第28話 志賀城の戦い2

武田晴信に包囲された志賀城を救うべく上野から碓氷峠を越え信濃に入った山内上杉の軍勢。これに対し武田晴信は真田幸隆の案を聞いた板垣信方の提案を受け入れ、甘利虎泰と共に山内上杉の迎撃へと向かわせるのでありました。晴信の目的は迎撃し追い払うことなのでありましたが……。




甘利虎泰「殿には本当のことを伝えているのか?」


板垣信方「いや。伝えてはおらぬ。」


甘利虎泰「そうだよな……。既に金堀衆が手を回して城の水の手を断っているわけだから。」


板垣信方「そう遠くない時期に降伏して来ることになるのではあるが。」


甘利虎泰「お前のところに来た真田の。山内に対する恨みは相当のものがあるのだろうな……。」


板垣信方「本来であれば後詰を追い返しさえすれば良いのではあるが……。」


甘利虎泰「ただそこまでやるとなると、こちらもそれ相応の覚悟が必要になるな。」


板垣信方「その辺りも(土地勘のある)真田が申していた。ここで迎え撃つべし。と……。」




 山内上杉の軍勢は、今回武田晴信が志賀城攻めに投じた数よりも多く。当然城を取り囲みながらの迎撃となるため、山内上杉に対する武田の軍勢はより少なくなる。




板垣信方「碓氷峠を越えて志賀城へと向かう場合。必ずここを通過することになる。ここならば兵数の差が活きることは無く。こちらが相手に気付かれずに兵を伏せることも出来る。」


甘利虎泰「あとは何も知らずにやってくる山内を待つ。か……。」




 山内上杉迎撃に真田幸隆が進言した場所。それは小田井原。碓氷峠から佐久に入る入り口に位置するこの地に板垣信方と甘利虎泰は兵を伏せるのでありました。




甘利虎泰「ところで信方。その真田幸隆は本当に信用することが出来るのか?元をただせば我らに彼の本拠地が奪われ、山内上杉のもとで再起を誓った人物。」


板垣信方「山内のスパイ。と言うことか?」


甘利虎泰「左様。もしそうであれば。」


板垣信方「逆に我々が。と言うことか?」


甘利虎泰「左様。」


板垣信方「真田はここにおるわけであるから問題ないと思うが。まぁその時はその時だ。それでやられるようなら我らはそこまでだった。と言うことだ。」


甘利虎泰「まぁそうだな。」


板垣信方「それよりも真田が提案したゲームに乗ってみたほうが。」


甘利虎泰「面白い。ってものかな?」


板垣信方「そう言うこと。」


甘利虎泰「で。手勢に今回の目的は伝えたのか?」


板垣信方「いや。まずは山内上杉の軍勢を駆逐する方が先だ。目的に対して動くのはそのあとでも遅くはない。」


甘利虎泰「そうだな。我らの兵のほうが少ないことを忘れておったわ。」




 志賀城包囲から10日。真田幸隆の進言の通り小田井原に差し掛かった山内上杉の軍勢を板垣、甘利両隊が撃滅。山内上杉勢の名立たる将10数名と3000にも上る兵を討ち取る大戦果をおさめるのでありました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る