第15話 手を伸ばしたその先

何かを望むとき、必ず望むものに向かって手を伸ばす。

実態があるものでも、ないものでも。

それは万人共通だと思っている。

違うとすれば、望むものに手が届いたその先で、待ち受けているであろう結果をどこまで予測しているかということだろう。


物事には二面性があって、望んで手にしたソレは、自分にとって必ずしも喜ばしい結果ではないこともある。

望んで手に入れたソレは、想像していたものとは全く違うかもしれない。

望むものが大きければ大きいほど、良くも悪くも結果は重くなるのだ。

良い結果ばかりを予想していると、そうならなかった場合のダメージは計り知れない。

目先の利益に目が眩み、手を伸ばして掴んだ先にある落とし穴に気付かないこともある。



私もそこそこいい年になって、周りから聞く話の質や重みが変わってきたように思う。

若い頃は、ただ『欲しい』というエネルギーだけで押しきれる場面は多かった。

失敗しても次があると、何の根拠もないのに漫然と思っていた。


今は違う。

後ろから『時間』が追いかけてくるのを感じ、次はないかもしれない。と考えることの方が多くなった。正直とても焦る。

焦ると視野が狭まって、判断を誤ってしまうのに。



急加速で成長している思春期の子供。

あれも欲しい、これも欲しい。

あれもやりたい、これもやりたい。

全ての望みが叶わないことは分かっていても、気持ちがついてこないことがよくある。


望むものに手を伸ばす前に、ソレよりも大切なものを失わないか。

親として、この一点をブレずに伝える努力を続けている。

が、しかし。

私自身に覚えがあるだけに「伝わっていても、良くて三割」と割りきるのが大変だ。

私の伝える意志がブレると、言葉に重みがなくなってしまう。

重要な事柄であればあるほど、考えを二転三転させるようなことはしてはいけない。


思春期真っ盛りの子供を通して、信用の重さについて改めて考えさせられる今日この頃。



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