第6話 女の命

―― 11月26日 火曜


私は深呼吸してから…意を決した。

「お母さんっ!バッサリいってやって下さい!」

「バッサリいって、いってくださいっ!」

隣に座っているイマリが真似をする。


私達は、いつも朝会をしている割と大きな部屋にいた。

私達姉妹の前には、大きな鏡がセットされ、後ろでは、みんなのお母さんがチョッキンチョッキンと、ハサミを打ち鳴らしている。


そう!決意の断髪式なのだ。


イマリは、イマリもやるって言って聞かなかったので、しょうがなく…。

もったいない…綺麗な黒髪が腰まであったのに。


「…じゃあ…いくよぉ?」

どこか楽しげにみんなのお母さんは、私の髪を持ち、ハサミを開いた。


"ジョッキン!"

「…うう~」

長年、ともにした髪との別れである。涙が出そうになる。


「…うー!」

イマリも、うめいたが、イマリは、まだ何もされてない…。


"ジョッキン!ジョッキン!"

手際良く、髪がカットされていく。


みんなのお母さんは男子も女子も、みんなの髪をいつも切ってくれる、カットのプロでもある。



―― 「はい!おしまい!」

みんなのお母さんは、イマリのショートカットにした頭を撫でている。


「ありがとう、ございますっ!」

イマリは椅子から下りて、走り回って喜んだ。


そんなイマリを、私とみんなのお母さんは笑顔で見つめていた。


「イマリ!私は、あとちょっとだから、外で遊んでて!」

「はぁい!」

イマリは、キャッキャ言いながら、修行場の広場に駆けて行った。


「セイラも、もうすぐ…終わるよぉ」

みんなのお母さんが後ろに立ち、鏡越しに微笑んだ。


「……お母さん……私…………」

どうしたらいいのか、相談したい…!

でも、何て言えば……わからないよ……


「……私…!…ううぅぅぇぇえーん!」

後ろから、みんなのお母さんに

そっと、抱きしめられて

ついに、涙が溢れた。


「あぁぁぁん…うぅぇぇえええん」

止まらない涙。



……私はしばらく、泣いた。

みんなのお母さんの腕の中で。


お母さんは、最後に言った。

「セイラ、何があっても生きなさい…生きてさえいれば、いつかイマリちゃんとも会えるから」

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