第6話

 通話中、わたしは席を外した。


 だってただの痴話喧嘩に、口を挟むこともない。あの2人は大丈夫だ。


 わたしは、わたしのことは、どうしたらいいんだろう。


 「哀原。」


 気がついたら、もう6時前だった。わたしは下駄箱の近くにしゃがみ込んで寝てしまっていたらしい。


 あんなに勢いよく降っていた雨はすっかりやんで、見上げるとそこには、長途先輩と片瀬先輩の姿があった。


 「哀原、まじで今まで迷惑かけてごめん。哀原のおかげで、また一歩と話せるようになった。ありがとう。」


 よかったです、と言ってわたしは立ち上がった。もう、ひとりで帰れそうだ。


 「じゃあ、あとはお二人で。さようなら」


 「ちょっと待って」


 片瀬先輩はわたしの腕を掴んだ。


 「哀原、さっき、俺らのバンドに入るって言ってたよな?」


 「え?えっと、それは後日からじゃ……」


 「いいや、今だ。今歌おう」


 長途先輩がクスッと笑った。まるであの日の復讐かのように。


 「哀原、お前だって解決しなきゃいけない問題、残ってるだろ?」


 2人に手を引かれ、わたしは例の場所へと連れてかれた。

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