第27話 蒼は青というより深緑


 それから僕は人混みに紛れることでホモ野郎(偏見)から逃げおおせた。僕のアバターが中性的ではあるが、まさか性別を公開していて下手なナンパをされるとは思わなかった。


「ここか」


 藍香たちが言っていた服飾店の中には僕以外のプレイヤーもいた。その多くが後衛の魔術士の素養持ちや、戦闘をしない生産や加工の素養を持っているプレイヤーばかりだ。


「いらっしゃっいませ」


「男性向けの私服はどの辺りにありますか?」


「こちらでございます」


 案内されたコーナーにはサイズはもちろん、デザインや色彩も様々な服が掛けられていた。これなら他のプレイヤーとコーデが丸被りしてパクリだの騒がれる心配はないだろう。

 どうせならパクられにくい高い服にしようかな。


「うーん……これと、これ、あとこれを試着することは出来ますか?」


「試着室はこちらになります」


…………………



……………………………



…………………………………


 最終的に僕が選んだ服の装備品名は『信徒の服』シリーズの上下だ。素質や覚醒、称号の影響で選択したのではなく、単に軍服のようなカッコいいデザインに惹かれただけです。

 色は黒を基調にあお色のアクセントが入ったものを選択したけど、どうせなら灰色と蒼色の組み合わせにしたかったが店にはなかった。


[称号:黒の信徒を獲得しました]


 服を購入して着替えると新しい称号が手に入った。

 効果は光属性攻撃耐性(小)と闇属性適正向上(小)という2つの効果だった。こんなに簡単に称号が手に入るものなのだろうか。ちなみに服とズボン、靴の3点セットで18000Rしたので僕の所持金はほぼすっからかんだ。

 着替えた服に灰神の外套を装備して店を後にしてソプラの街を目指す。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ボク、バルスは途方に暮れていた。

 パーティに誘おうと思った初心者に事情を説明する前に逃げられてしまったのだ。

 このままではクエストを達成できない。


「マヨイ、どこ行ったんだろ」


 見惚れるほど可愛いアバターだった。

 初期装備で武器も持っていないプレイヤーなんて始めたばかりのプレイヤーしかいない。

 たぶん、ボクの性別を間違えているんだ。


「また組合まで戻ってきちゃったよ」


 あの子を見失ったボクはグルグルと同じ場所を歩き回っていたようで、また組合の近くまで来てしまった。

 もしかしたらログアウトしたのかもしれない。



────ねぇ、あの子やばくない?

────うわっマジだ、超かっけぇ

────俺、知ってる。あれ信徒シリーズだぞ



 信徒シリーズといえば組合近くにあるアルテラで一番大きな服飾店に売られている高額商品だ。フレーバー効果のないアイテムにも関わらず、部位平均6000Rもするようなボッタクリ商品を買う人なんていんだ……


「え、あれって、マヨイちゃん?」


 そんな馬鹿な。彼女は初心者のはずだ。

 いや、初日からやっていると言っていたから、もしかしたら『信徒の服』シリーズの値段から良い物だと勘違いして金を貯めていたのかもしれない。

 だとしたら今の彼女は相当に金欠のはずだ。

 今ならパーティに誘えば入ってくれるかも!


待って!」


 そう言ってボクは彼女を追いかけた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



待って!」


 そう呼び掛けて来たのは先刻のホモ野郎。

 服を一新して気分の良かった僕にとっては冷や水を掛けられたようなものだった。


「や、やぁっ!また会ったな!」


「そうですね。で、何の用ですか?」


「その装備、効果もないのに高かっただろ。金欠だろうからオレと一緒にパーティを組まないか?」


 この服の評価は周りの囁きを聞いていれば分かる。

 だが僕からすればゲーム内通貨は手持ちのアイテムを売り払えば収支的にプラスになると思っているし、足りなければ西の森を荒野にしてくればいいだけだ。


 しかし、ナンパにしては必死過ぎる。

 何か事情があるのかもしれない。


「先ほども言ったように仲間と合流する予定なんです」


 だからと言って受け入れるかは別問題だけどな。


「だ、だったらオレも仲間に入れてくれ!」


「は?」


「オレはこう見えてプレイヤースキルに自信があるし、それに装備も同レベルの戦士より揃ってる!」


 嘘を言っているようには見えない。

 というか、やはり必死過ぎる。

 装備に関して言っているのとは事実だし、プレイヤースキルに自信があるのも本当のことなんだろう。


「プレイヤースキルに自信があるってどれくらい?」


 知ってるプレイヤーやプロゲーマーの名前を出してきたら僕の近接戦闘の練習台にしよう。

 そう思いついたのがフラグだったのかもしれない。


「アイ&ショウって知ってるか?」


「まぁ……有名だったし」


 そもそも僕らのことだし。


「最後のFPSで見た2人には勝てないけど、小学5年生頃の


 小学5年生の頃のショウになら勝てるという人は少なからずいる。

 僕は小学5年生の頃に藍香の事が好きだと自覚した。初めての感情を持て余した僕は調子を崩し、それまでなら絶対にしなかったようなミスを何度もやらかした。


 ちなみに、それは藍香の父さんによる策謀によって露見し藍香を激怒させた。


 その結果、将来とんでもない事態アイ&ショウの引退の引き金となる『なんでも1つ願い事を叶える券』を発行するハメになったのだ。


「なら、いつのショウとなら互角?」


「え、そうだなぁ……情けないけど小学4年生のショウにも小学生6年生のショウにも勝てない。ただ小学4年生のアイとならいい勝負ができると思うぞ」


 アイ&ショウは僕らが小学3年生の頃から配信を始めた動画だ。

 こいつは今わざと小学生3年生の頃の僕らを選択肢から除外した。つまり互角ではなく、勝てると思っているのだ。


────このホモ野郎、おもしろい!


「なら決闘しようよ、僕に勝ったら何でも言うこと聞いてあげる」



───────────────

今、何でもって((


バルスちゃんでしたって話

こやつ、性別だけ公開設定にしてないのである(前話参照)


プロットの一部(第15話までのもの)が見つかりました。

クレアが男の娘って書いてあって衝撃的だったけど、本作のクレアは女の子ですからね!


そのせいで女性率高すぎ状態だから今後登場予定のキャラ誰か男性化させなきゃ(なお需要

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