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 ゲーム画面上の瀬川せがわアスナの目の前に現れた人物、名乗ってはいないのだがふきだしに名前が表示されている。

そこで、アスナは目の前にいる人物がアオイドスであることを把握した。以前にもどこかのサイトで名前は見覚えがあったのだが……。

(まさか、このタイミングであのアオイドスに会えるとは)

 アスナも想定外……というような反応だったのだが、情報を彼から何と変えようとも考える。

全ては、ある人物による陰謀なのか、と。

「どうやら、君は若干物分かりがよさそうだ」

 メッセージを打ち込んだのち、アオイドスから反応があった。

AI的な返しではないので、いわゆるゲーム中のNPCというわけでもないようである。

つまり、あの時のアオイドスは……という可能性も否定できないのだが。

「確かに、一連の炎上動画は事実を言っているだろう。実際、自分が情報を提供したわけだが――」

 さらりと彼はフレイの一連の炎上動画に関する事実にも言及した。どうやら、アレ自体は本当らしい。

何処まで事実なのか……聞き出そうとしても、彼はさらりと話すこともなかった。そう簡単に重要な情報を得るのは難しいか。

「他にも数人、これと同じことに言及している動画はあった。しかし、フレイほどに熱心な人物はいなかったよ。単にバズるためのネタが欲しかっただけ……という人物が多かった」

「こちらとしては、SNS上での炎上は自己責任……そういう使い方しかできないという程度にしか過ぎなかったという認識だが」

「しかし、こちらとしては炎上商法に想定しているような情報ではないのだがね」

 その後もアオイドスとやり取りをしていく内に、フレイの言っていたことに真実味が出てきたのは間違いない。

しかし、そのような情報を何処で仕入れたのか? それをぶつけても、彼が答えることはなかった。



 結局、アスナはアオイドスのペースに飲まれるような形にはなるものの、情報を得ることはできた。

アオイドスの方も、しばらくして姿を消したようである。ログアウトしたというべきなのかもしれないが。

「寄り道はあったけど、まずは……」

 あくまでも、ここはバーチャルドライバーのフィールドなのは間違いない。

しかし、実際にアレをプレイしていないのでフィールドにいるとしても、まだスタートラインには立っていないのと同じだ。

ゲームをプレイするためのエリアへ向かおうとした矢先、アスナは大型ビジョンと思われるような場所で、とある映像を目撃することになる。



 その映像とは、アスナの探していたバーチャルドライバーの動画と見えるものだった。

パワードスーツを装着したアバターが上空のアンノウンと思わしき敵を撃破していくのだが、テンポよく撃破できているとは思えない。

まるで、手探りで操作をしているような気配さえ感じるだろう。使用している武器はビームライフルなのだが、まれにビームが敵にかすりすらしないときもある。

(あの武器、やっぱり……)

 アスナが気になっているのは、ビームライフルの形状ではない。ビームの火力はアンノウンを一撃で撃破するほどの威力だが……そちらも二の次だ。

やはりというか、世界観を狂わせているような感覚を持つワンポイントが、ビームライフルにもあったのである。

 その後も該当プレイヤーは何とか苦戦をしつつも、アンノウンを何とか撃破した。どうやら、一定数を超えると出現しないようである。

そうなると、あの時に現れたアンノウンも出現する数は限られていた、という事になるだろう。全ては、最初から計画的だったのか?

アレに関して言えばバーチャルアイドルのPR動画やゲームのCMではないことをアオイドスも言及していた。

(君は、フィクションであるはずの存在が現実に現れたら、どう思うかな?)

 アオイドスは、こういう風にも言っていた。

明らかに遠回しにだが、アニメやゲーム作品のコスプレイヤー、それにバーチャルアイドルを指し示すのだろう。

過去にもリアルとバーチャルという境目が曖昧になってきた時はあったはずだ。一体、何がユーザーをそこまでさせるのか?

「実際に、ゲームをプレイしてみないと」

 アスナは動画を見終えて、そう思う。肝心のフィールドはどこにあるのか……と思ったが、動画終了後にCMが流れたのである。

『バーチャルドライバー、それは無限の可能性の世界。君も新体験を目撃してみないか?』

 CMにフィールドの場所が書いてあったわけではない。二次元バーコードが表示されていただけだが、それでも十分だった。

アスナは該当する二次元バーコードをアバターのスキャナーで読み取ると、バーチャルフィールドの位置が表示されたのである。

「なるほど。そういう事だったのね」

 場所は把握できたので、次は……という事で、アスナは地図に表示されたポイントの場所へと向かう事にした。

リアルでいうと草加駅から若干離れたような位置にあるのだが……。

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