


「それやったらええんやけど。」

落ち着きを取り戻した感じ。

でもまだ、信じ切ってない様子。


「うん、心配してくれてありがとう。」

取りあえずお礼。

何でお礼を言っているんだろう、私は。


「いや・・、あ、それやったら、今度久しぶりに飲みにいこー♪」

またいきなり突拍子も無い事を言い出す粟司君。


「え・・?」

答えに詰まる私。

ほんとに何を言い出すかな。


「“えっ”て、嫌なんか?」

また拗ねた声。

20年ぶりに電話かけてきて、いきなり飲みに行こうって言われたら、普通「えっ」って言うと思うんだけど。


「いや・・、そう言うわけや無いんやけど・・。」

言葉に詰まる。

断りたいけど、久しぶりに会ってもみたい。

でも、今の自分を見られるのは、正直怖い。


「なら、えーやん♪」

声が踊ってるし。

か・・軽いなぁ。


「変わったよ、かなり。」

ボソッと告げてみる。


「俺も変わったわー。お腹出てるしなー。」

またまた、軽い返事が返ってきた。


「それは、こっちも同じやけど、そうやなくて・・本当にかなり変わったから。。」

本当の事を言いたいけど、言って良い物かどうか悩んでしまう。

それに・・何で私のお腹が出てる事を言ってしまったんだろう・・失敗。


「別にええやん、俺は気にせーへんし。今度の土曜の夕方6時頃どう?」

明るい声でグイグイ攻めてくる。

昔と変わらない。


「空いてるけど・・。」

ぼそっと呟く。

そして、この明るい声に抗えない私。

それも昔と変わらない。


「行きたい店とか、お気にな店とかある?」

どんどん私を乗せてこようと攻めてくる。


「I駅の駅ビルにある串揚げ屋さん。。」

うう・・素直に応えてしまった。

やっぱり昔と同じ。


「ほな、I駅の小さい方の改札口で夕方6時に待ち合わせと言うことで。あ、中辻(なかつじ)にも連絡しとくわー♪」

益々明るく軽い声。

そして最後に私の難易度を上げる言葉。


「え?」

速攻で聞き直す。


「ほな、土曜になー。」

私の“え?”と言った言葉を聞いてないのか、電話を切ろうとする。


「え・・あ・・ちょっと・・。」

慌てて引き留めようとするも言葉が出ず。


ぷち・・

一方的に電話を切られてしまった。

「もう・・言うだけ言うて勝手に切ってしもて・・。どないなっても知らへんからね。。」

ぶつ、仏、物、ブツ・・文句が口をついて出た。

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