第1話  クソガキとの『思い出』

 1


 苦しい。


 なんだ、この押しつぶされるような圧迫感は。


 生暖かい何かが、腹の上に……


 しかもなんか揺れて――




「ふはははは」


 目が覚めると、まず視界に入ったのは、小さな背中だった。


 栗色のロングヘアを垂らした、小さな背中。


 幼女向けのアニメがプリントされたTシャツにデニム素材の短パンという夏らしい服装。


 隣の家のクソガ――女の子、春山はるやま未夜みやが、俺の腹の上に座ってテレビを見ていた。


「ふはははは、じゃねぇ。お前、いつ上がり込んだんだ」


 時計に目をやるとまだ九時前だった。


「お前、日曜なのにいつまで寝てるんだ」


「なんだと」


 未夜の脇に手を差し込み、くすぐる。


「おわ、おばさんが入れてくれたんだよ、うひゃひゃ」


「あのババア、こんな朝っぱらからうるさいのを」


「あひゃひゃ、やめ、やめぇ」


 未夜は隣の家に住む小学一年生。

 お隣さんという縁から、こいつが赤ん坊のころから何かと世話をしたり遊んでやった。昔は可愛げがあったが、小学校に上がってからだんだんと生意気になった。


「今日は久々に部活がないオフなんだ。ゆっくり休ませろ」


 女の子は成長が早いとか、マセてるとか、そういう類のものではない。


「あー、一回戦で負けたから今日は休みなんだってな」


「このガキ」


「うひゃうひゃうひゃひゃ」


 そう、こいつは……


「や、やめ、ギブギブ」


「ふう、疲れた。くすぐりすぎて汗かいたわ」





「なんだ、夏バテか。ザコめ」



 俺をのだ。

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