9話 4人で見た夜空は綺麗で

気持ち良く眠っていた所に何かの衝撃を感じ、目を覚ます。目を開けると、すぐそばに緋莉の顔が見えた。

「雷さん…やっと起きましたね、もうお昼ですよ。」

そんな事を言われ急いで起き上がり外の様子を見ると、太陽はもう真上にあった。急いでリビングに向かい昨日伝える予定だったことを繭に伝える。

「今日街行く予定だったからなるべく急いで準備出来る?」

少し謝る様な声で言うと繭は優しく返してくれた。

「わかったよ、だから雷も急いでね。」

わかった、と返し呑気にまだ寝ている茶眩を起こす。肩を揺すり数秒後、大きな欠伸をして茶眩が起きた。

「あっ、お兄さんおはようございます。」

呑気にもそんな事を言っている。

「おはよう、今日出掛けるから急いで準備して」

と返し、僕も自分の準備を急ぐ。

数分で全員の支度が終わり、街へ行くための馬車に乗る。茶眩と緋莉は乗るのが初めてらしく乗る前からワクワクしていた。

馬車に乗り込み数十分が過ぎた。僕の隣では茶眩が眠っている。さっきまで起きていたが、一定のリズムで揺れる馬車と爽やかな涼しい風のコンボに負けてしまったようだ。実際に僕も眠たくなって来ているが、眠りに落ちそうになると横に座る繭に頭を叩かれるので眠る事ができない。その地獄のような時間を何とか耐え、街に着いた。街に着くまで、自分との戦いのような事をしていたせいか、すごく疲れた気がする。まだ寝ている茶眩を起こし、馬車をおりる。

「それじゃあ行こうか。」

そう言って、邪魔にならないように縦一列になり歩き出す。目的地は家具屋だ、輝夜じゃなくて家具屋。まぁそんな誰が分かるんだってネタは置いといて家具屋へ向かう。(ちなみにライバルはニ〇リ。)

「どこにあるんだろう?」

繭が質問をしてくる、

「わからん。」

実際3回来たくらいでは全然何処に何があるか分からないので、事実を答える。繭は、

「えぇー」

と言っていたが、左右に首を振ってお店を探してくれていた。

何分か歩き、やっと家具屋を見つけたので中に入る。中はオシャレな家具が沢山あった。

「2人の好きな椅子を選んで良いよ。」

緋莉と茶眩にそんな事を言って、僕は繭とテーブルを見に行く。

「これいいね〜」

テーブルを見ながら繭が言う。そのテーブルは左右半分で色が分かれていて、左が白く右が黒い。正直そのセンスに共感はできないが、下手な事を言って機嫌を損ねたくないので、

「そうだね」

と笑顔で頷いておく。その後も色々なテーブルを見て、

「これも良いかも」

見たいな事を沢山言っていたが、結局は最初に見た半分白黒テーブルに決めた。理由は一目惚れらしい。

テーブルを決め終わったので、茶眩と緋莉の様子を見に行くと、

「どっちにしよう…」

と茶眩がなやんでいる声が聞こえた。

「こっちの方がカワイイよ」

とアドバイスをする声も聞こえた。

2人の近くに行くと、2つの椅子の前で茶眩が腕を組んで悩んでいる。片方の椅子は、座る部分が白色で背もたれに黒色のクッションが付いているやつ。もう1つは、全身が黒くて座り心地の良さそうなクッションが付いているヤツだ。確実に後者の方が良いだろう。そもそもなんでそんなに白黒の家具が人気なのか分からない。

何分かじっくり悩み椅子を決めた茶眩が僕達に気付き話けてくる。少し気付くのが遅く無いかと思ったよ。

「これに決めました!」

手には全体が黒い椅子を持っている。もう片方のヤツじゃなくて安心した。

「私も決めました。」

緋莉に手招きをされて、その方へ向かう。緋莉が決めた椅子は、座る部分と背もたれに柔らかそうな白いクッションが付いているヤツだった。

その2つとテーブルをレジに持っていく、合計で2万円少々だった。財布から諭吉2枚と小銭を出し、購入する。今では自宅に届けてくれるサービスがあるらしくしかも無料らしいので、宜しく頼んで僕達はもう少し街を楽しむことにした。


お昼ご飯を食べていなかった僕達は、今適当に入ったファミレスにいる。僕達の座ってる席のテーブルには沢山の食べ物達が乗っている。僕と茶眩が頼んだのはシーフードカレー、海老が美味しそうだ。緋莉が頼んだのは、チーズINハンバーグ(150g)とグラタン(大盛り)だった。正直僕と茶眩で協力しても食べきれなさそうな量だった。そして最後、繭が頼んだのは美味しそうないちごのパフェ。繭が外でパフェ以外の物を食べているのを見たことがない。

食事を終え店を出る。これは驚いた話なのだけど、緋莉は僕と茶眩がカレーを半分も食べない内にハンバーグとグラタンを全部食べていた。しかも追加で繭のヤツより一回り大きいパフェを頼んで、それもすぐに食べていた。それでもまだ足りない様でメニューを見ていたが、繭に

「緋莉って沢山食べるんだね〜」

と言われ、顔を真っ赤にしてメニューを閉じていた。繭はなんで?といった顔をしていて、自分が原因だと気付いていなかった。

店の外に出ると既に日は傾いていた、いつもは青い空がオレンジ色に染まっていてとても幻想的で美しい景色を生み出している。

「綺麗だな…」

「そうですね。」

ふと漏らした独り言に緋莉が返事をする。空を見ているその目が輝いているように見えた。

「そろそろ帰ろうか。」

いまさっきご飯を食べたので夕食のことを考える必要は無い。みんなも多分同じ考えだろう(緋莉を除く)

少々寄り道をしながら馬車に乗れる店へ向かう。たまにお店に入ったりしていたので、目的地に着く頃にはもう日は沈み、月が出ていた。馬車に乗りながら夜空を見ると星々が煌めいていた。いつも家から見ている夜空も馬車に揺られ4人で見ると不思議と特別なモノに感じる。横を見ると繭が夜空を見上げている、それを見ている僕に気付いたのかこちらを見て微笑む。そして、

「綺麗だね。」

と言った。他の2人、茶眩と緋莉も、

「そうですね」

と言っている。自分と同じ事を他の人が思っていると思うと何だか不思議な気分になってくる。そしてとても嬉しかった。

馬車は僕たちのいる町に着いた。無言で僕達は家に向かう。そして家に着くと誰も何も言っていないのに全員で夜空を見上げた。今日が夜空が沢山綺麗に見える日なのか、大切な人達と見ているから綺麗に見れるのかは分からないけど、僕は後者だと信じている。

結局今日は何時間も無言で夜空を見続けた。またこんな日が来ると良いな、その時は大切な人が増えてるといいなと思いながら。



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