第17話 公開処刑のち公開処刑


それは彼女たちとの4回目の決闘が終わった時だった。


「あれ、なんで復活してこないの?」


【不具合?】

【バグかなんかじゃね?】

【アイ:たぶんデスペナ】

【え、決闘でデスペナ発生すんの!?】


「ちょっと待ってね。運営に問い合わせる」


【おけおけ】

【それにしてもエグかった】

【毎回ラストに残されるミライ】

【いたぶられて飽きたら殺されるミライ】

【習熟度上げるためにダルマにされるリスナー】


『はい、こちら運営のニノマエです』


「決闘で同じ相手を4回全損させたら復活してきません。これは仕様ですか?」


『はい、仕様です』


「契約で彼らに対して獲得した命令権は彼らがログインしていなくても行使できますか?」


『はい、命令権は相手の許諾を得ずに行使が可能です』


「ありがとうございました」


【まさか死体蹴り?】

【アイ:私に良い考えがある】

【それは(相手の)死亡フラグ】

【アイちゃんの良い考えか……】

【小魔王アイちゃん再誕】


 『小魔王アイちゃん』は小学生5年生の頃の配信でリスナーさんが付けた藍香のニックネームだ。


「ただいま!」


「アイ、おかえり。ショウたちは?」


「おいてきたよ」


「西の森に初心者放置?」


【アイちゃんこんちゃ】

【めっちゃ美人になってる】

【成長してないけど成長してる】

【おい馬鹿やめれ】

【スパルタ過ぎない?ww】

【初心者には優しいのがモットーだったでしょ!?】


「マヨイの妹を初心者の枠に入れていいと思う?」


「いや、思うも何も初心者だからね!?」


【マヨイってショウのことか】

【妹も人類卒業してんの?】

【妹さん、前に一度だけ配信出たよね?】

【マジ?いつ頃?】

【第338回放送だぞ、可愛かった】


「え、なんで覚えてるの?」


「すごいね、私も忘れてたのに」


【アイちゃんがガチ負けした珍しい回】

【思い出した】

【ガチ泣きしたアイちゃんを見て妹をボコす兄の図】

【妹ガチ泣きさせたのにアイちゃんを宥めてたよな】

【ちょっとアーカイブ見てくる】


「マヨイ君、配信中すまないがいいだろうか」


 ノウアングラウスさんのこと忘れてた。

 よく考えなくてもやりすぎたかな?


【どなた様?】

【KING'Sのリーダー】

【ミライと同じ事務所のプロゲーマー】

【え、新しい生贄?】

【新しい玩具?】


「リスナーの皆さん、こちらKING'Sのリーダーをひているノウアングラウスさんです。期待してくれているリスナーの方には申し訳ない。今のところは生贄でも玩具でもないです」


「マヨイ君はアイ&ショウのショウでいいのかい?」


 まぁ……普通はバレるよね。


「はい、そうですよ。今度招待状送りますね」


「あ、あぁ……た、楽しみにし、している」


【めっちゃ動揺してますやん】

【そりゃ今あった惨劇を観たら当然】

【でもMMOならプロゲーマーのが有効だよな】

【レベリング速度が団地】


「今のCiLで一番レベル高いのマヨイだけどね」


「ごめん、真面目な話するから少し大人しくしてて」


「はーい」


【はーい】

【はーい】

【はーい】

【はーい】

【ほーい】

【ぼーい】

【ぱーい】


「ミライの被害に遭ったというプレイヤーと会わせて欲しい。図々しいお願いだとは分かっているが、この通りだ!」


「いいよ。アイ、本当は連れて来てるんでしょ?」


「な、なんで分かったの?」

 

