第4話 いいえ、仕様です。
[リスポーンポイントへ戻る YES/NO]
体力が0になると目の前にパネルが現れた。
どうやら体力が0になっても即座に街に戻される訳ではないらしい。とはいえ何かできるというわけでもないのでパネルのYESを選択する。
リスポーンポイントとはプレイヤーが死亡した際に蘇生される場所のことだろう。初期設定から変更した記憶はないので、この場合は噴水のあった広場になるはずだ。
「ふぅ……死んだなぁ……」
予想通り噴水側で復活した。MMOでプレイヤーの体力が0になって死亡した場合、デスペナルティというペナルティが与えられることが多い。
"Continued in Legend"でプレイヤーに与えられるデスペナルティは比較的軽い。メニュー欄から確認できるヘルプには1日に3回まではデスペナルティがないと明記されている。ただし、4回目になると所持金の全没収と6時間のログイン制限が科されるそうだ。
「金稼ぎしてからと思ったけど、せっかく戻って来たんだしやってみるか」
これは果物屋のおばさんから聞いた話だ。
この噴水のある広場"カイシン噴水広場"の"カイシン"とは神様の名前らしい。この噴水の中央に置かれている女神像に"価値のあるもの"を捧げることで様々な恩恵を受けることができるのだとか。
「"価値のあるもの"か……」
当初は価値のあるものをお金のことだと思っていた。しかし、それならストレートに"お金を捧げろ"という表現でもいいはずだ。わざわざ"価値のあるもの"という表現をする必要はない。
現在の手持ちのもので最も"価値のあるもの"は間違いなく"灰真珠の首飾り"だ。金額にして1000Rもしたコレを安易に捧げるのは躊躇せざるを得ない。
しかも、スキルを使用するために必要な魔術媒体でもあるのだ。コレを失うとスキルが使えなくなってしまう。
「ま、いっか!」
魔術媒体は組合でお金を稼げば買える。
そう言い訳をしながら好奇心に白旗をあげた。
躊躇なく噴水の中へと足を踏み入れる。
「うおっ冷たっ」
中央の女神像を守るかのように水が噴き出しているが、そこまで勢いがあるわけでもなく普通に女神像の前まで辿り着いた。
「礼儀作法とか分からないけど、これでいいのかな?」
装備していた首飾りを外し女神像の首に掛ける。
広場にいるプレイヤーたちからの視線が痛い。
[素質:信徒を獲得しました]
[素質:神官を獲得しました]
[素質:神使を獲得しました]
[覚醒:
[スキル:灰の神威を習得しました]
[称号:灰神の使徒を獲得しました]
[称号:灰神の加護を獲得しました]
[称号:灰神の寵愛を獲得しました]
[神器:灰神珠の瞳を獲得しました]
[神器:灰神珠の瞳に適応しました]
[スキル:灰神珠の瞳を習得しました]
[ワールドアナウンス:信徒の素質を獲得したプレイヤーが現れました。以後、信徒の素質の獲得条件が緩和されます]
[ワールドアナウンス:覚醒を獲得したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に覚醒の項が追加されます]
[ワールドアナウンス:称号を獲得したプレイヤーが現れました。以後、プロフィール欄に称号の項が追加されます]
女神像に首飾りを掛けた瞬間、怒涛と言っていい量の通知、そしてそれらが原因だと思われるワールドアナウンス響き渡った。ワールドアナウンスとは全プレイヤーに重要な連絡が通知される機能のことだ。
そしてトドメは……
[クエスト:彩神の封印窟を受注しました。10秒後に専用フィールドに移動します]
考えるのが面倒になった。
アナウンスされた内容を確認するのは専用フィールドに移動してからにしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
カウントダウンが終わった直後、周囲の光景が洞窟のような空間に切り替わった。ここがアナウンスの最後に表示されたクエストの専用フィールドなのだろう。
脱出するにしても攻略するにしてもアナウンスされた内容を確認するのが優先だろう。
ありがたいことに敵が出現する様子はない。
とりあえずクエストの内容から確認する。
◼︎彩神の封印窟
最下層に封印された彩神を救え
報酬:?
「情報量なさすぎでは?」
まずクリアするのに必要なのは封印を解除する手段だ。おそらくモンスターとの戦闘もあるだろうから戦闘力も必要だろう。
次にメニューからプロフィールを確認する。
◼︎パーソナル
名前:マヨイ
性別:男
位階:1
資質:狩人/魔術士/神使
覚醒:灰神の使徒
称号:灰神の寵愛
◼︎ステータス
体力:94
魔力:202
筋力:6
耐久:6
器用:22
敏捷:29
知力:34
精神:45
◼︎スキル
①広域探索
②魔力弾
③灰の神威
④灰神珠の瞳
「チートかな?」
まずステータスが想像以上に上がっていた。
その原因はこれらだ。
間違いなくゲーム序盤で手に入れていいものではない。
【神使の素質】
神との邂逅を赦された者
精神+7 知力+5 敏捷+3 器用+1
【灰神の使徒】
灰神の神威を代行する者
精神+11 知力+7 敏捷+5 器用+3
スキル:灰の神威の習得
【灰神の寵愛】
ひ・み・つ
状態異常無効
精神+19 知力+15 敏捷+13 器用+11
そして極め付けがコレだ。
名称:灰の神威
分類:補助 神聖
対象:自身
射程:なし
効果:移動速度+100%
スキル再使用条件緩和
ステータス減少効果反転
再使用:なし
名称:灰神珠の瞳
分類:補助 神器
対象:自身
射程:なし
効果:両眼を魔法媒体として扱える
魔法ならび魔術の思考発動解禁
攻撃スキル並列使用解禁
暗視
鑑定
看破
再使用:なし
補助効果なので使いこなすにはプレイヤースキルが必要になりそうだが、弱いことは何も書いてないのが強い。特に魔力弾の再使用条件が"なし"になっていたのは非常に大きい変化だ。
女神像に灰真珠の首飾りを捧げたことで失った魔術媒体はスキルに内包されるという形で戻ってきたのも嬉しい誤算だ。
さて、そろそろ封印窟の中へ入ってみよう。
そう一歩を踏み出して──
「──え」
身体のバランスを大きく崩して転んだ。
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