第27話 本作は性描写有りなので
その日の夕方。
夕食を食べ終えると、肉を取ってきた俺はみんなに片づけを任せて、病み上がりの伊舞と一緒に、縁側に座って一息ついていた。
「あーうまかった。三日ぶりなのに、なんだか久しぶりに肉を食べた気分だよ」
「私も。これも赤音が来てくれたおかげだね」
みんなと一緒に焼肉を堪能した伊舞も、満足げに頷いた。
「あぁ。なんか、人材に恵まれすぎてて作為すら感じるよ」
「かもね。でも恭平、大丈夫だったの? 目の前でキョンを、ほら、アレして、平気?」
精一杯言葉をオブラートに包みながら、気遣ってくれる伊舞。
でも俺は、その優しさに漂白された言葉しか返せなかった。
「あー、うん、まぁその前に100倍ショッキングなものを見ちゃったから……」
「え? 何があったの?」
「伊舞は殺意の波動に目覚めないよな?」
「ますますわからないんだけど?」
伊舞は可愛く眉根を寄せて、困り顔を作った。
「ハニー♪」
そこへ、赤音の明るい声が飛び込んできた。
俺の恋人を自称するだけあり、彼女も俺らと同じ最初に直した家、拠点に住むことになった。
「おう、どうした赤音?」
「ねぇねぇ、ハニーって高温の湯気とか水蒸気とか出せるんだよね?」
赤音は縁側で四つん這いになると、興味津々と目を輝かせながら、詰め寄ってきた。
「できるぞ?」
「じゃあ一緒に来て。サウナお願い」
「いいけど、30分経ったら風呂の時間で他の女子たちもくるから、その前に換気窓開けろよ?」
「わかってるよ」
「今からでもサウナ室、増設しようか?」
俺が靴を履いて庭先に出ると、伊舞がそう言った。
「そんなことして、また倒れたらどうするんだよ。明日にしておけ」
「うん、じゃあ、お言葉に甘えるね。あ、それと今朝、ミカンの香りのするシャンプーと石鹸、再構築しておいたから、よかったら使って。防虫効果のあるリモネンとシトロネラール入りだから、害虫対策になると思うよ」
「相変わらずの万能選手だな。さっそく試してみるよ。じゃあちょっと早いけどお湯張りに行くか」
「うん♪」
返事をして、また赤音は腕を組んできた。
薄着越しの胸が、相変わらず気持ちよい。
◆
大浴場に移動した俺は、赤音を脱衣所に残して、一人風呂場に入った。
まずは、石造りの風呂場上部の木窓を閉めて密閉。
それから、左手から100度の水蒸気を噴射させながら、右手からは44度のお湯をバスタブに注ぎ込んだ。
大浴場の中はすぐに100度の水蒸気で満たされつつ、すぐ100度以下になって、湯気に変化する。
まるで霧の中にいるように、白い湯気で満たされ……なんていうことはない。
マンガやアニメだと、お風呂シーンでは、霧かと見間違うような湯気に包まれ、湯気は線画でくっきりと描かれる。
それで裸のヒロインとばったりでくわしても、湯気でほとんど見えなかったとか、女湯に迷い込んだ主人公が霧にまぎれて逃げる。
なんてストーリーが多くある。
でも、スモークを焚いているわけじゃあるまいし、広い大浴場が濃霧みたいな湯気で満たされるわけもない。
溢れる熱気で額から汗が流れ、シャツが背中に張り付くも、視界は良好だ。
「ふぅ、こんなもんかな」
家の風呂でも、妹にせがまれてサウナごっこしたなぁ、としみじみ懐かしんでいると、脱衣所から赤音が呼びかけてきた。
「ハニー、もういーい?」
「おういいぞ。いま出るから」
ガラリ
――は?
全裸の赤音が立っていた。
スイカに近い特大メロンのような白い豊乳が揺れて、淡く色づいている先端が、空中に桃色の軌跡を描いた。
細くくびれたウエストにはチャームポイントの小さなおへそ。
その下には、わずかに丸みを帯びた下腹部、そして、無修正のデリケートゾーンが丸見えだった。
けど、赤音は気にした様子もなく、満面の笑顔を浮かべた。
「わぁ、暑いねぇ、でもいい気持ち♪」
「ッッ…………」
どんなエロ画像も映像もゴミと化す【無限解像度】と【立体感】を持つ本物の生々しさに、俺は全意思力を持って行かれた。
マンガはエロく見えるよう美化、デフォルメされているだけで、本物の裸体はけっこうエググロイなんて話もあるけど、赤音の裸は、むしろマンガと実写の上位互換だった。
赤音が俺の前を横切って、バスタブのお湯を手で触る。
大きく張りのあるお尻を向けられて、心臓が跳ね上がった。
赤音のお尻は日本人離れしたボリュームだけど、重力に抗って持ち上がり、抜群の弾力とスイカのような丸みを誇示していた。
「お湯はまだ熱いけど、30分もすればちょうどよくなるかな。じゃあハニー、一緒にサウナ、楽しもうね♪」
「一緒!? おうあぁっ!?」
赤音がぐるんと振り返ると、豊満すぎるおっぱいが、ワンテンポ遅れて前を向いた。
そのダイナミックな揺れに心臓が止まって、視線と意識を根こそぎ持っていかれてしまう。
大きさも形も珠玉にして至高。赤音のおっぱいは、まさに【豊麗】の二文字に尽きた。
「もう、ハニーはえっちだなぁ、ボクのおっぱいに夢中になっちゃって♪」
「え!? あ!? いやそれは!?」
ようやく正気が戻ってきて、俺が慌てると、赤音はますます嬉しそうに笑った。
「嬉しいなぁ。ハニー、ボクのカラダ大好きなんだ。ねぇねぇ、ボクとえっちなことしたいって思う? ボクのことめちゃくちゃにしたいって思う?」
