ミライ=カライ

QR

日本帝國

 2036年日本.....


「続いてのニュースです。」

 テレビの中で女子アナが原稿を読み上げる、俺はそれが聞こえないように飲んでいた味噌汁を大きな音を立ててすする。


「帝國政府議会は先の憲法改正で正式に自衛隊が國防軍となった事を受け、今朝の臨時國会で一部の高校を士官学校とする法案を採択しました。

浅井 勝利あざい かつとし首相はこの法案によって國民に高度な軍事教育が行われると─ブチッ」

 俺はテレビを消し身支度をして家を出る


 俺の名前は神谷 勇かみや ゆう私立ウィング学園に通う高校二年生だ

 親は二人共、政府系の研究機関に勤めていてここ数年は連日研究所に詰めていて実質俺は1人暮らし状態だ

 

「「勇!」」


 声のした方を振り返ると小学の頃からの幼馴染の桃園 優ももぞの ゆい横田 心一よこた しんいちが駆け寄ってくる

 

 「おはよっ、勇っ!」優がはじけるような笑顔で挨拶をする

 「おはよう、優」

 俺は優に笑顔で答える

 優は絵に描いたような美人ですれ違う人が振り返るほどだ



 「おはよう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!勇!!!!!!!!!!!!」心一が鼓膜がはじけるような声で挨拶をする

 「おはよう、今日も元気だな心一は・・・・」

 俺が耳を抑えながら言うと

 「お前が元気無さすぎるんだよ、どうだ?一緒に走り込みでも?」

 「いや、遠慮しとくよ・・・」

 心一は何かと走り込みを勧める、よく言えば体育会系のスットイックな性格の爽やかイケメンだが実のところはただの脳筋といった方が正しい

 

 そんな感じで俺と優と脳筋が学校に向かっていると

 「中國人は日本帝國に要らない!!今すぐ退去せよ!!」と大音量で流す黒塗りの車が通り過ぎて行った

 「最近多いわね、ああいう車・・・」

 優が不安そうな表情で言う

 「あぁ・・・」

 黒塗りの車は最近では、真夜中の住宅街だろうが所かまわず騒音を出す様になっている・・・警察はと言うとこの状況を黙認しているのが現状だ


 

 「勇?どうしたの?」

 俺が目くじらを立てていると優が顔を覗き込んでくる

 「ん?あぁ・・・ただの寝不足だよ———」

 「ふーん、そう・・・まぁ、良いわ早く学校に行きましょ―――遅れちゃう・・・」

 

 「そうだな、じゃぁ・・・」

 そう言うと心一は、クランチングの姿勢をしたかと思えばいつの間にか数百メーター先まで走っていった

 

 「おい、待てよ!」  

 俺と優は心一を追いかけて走りだす


 


 「ふぅ、着いた・・・」

 「心一・・待って・・・くれ・・・・・」

 結局、俺達は心一に追いつけないまま学校まで走ってきてしまった

 「し・・ん・・・い・・t・・・」

 優は全力で心一に食らい付こうとしたせいか、真っ白な灰になっている


 灰になった優の肩を二人で担いで正門をくぐると、先生たちが体育館に全校生徒を誘導していた

 先生たちの誘導に従い体育館に入って中を見回すとそこにはたくさんの生徒が立っていてその横を先生たちが固める形で立っていた

  

 そして、先生たちの横で仏頂面をして立っている二人組の男の目つきの悪い男と目が合った

 目が合ったその男はにやけながら中指を立てる

 中指を立てられた俺は訳が分からず先生に指定された所に立つ

 

 全校生徒が揃いしばらくして校長先生と教頭先生が壇上に立ち、校長先生がマイクの前に立ち一礼をし口を開く


 「皆さんお早うございます。本日皆さんに集まってもらったのは先日、日本帝國議会で決まった全国にある高校の一部士官学校化についてです」

 校長先生の口から出てきた言葉に体育館にいた全員にどよめきが走る

 

 しばらくしてどよめきが落ち着き、校長先生が神妙な顔で再び口を開く

 「今回の士官学校化の決定に伴い政府は対象となる高校に1通のメールを送信しました・・当校もそのメールを有難く政府から頂きましたので政府の全校生徒・教員の前で読むようにとの指示に従い皆さんの前でメールを読ませて頂きます」

 そう言うと校長先生はボディコン(俺たちの時代のスマホ)を起動しメールを読み始めた


 「拝啓ウィング学園校長殿・・・帝國議会で決まった士官学校化の対象にめでたくも貴校が決まった・・・それに伴い校長殿貴殿の校長職を解き、政府直轄の教育議会の議員に任命する事をここに通達する―――」

 その言葉が出たとたん全生徒・教員に衝撃が走る


 

 「後任の校長については後日、帝國軍及び帝國政府より数人の臨時教官と共に派遣される、そして新校長が着任するまでに現在のクラスを再編するとともに部活動の廃止、そしてを行うことを命ずる」

 その言葉が出たとたん多くの先生達が椅子から立ち上がり壇上に駆け上がる

 「どういう事ですか⁉校長先生!!」

 「部活が廃止って・・・ここまで頑張ってきた生徒の気持ちを踏みにじるつもりですか!!?」

 先生達が校長先生に詰め寄る、どうやら何も知らされずに集められたのは先生たちもらしい

 「私はもう・・・校長では・・・ありません・・」

 校長先生が絞り出すように言うと先生たちは一気に黙り込む


 体育館に重い空気が広がる


 「部活が・・・廃止???」

 そう言って心一は膝から崩れ落ちる

 「「心一・・・」」

 泣き出した心一に俺と優は駆け寄る

 部活に命を懸けていた心一からすればこの状態は耐え難いだろう・・・

 周りを見ると他にも何人もの生徒が泣き崩れているのが見える

 そんな異様な状態でも元校長先生は構わず続ける



 「生徒の諸君へ、君たちは光栄にも士官学生としてこの日本帝國を守る柱となれる・・・この事に感謝し、士官学生として恥じぬ行動を常日頃心掛けるように――――――これで政府からの通達内容は以上です・・・・・ここからは私個人から皆さんに向けての最後の言葉です」

 そう言うと校長先生はボディコンを切り生徒一人一人の顔をやさしい顔で見ながら話し始める


 「これから皆さんは誰も経験したことのない壁に立ち向かうことになります・・・その壁に立ち向かう中で何が正しくて間違っているのか分からなくなる時があるでしょう————でも私は信じてます!皆さんならでこの國のミライを切り拓いてくれると・・・」

 涙目で校長先生は話し終えるとそのままどこからともなく現れた黒服に連れられながら体育館を出ていった

 

  


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る