第29話 避難所への帰還



「じゃあ、取り敢えず子どもたちを避難所に連れて戻ろうか。」


{そうだな。だがどうする?時間的に送ってからダンジョンに行くわけにもいかんだろう?}


うーん、どうしようか。日の傾き具合から、今の時刻は大体午後二時から三時の間であると予想できる。


〈ここからダンジョンまでは大体徒歩で20分ほどであると思われます。〉


ふむぅ、1番微妙な時間かもしれんなぁ。行き帰りで凡そ40分、疲労等も鑑みると1時間ぐらいと考えるのがいいだろう多分ここから。で、今は9月の下旬、日の入りまではあと2~3時間ほどと言ったところだろうか。


「今日はやめとくかねえ。明日、朝イチぐらいから向かうことにしよう。」


{あぁ、それでいいだろう。しかし、昼の飯はどうするんだ?流石に無しはきついだろ。それとも、昼には帰ってくるのか?}


「まぁ、そこは俺たちにおまかせってことで。じゃあ、とりあえず避難所目指しますかね。行くぞ皆。殿は俺がやろう。子供たちと、戦闘能力のない二人を中央に守る形で行くぞ。」


「「OK!」」


☆☆☆

途中でモンスターの大群と遭遇してピンチ、なんてことも無く、道中は襲われないまま避難所にたどり着いた。


「「兄ちゃんたち、ありがとう!」」


「おう、いいってことよ。」


子どもたちから、元気にお礼された。最初であった時のおびえた様子とは打って変わってにっこにこだ。心なしか、この前来た時よりも避難所の様子ものほほんとしている。


この状況は、現状から見たら褒められたものではないが、気を張り詰めすぎるのもよくない。これはこれでありだろう。


「それにしても、道中一切モンスターたちと遭遇しませんでしたね。」


蕾の疑問はもっともだ。


「十中八九俺が原因だな。最初のレベル上げの時はスキルで抑えていた気配を、今はガンガンに垂れ流してたんだ。」


{そんなことでも意味があるのか?}


まぁ、聞いてきたのは正十郎だけだが、俺たちのメンバー含め、俺たちの周りにいる人たち、全員が気になる、という目を向けてきている。


「あぁ、詳しくは知らんが、そうらしいぞ。なんでもレベルが上がると、オーラ的な物がでてきて、弱い魔物は寄り付きにくくなるらしい。」


避難所の大人たちが、心なしかうれしそうに見える。まぁ、今まで死に物狂いで守ってきたものが、今日はほぼ確実に守られるであろうから、だろうな。


それにしても、何でモンスターはその辺の雑魚でも、オーラを感じ取れるんだ?今の俺でも無理そうなんだが。親父はできるかなぁ?できそうな気がしなくもない。

あんな残念親父でも、中に入っている剣の技術は達人級。一つの「道」の権威だ。


俺も少しは変われたのかねぇ。昔なら、こうやって親父のことを認められなかっただろう。こんな風になれたのも、周りの人たちのおかげだろう。

今もそうだが、俺にはもったいないぐらいのやつらだ。


今のこの状況も含めて、俺は恵まれているんだと実感する。

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