第9話 神との対話

『ひどいじゃないですか!!』

理想の転生世界、だった場所から戻るなり僕は神にった。


『だから言うたじゃろ。

 おぬしは転生を勘違かんちがいしておると。』

神は冷たく応じる。


『どういうことか説明してください。

 全く納得がいかないです。』

僕はなおも詰め寄る。


『仕方がないの。

 おぬし、もうちと勘がよいかと思っとったが順を追って説明してやろう。』

神は軽くせきばらいをして間をとると再び話し始めた。

『わしがおぬしに約束したのはあくまで転生じゃ。

 その認識は合っとるの?』


僕は無言でうなずくと神は話を続ける。

『おぬしは細かい条件をいくつか出してきたの。

 わしも神を名乗っとるからにはこたえたいと思うとったが、おぬしの希望条件に合う世界なんてありゃあせんのじゃよ。』


神の言うことに納得いかない僕は反論する。

『そんなことはないでしょう。

 空想世界を含めれば世界に国なんていくらでもあるじゃないですか!

 それに国王の妻が国一番の美人なんて、割と普通のことじゃないですか?』


神はそれを聞くと、今まで僕が見た中で一番厳しい顔をして言い放った。

『確かにそれくらいの世界はごまんとある。

 じゃが、すでに魂が宿っている肉体におぬしが入ったら、元の魂はどうなるんじゃ?』


あ。。。僕は言葉が出なかった。


全てをさとったような僕の顔を見て、神は一転やさしく話し出した。

『転生は別に幸せになる手段ではないのじゃよ。

 転生先の世界の人々にも生活がある。

 そして、その世界の王にもるにいたった理由があるのじゃよ。

 王なんてものはいきなり成るもんじゃない。

 そんな王がいたらその国の人々はもちろん、王自身も不幸なだけじゃ。』


僕はそれを聞いてうなだれつつも神に問うた。

『じゃあ、僕はいったいこれからどうすればいいんでしょう?』


神は答える。

『ゆっくりもう一度考えるがええ。

 もちろん、あの王国に戻ってもええし、別の転生先を探してもええ。』


僕は頷きつつ質問をする。

『ありがとうございます。

 でも、僕が戻らなかったらあの世界はどうなりますか?

 あのきさき、僕の妻のことが気になります。』


そう聞くと、

『心配はいらん。

 あの世界はおぬしにわからせるために打ち捨てられていた世界を再利用しただけじゃ。

 妃もおぬしの元々いた世界のおなごを元にわしが肉体を創造しただけで、中身はモブキャラじゃ。

 縁があったらまた会うことがあるかものぅ。』

神はいたずらっぽく笑いながら、そう答えた。

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