第15話 閑話 謎の光

 深夜-------------


 町から数キロ離れた拠点にて、剣聖である私エレノア・ハートは聖女であるルリと共に先行した部隊からの報告を受けていた。


 先行部隊から使者の報告では、神託のお告げ通りに【イノ魔の迷宮】にて、スタンピードは起きた----------------


 起きたのだが、報告を聞いて行く内に可笑しな方向へと変わっていった。


「謎の光…………ですか…………?」


 訝しげにそう聞き返したのは、地図を広げたテーブルの向かいに立つ聖女であるルリだ。


 先行部隊からの報告では、謎の光が次々と迷宮から溢れる魔物達を包み込んで、消滅させているのだという。


 そのおかげで、前線の被害は軽微な上、こちらが優勢なのだとか…………。


 一体、彼らが何を言っているのか、私を含め、理解している者はいない。


 正直、あまりにも絶望的な状況故、幻覚でも見ているのでは? とさえ疑っている。


 だが、報告したその冒険者が嘘を行っているようには見えない。


 何がどうなってるの…………?


「エレノア…………どう思いますか…………?」


「そんな事、聞かれても私にも分からないわ…………」


 ルリの問いに素っ気なく答える私。


 何度、報告を整理しても、あまりにも荒唐無稽で信じられない話だ。


 でも、一つだけ言えるのは----------------前線で、何かが起きている。


 それだけしかない分からない。


「行ってみるしかない、か…………」


 どう考えても出ない答えを放棄して、腰に差してあった剣の鞘を強く握った。


 作戦予定が変わるけど、これは審議の程を直接、確かめる必要がある。


「気を付けてね…………?」


 私の考えを察してか、ルリは優しく語り掛けると、すぐに私の抜けた穴を埋めるように、周りの者達へと的確な指示を出してくれた。


 本当にこういう時は安心して背中を任せられる。


 そんな、たくましい仲間の姿を数秒程、眺めた後、意を決して戦場へと私は足を踏み入れていった。


 これが自分の運命を大きく変える決断だったとも知らずに…………。

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