「ショウはともかく、初心者のクレアちゃんを藍香が放置してくるわけないじゃん」


【ショウ?】

【この夫婦感よ】

【新しいメンバー?】

【もはや熟年夫婦】

【ショウって言った?】


「ショウです。マヨイ兄さんとアイ姉さんの妹です」


「クレアといいます。あか……ショウちゃんのクラスメイトでしゅ!」


「2人とも昨日の件でこのワカメ頭のオジサンが話したいってさ」


【2代目ショウは妹さんか】

【クレアちゃん可愛い】

【さっきまで名前で呼んでたのにww】

【ワカメ頭ww】

【相変わらずナチュラルに口撃してんな】


「2人には俺たちのチームメイトが迷惑をかけて相当に不快な思いをさせたと聞いている。本当にすまなかった!」


「いいですよ」


「もう気にしてないです」


「「貴方たちより先にエリアボス倒せたから!」」


 おお、すごい。

 藍香が付いてたとはいえよく倒せたな。


「ははは、先を越されちゃったか」


 ノウアングラウスさん、ずいぶんと悔しそうだ。

 その後ろにいるKING'Sのメンバーも苦虫でも食べたような顔をしている。


【アイちゃん、ショウちゃんの実力は?】

【なんで兄のショウに聞かないんだw】

【そんなの僕より弱いの一言で終わるやん】


「相変わらず反射神経が人外クラスね。あとは普通」


【アイちゃん基準の普通か……】

【アイちゃんの言う人外クラスてマヨイクラスやぞ……】

【マヨイも反射神経はいいんだけっけ】


「マヨイの反射神経は私と同じくらいよ。動体視力と並列処理速度と身体操作技術が人類卒業しちゃってるから理論上できる事はなんでもできちゃうの」


「僕はそこまで人間辞めてないよ」


「いや、辞めてるだろ。知ってるぞ」


【ノウアングさんマジレスww】

【人類とは別種族説あるから】

【最後の引退配信忘れてねぇぞ】


「あ、そうだ。アイ、ショウとクレアちゃんをイジメたプレイヤーの名前は?」


「ビル、アイク、トモアキ、ビスケット、ユキナ、ミライ、もう1人居たらしいけど名前は不明。たぶん今回の決闘には参加してなかったんじゃないかしら」


 やっぱり取りこぼしがあったらしい。

 逆恨みして報復に来て欲しいな。


「ビル、アイク、トモアキ、ビスケット、ユキナ、ミライに対して命令権を使用します。キャラクターの削除の禁止、プレイヤーネームの変更の禁止、レッドネームでいる間に獲得した全ての経験値を"蒼神"に譲渡しろ」


 これで3つだ。

 レッドネームから普通のプレイヤーに戻るには無報酬で奉仕活動を数百件単位でこなさなければならないらしいので迷惑プレイヤーにはいい薬だろう。


[命令権をビル、アイク、トモアキ、ビスケット、ユキナ、ミライに対して1回使用しました]


「あれ?」


「どうしたの?」


「どうした?」


【これはやらかし系の予感】

【マヨイ、なろう系主人公デビューか】

【間違いなく何かやらかしたぞ】

【何をやらかした】


「命令権3個使ったつもりだったんだけど1個しか消費しなかった。あと2回命令できちゃうドン」


「なら被害者の2人に案を出して貰いましょ」


「そうだな、俺もそれでいいと思う」


「僕も賛成」


「「えぇ……」」


【唐突な無茶振り】

【心からの『えぇ……』いただきました】

【アイちゃんの新人教育】

【でも2人とも優しそうな子だからなぁ】


「兄さん、私が考えたのは──」


「お兄さん、わたしは────」


「おけおけ。ビル、アイク、トモアキ、ビスケット、ユキナ、ミライに対して命令権を行使します。ゲーム内掲示板の書き込みと閲覧の禁止、レッドネームでいる間は動画配信と動画視聴の禁止、現在所有している全ての資産を凍結し14日以内にレッドネームを解除できなかった場合は凍結された全ての資産を"蒼神"に譲渡しろ」


「「なんか追加されてる!」」


[命令権をビル、アイク、トモアキ、ビスケット、ユキナ、ミライに対して1回使用しました]


「最後の命令権の内容はKING'Sさんが決めてください」


「「「「はぁっ!?」」」」


【共犯にするつもりか】

【悪童は健在だったか】

【それは分かりきってたこと】

【何を今更】


「早く決めないと本気の命令するよ?」


 相手不在だから飽きてきたんだよね。

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