【生き死に勝負】
【生き死に勝負】
親父が四十二歳と三ヶ月余を生きたから、それ以上生きれば自分達の勝ちと兄と姉がよく話している
「死んだら負け」と兄がいつも言う
それは兄の意見だと尊重する
しかし、果たしてそれは正しいのかと問われたならば俺は正しくないと思う
世の中には五歳まで生きることが出来ずに死ぬ子供もざらにいる
その子供に対して死んだら負けと言えるのか?
その子供の親に対して死んだら負けと言えるのか?
大切な人が長生きしてくれることに越したことはない
生きてこその人生だと思う
しかし、だからと言って長生きすることは勝ち負けではないと思う
一歳で死んだ子供も、四十二歳で死んだ親父も、九十歳を越えて死んだばあちゃんも、皆が精一杯生きて死んだんだと思う
そこには勝ち負けはない
生まれてくる前に子供が死んでしまった悲しみを知る兄、そして姉が、死んだら負けと言うのはどうなのだろうか?
親父が死んだ当時の若い兄と姉が、早世した親父に対して、親父より長生きしてやると意気込んだ故の言葉なのかも知れない しかし、生まれてくることが出来なかった子供に対して涙する人が、もっと前に死んだ親父に対しては死んだら負けと言うのはどうなのだろうか?
生き死には勝負ではないと思う
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