第4話 草原

明るくなったこの島は、昨日とはまた違うイメージだった


天気は晴天、吹き抜ける風は涼しく、バカンスをするならこういうところがいいだろう


「よし、探索をしよう!」


「とりあえず、砂浜にSOSって書いてからね」


すぐにでも飛び出したいエミリに注意する


「これでよし」


大きくSOSと書いたので、強い雨でも降らない限りは消えないだろう


「じゃあ、探検に行こうか」


「早く行こう!行こう!」


洞窟に戻り、川に沿って川上に向かうと、滝になっていて行き止まりだった


「ちぇっ、こっちはもう行けないのか」


エミリは近くに落ちていた石を拾って川へ投げる


僕はそれを見て、いいことを思いついた


「そうだ、川を渡ろうよ」


砂浜からは、崖で島へ上陸できないようになっていたため、川でも渡らない限りは内部へ入れそうにない


「でも、ここ、結構深そうだよ?」


滝つぼを覗くエミリはそう言うが、ここを渡るつもりはない


「浅い場所か、渡れそうな狭い場所を探そう」


僕たちは注意深く川を見ながら、川下へ向かう


「あっ!ここはどう?」


水深は少し深いが、丁度石があって飛び移ろうと思えば飛び移れそうだ


「よさそうだね。コケなんかで滑らないように気を付けてね」


そういったにもかかわらず、エミリはぬるぬるした石で足を滑らせた


「きゃぁっ!」


危うく落ちそうになったところを僕が何とか腕を掴んで引き寄せる


「あ、ありがとう」


エミリを抱きしめる形になってしまい、エミリは顔を赤くした


僕たちは、ジャンプしながら石を渡って対岸に向かうことができた


ここからは、内陸に入れるようだ


階段のような崖を登ると、草原があった


「わぁ、綺麗!」


風になびく草原が、なんとも気持ちよさそうだ


「見て!」


エミリが指さす先には、ヤシの木があった


「実もついているね、これでジュースが飲めそうだ!」


僕もうれしくなってエミリと手を取って喜んだ


落ちていたヤシの実を拾い、川の方へ向かう


「あれ?ここで飲まないの?」


エミリは不思議そうに言うが、ヤシの実は普通、素手では割れない


「割るにはコツがいるんだよ、おいで」


エミリを連れて川へ行き、石を集めてヤシの実を固定する。その上から、大きめの石を落とす。すると、外側の実が割れた。


「あれ?ジュースが無いよ?」


「外側の皮を割っただけだからね、ジュースはもっと中だよ」


僕は中のもしゃもしゃしたものを取り除くと、内果皮を取り出した


もしゃもしゃした部分は、燃料に使うため乾かして取っておく事にする


内果皮を、小さめの石を持ってぶつける。ひびが入ったので、そこから少し汁がでた


「さあ、これを飲んでみて」


受け取ったエミリは、ジュースをおいしそうに飲む。飲みすぎたと思ったのか、気まずそうにこちらを見る


「ごめん、いっぱい飲んじゃった……」


「いいよ、また探せばいいし」


僕は少なくなったジュースを飲むと、「あっ、間接キス……」と小さな声が聞こえたが、聞こえないふりをした




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