小悪魔的な笑みを浮かべながら、赤音は前かがみになって、俺の顔を覗き込んできた。
その妖艶さに、止まった心臓が今度は破裂しそうなぐらい暴れ始めた。
それから、赤音のおっぱいを、腰を、背中の向こうに実ったお尻のラインと割れ目を、順に注視してしまう。
――赤音を……めちゃくちゃに……。
脳内に、偏差値23ぐらいの下世話な妄想が広がって、俺は必死に理性をかき集めた。
「あ、あぁの、あう、あう……」
いま、ここで理性の手綱を放してしまえば、絶対に良くないことが起こる。
きっと、赤音を傷つけてしまう。
赤音は、襲い掛かる男子たちを血の海に沈めるほど豪気で貞淑な女子だ。
たぶん、赤音は処女だろう。
その赤音に気に入られ選ばれるのは光栄だし嬉しいけど、けどでもだけど、男の本気を知らない赤音に俺の欲望をぶつけたら、きっと彼女を傷つけてしまう。
下手をすれば、男性恐怖症にしてしまうだろう。
それだけは、絶対に避けたかった。
でも、彼女の裸体の誘惑から逃げ出す根性もなくて、俺はその場で狼狽え続けた。
すると、途端に赤音の顔から妖艶さが抜け落ちて、無邪気さがはじけた。
「あはは、ハニーってばおかしいの♪ ごめんねハニー。ちょっと遊びすぎたよ。でも、そういうところが好きだよ。女の子のことをとことん大事にしちゃう優しいところが、ボクは大好き♪」
天真爛漫な笑みを見せられて、俺は獣欲ではなく愛欲が刺激された。
彼女のカラダではなく、彼女自身に、惹きつけられたのだ。
女の子から、こんなにもストレートに好意を向けられたのは初めてで、その嬉しさも相まって、本当に、恋に落ちそうだった。
「ほい」
前ボタンを全て外されたシャツを下ろされた。半そでのシャツが、腕から引き抜かれた。
「え?!」
「ほらほら、早く脱いだ脱いだ」
次いで、赤音は俺の短パンに手をかけた。
「ちょまっ、ストップ! いま下半身駄目だから! 臨戦態勢だから!」
「下半身が臨戦態勢ってどういうことかな?」
意地悪な笑みを浮かべる。
――うぉおおお! なんて凶悪な奴なんだぁああああ!
「まぁまぁいいから、早く一緒に入ろうよぉ♪」
「楽しそうだな赤音、邪魔するぞ」
ガラリ
振り返れば、そこには全裸の獅子王狩奈が立っていた。
スイカ大の爆乳。
正面からでもサイズのわかる横乳ならぬ横尻。
剥き出しのデリケートゾーン。
限界まで持ち上がる俺のまぶた。
凍り付き赤面する美貌。
「ッッ、恭平!? なぜここにいる!? 今は女子の時間ではないのか?」
狩奈は狼狽して、両手でおっぱいとデリケートゾーンの、サーモンピンク地帯を隠した。
彼女の手と腕がめりこむと、左右の爆乳が上下に分割されて、おっぱいが四つあるようにさえ見えた。
「まだお風呂の時間ですらないよ。ボクが頼んで特別にサウナにしてもらっているだけ。それより早く入ろうよ」
さも当然とばかりに堂々と言う赤音。
対する狩奈は、冷静さを失った自身を恥じるように歯を食い縛った。
そして、両手を離して、その場で仁王立ちになった。
――ぶぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
狩奈のカラダは、ひたすらに豊満だった。
お尻もおっぱいも、まるでスイカを二つ横に並べたようなボリュームで、しかも、恥ずかしいのを我慢している、というのがまたイイ。
下半身に、衝撃が連打で襲ってくる。
「そ、そうだ、な! ハァハァ、では、私もサウナを、サウナを堪能させて、もら、もらうとする、か」
もう、俺の理性は風前の灯火だった。
この世のあらゆるものを犠牲にしてでも、欲望を叶えたい衝動が倍々ゲーム式に膨らんで、理性はめくるめく弱体化して、文明人偏差値が20ぐらいまで下がってしまう。
鼻の奥に、血の匂いが充満していく。
この上は、自身を過冷却水で氷漬けにすべきか。
覚悟を決めて、両手に過冷却水を生成した直後。
「ラキスケ警察登場っす! わおっ、これはルパンダイブ案件っすね!」
言うなり、茉莉は念力の力で盛大にジャンプしながら、そのまま狩奈に飛びついた。
「うわっ、なんだ茉莉。やめ、胸を揉むな!」
「うぉおお、これは天国っす桃源郷っす! このまま茉莉はキョウヘイちゃんに続いてエロゲ主人公になるっす! というわけでアカネちゃんもいただきっす!」
「え? 茉莉ってそっち系? あ、ハニー待ってよ!」
茉莉に永遠の感謝を捧げながら、俺は風呂場を後にした。
――ありがとう茉莉。お前のおかげで、俺の文明人としての矜持は保てたよ。
「え? 恭平君?」
顔を上げると、狩奈級の爆乳とヒップサイズの新妻心愛が、全裸で立っていた。
彼女の顔が、赤く染まっていく。
「あ、やだわたし、いま裸ッ」
――ぶぁああああああああああああああああああああ!
鼻から熱い血潮を迸らせながら、視界が暗転。
俺はその場に倒れこんだ。
「え、恭平君! 恭平君! 大変! 誰かぁ!」
――ここあ……すげぇぇぇ…………。
意識が朦朧としていく中、心愛の裸だけは、鮮明に残り続けるのだった。
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