第4話 円卓に座る戦車キチ

 男とその親友は、円卓に並んで座っていた。

 衣装の色でも間違えたのかといったサンタっぽい服を着た太った白髭褐色肌のエルフ。その隣に座る低身長の鴉顔の奴。そんな見た目の二人のプレイヤーはこの部屋の十五人のうちの二人である。

 「ふぉっふぉっふぉ。ってこの笑い方飽きたな。ジョー、いい案ないか?」

 「ねーよ。俺様は俺様でロールプレイ中なんだから変に崩すなよ煩わしい」

 「ふぉふぉふぉふぉ、しかたないのぉ」

 ・・・サンタロールプレイと俺様ロールプレイは分かるが何故そんな見た目にした。

 そんな二人に話しかける者はいた。

 はいはーい、と手を挙げて元気よく突っ込んでいく日焼けした美女なアバター。斜めにかぶる帽子が何だかなまめかしい。

 「ブラサンも辻斬りもさー、少しぐらい話し合いに参加しない?アタシだってサボりたいけど来てんだよー?」

 「てめぇは黙れよ、元気っこ。ホストのドラゴン坊主がなんも喋れてないだろが」

 鴉顔の指摘でくるりと振り返った美女は最も上座に座る角の生えた軍服の少年を視界に入れて、あ、いけね、とでも言うように頬を掻いて舌を出した。

 「えっと、いや・・・ごめーんね☆彡」

 チョキを顔の横において堂々とポーズをとるその姿からは一切謝罪する気は感じられない。

 なんか(´・ω・`)みたいな顔をした角の生えた少年がようやく口を開いた。

 あれ?声だけ渋い・・・

 「ソウル4、構わない。では着席してくれ。今回皆を集めた理由を―――」

 「簡潔にせいや、ドラ坊」

 「・・・次のイベントについてだ」

 少年の隣の隣に座る胡散臭いマスクをつけたピエロ服の巨漢が急かした。なんかもう涙目だ。

 「ここまでの八回のイベントにおいて我々は好成績を残してきた」

 「せやな」

 「そーだねー?」

 「だから?」

 「ふぉふぉっふぉっふぉふぉふぉふぉっふぉ」

 速攻で急かされる。てかおいサンタ。

 「・・・・・・これまでいくつもの談合が在った。駆け引きが在った。だが、気に入らない。全力で君たちと戦ってみたいんだ。だから―――」

 「それだけなら構わんで」

 ピエロ巨漢が即答した。

 「わいも全力でやりおうてみたかったんや。これでもフィールドランクじゃあ四位。一位サマに下克上する機会はちゃぁんと持っとかんとなぁ?」

 続いてまるで伊達政宗の劣化版みたいな恰好をした男も答えた。

 「この毒巌流、貴殿の申し出に従おうではないか」

 続けて鴉顔の隣に座るボーイッシュな少女が。

 「はいはーい!ボクも賛成だよ!」

 さらには誰よりも身長の高いトーテムポールみたいな男がボソッと。

 「・・・・・・・・・賛成」

 

 「感謝する、採取家斎藤、毒巌流、かっこう、東京都庁職員」

 

 角付きの少年が感極まったように言うが、そこはやっぱり鴉とサンタ。

 「どうでもいいけどよ、何で俺様たちは呼ばれてんだ?」

 「ふぉふぉっふぉ、全員の名前をしっかり呼ぶのがかっこいいと思ってるのかい、ドラ坊」

 ピエロ巨漢と仙人みたいな爺は二人を窘めた。

 「可哀想やろが、黙っとれ黒サンタ」

 「カラスよ、無駄に喧嘩を売る癖は直せと言うとろうに」


 どうでもいいことだが、ここにいるメンツは濃い。

 一番上座の角と鱗を付けた少年。その両隣にはビッグフットもかくやと言う様な毛むくじゃらとサングラスをかけた黒スーツ。

 さらにその隣は劣化版伊達政宗とピエロ巨漢、お次は仙人と言われれば納得しそうな糸目の爺とトーテムポール、更に日焼けしたほぼ水着のギャルと額に目玉のシールを貼り付けた細めの筋肉半裸。

 ギャルの横には、まるでラブコメハーレム物の主人公になるスペックを秘めていそうな何の特徴もないことがもはや特徴の様な風貌の男がいて、三つ目筋肉半裸の隣には金色の折り紙でその姿が構成された鶴。そして無特徴の隣はヒャッハー世紀末な肩パッドとモヒカンを持った筋肉質の少女、鶴の隣がボーイッシュな女の子でその隣に鴉顔、鴉顔と世紀末少女の間にブラックなサンタクロースと座っているのだ。

 変人の集まりみたいな構成だが、———まぁ、変人の集まりでもあるが―――彼らは『Char de combat』内のフィールドランキング最上位者たちの集まりだ。

 

 竜の角と竜の鱗を持つ竜の人としての姿を持つ少年。

 堂々たる1位―――【竜激王】BLAY。


 身長百八十を超える雪男、すなわちイエティたるその姿を戦車界に誇る冬将軍。

 次いで強きモノ―――【剛撃工房長】デトロイト侍。

 

 全天を見る天球儀アストロラーベをそのサングラスに封じたSPたる黒スーツの男。

 栄冠に届かぬとも3位―――【無位無冠】ビンゼン。


 ピエロ服に身を包む最大重量のコレクター。

 フィールド踏破者の4位―――【ソシャゲの闇】採取家斎藤。


 甲冑を着こみ眼帯をし、古来に存在した伊達政宗を彷彿とさせる武士もののふ

 歴史好きな5位―――【二重鎧】毒巌流。


 その身は1,000年を生きた狐が変えたものであるという仙人。

 設定厨過ぎる6位の老爺―――【NowLoading】山田次郎。


 この場にいる誰よりもそのアバターを縦にしたトーテムポールのような男。

 高いところに住みたい7位―――【バベル】東京都庁職員。


 水着を着、小麦色に日焼けした肌、ギャル風にメイクされた顔には斜めにかぶった帽子がなまめかしい少女。

 海に行きたい8位―――【闘魂ギャル】ソウル4。


 筋肉に覆われた躰、一本の髪もない頭、額に貼られた目玉のシール。

 竜の玉にあこがれ続けた9位―――【主人公を下克上】天使ン飯。


 何の特徴もなく、逆にそれが特徴であるラブコメ主人公っぽい顔の男。

 アイデンティティを欲する10位―――【地味】レイジ。


 金色の折り紙でおられた鶴が付喪神化した存在。

 ちょっとアバターが動かしづらい11位―――【戦争屋】あいうえおか。


 モヒカン、とげとげ肩パッド、特殊メイクと三拍子そろった世紀末系女子。

 初対面で引かれるのがちょっと辛い12位―――【違和感】鯱喰利。


 ボーイッシュな感じに髪を切った女の子。

 上の二人が話しかけ難い13位―――【最後の良心】かっこう。


 俺様口調の仮面ライダー風の衣装を着た鴉人。

 完全ロールプレイヤーな24位―――【辻斬り】イースト・ジョー。


 黒い服を着て太った男、端的に言えば黒バージョンサンタ。

 実は若いよ38位―――【ブラックサンタ】サカタキ。



 十二傑と呼ばれる戦士達と、ログイン時間、レベルは大幅に劣るながらも発想力、操作能力によりトップに食い込む三人。

 

 十五人の署名をもって、このイベント、【第五次五車大戦】は、大時化が来ることが決まった。






 ――――五人のランクが落ちることは決まっているのだから、最後ぐらい戦いたいじゃないか。

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