第8話 カステラと御守りと。

―― 11月28日 木曜



「あ~ちちち!」

みんなのお母さんは、大きなオーブンから最後のカステラを取り出してくれた。


「う~ん!いちごも良い匂い」

我ながら、大変良く出来ました。


私とみんなのお母さんで4種類のカステラを作った。

チーズ、ミルク、抹茶に、いちご!


ふふっ…どれも美味しそう。



「うん!おいし~!」

「どれ…おいしいねぇ!」

みんなのお母さんが、特別に準備してくれた大きな青いお皿に盛り付けながら、たまに二人で味見もした。


楽しかったし、楽しみだった。

イマリは喜んでくれるかな…?



「お母さん、これ12月1日まで大丈夫?」

「ラップして、氷の上に置いとけば…大丈夫!」

みんなのお母さんは、頼もしい笑顔で答えた。



片付けも終わり、私は頭を下げた。

「…お母さん!…カステラ作り、教えてくれてありがとう!……それと、…イマリのこと……お願いします!」


「わかってるよ……わかってる……」

みんなのお母さんは、背を向けたまま、振り返らなかった。



―― 同日 夜


「「 ごちそうさまでした! 」」

私とイマリは、おいしい夕ごはんを食べ終えた。


食器を戻し、ゆっくりしていると

イマリが台所に消えた。

少しして、

「セイラ…ちょっと…」

みんなのお母さんが、手招きしている。


「…なに?」

私は良く解らないまま、台所に入った。


そこには、イマリと、みんなのお母さんの笑顔があった。

「お姉ちゃん、おまもりぃ」

イマリは小さな手で、黒色の御守りを差し出した。

良く見ると、イマリの指は針の刺し傷だらけになっていた。

「イマリちゃんの手作りだよ!」

みんなのお母さんが教えたんだろう、満面の笑みを浮かべてる。

「ありがとうイマリ」

「ありがとうお母さん」


私は二人に、抱き付いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る