第13話 美女も歩けば弱ったオークにあたる

さて今日のごはんを紹介しましょう。


ゲームを買い、家賃光熱費を補助込みで払いそこそこの貯金とそこそこの出費を考慮するとなんと、あんまり散財はできないのである、就職活動の悪夢からはもう少し逃げていたい。


ということで、5キロ三桁円のパスタと作り置きミートソースを作って冷凍に……あ、ログインしなきゃ。


椅子座って、頭につけて、トイレ行った? 御飯たべたね、よーし。





『ランダムクエスト【はぐれオークを討伐せよ】が発生しました』

「あーん? 」

昨日川辺で熊さんに心折れてログアウト。


今は熊はいない、いないのだけど。


涼やかな川辺、乱雑に転がされた石に倒れる……なにあれ、二足歩行のイノシシ? が、川に浸かって倒れてる。


後ろは青空広がる平原、前から先は命生い茂そうな森林樹林、そして倒れているいのしーし。


ん? イノ、シシ? 的なの、なにあれ。


「……なにあれ」

頭のなかに浮かぶのはハテナのマークとボタンなべ、やめなさい自分、倫理観壊れちゃうでしょ。


あれは二足歩行、イノシシは四足歩行、おーけー?


『【はぐれオーク】 大陸全土に生息している魔物オークのはぐれもの、初心者応援クエストのみに出現します』

「へぇー」

初心者応援とかあるのこのゲーム。


『ユーザーに快楽を与えてこのゲームから離れられなくしてやろう、がゲーム開発者が掲げる理念です』

「なんてこと言うの」

『レベル10未満のユーザーにランダムなクエストを提供しております』

「へいへい、」

つまり早くすすめてね、と。


えむえむおー、とか、おーぷんわーるど、とか小難しい名前が乱立乱舞する昨今。

昔のゲームなら敵とかNPCは固定されてなにをどうしようと変えられないことが多かったらしいが、このゲームは完全ランダムエンカウント、らしいぞ。


……どういう意味かははっきりわかんない、ネットで見ただけの知識、たぶん、とにかく、昨日熊を目の前にめんどくさくなってログアウトしたのだ。


「で、このオークをどうしたらいいんだい?」

下半身は川に浸かって、上半身は陸に、仰向けに倒れてるデカイ褐色のイノシシ君。


『はぐれオークは通常のモンスターの10倍の経験値が得られます』

「あーーー、なんだ、戦えってことか」

「……グウ」

「ねえいまこいつ鳴き声あげた」

『通常の10倍の経験値が得られます』

うわぁ、やりづらあ。


まあ、やれって言われたらやるのがあれだし、しゃーない。


悪く思わないでくれイノシシくん。


ムチをえーいペチーン。


「……おろ? 」

【はぐれオーク レベル27 HP10】

「……えーい」

ペチーン。


【はぐれオーク レベル27 HP10】

「えーい」

【レベル27 HP10】

「えーい」

【27 HP10】

「オルァ!!」

【HP10】

「オンダルア!! 」

【10】


「…………だめじゃねえか」

『攻撃力が足りずダメージを与えられません、ステータスを割り振ってください』

「やだよめんどくさい」

こころ、折れちゃった(・ω・)


ただえさえめんどかったのにもっとめんどいのが出たらやめたくもなる、うむ。


ご機嫌な気持ちが、ぴーんち。


「…………」

「ガフゥ……」

川辺に転がるイノシシくんをどうしよう、まてこれはゲームだ、つまりは。


ふう


「ログアウト、と」

『15分経たないとできません』

「ですよねえ……あと何分? 」

『9分です』

「…………やめたーい」

残り9分、倒れるイノシシ君を見るの忍びないしかといってたかが9分でいけるところもしれている。


ぼーっとするのもできない状況、あーあーめんどいなー。


このクエストをどう処理しようかはてさて、これならいやがらずに戦士にでも……あ。



わたくし、ていまーじゃあーん……どうやってテイムするんだろ、忘れちゃったよ。


「へいAI、このオークはテイムできるかい?」

『可能です』

「よーし、……どうやってテイムするの? 」

『対象に【テイムの首輪/腕輪/その他アイテム】を使い確率で成功すればテイム完了です』

「へー、そんなアイテム持ってたっけ」

『テイマー職のみ初期アイテムとしてプレゼントしてます、お好きな方を使いましょう』

使った覚えはないからあると……。


『弱らせるほど、状態異常を与えるほど成功確率はあがります』

「つーまーり……」

オーク、弱ってる、捕まえやすい。


バッグのなかをごそごそと、あった首輪、これかな。


【ゴブリンのボロい首輪】


違うこれじゃない、えー、と。


これ、か?


【テイムの腕輪】

【必ずテイムできる腕輪】


「……むむ」

革の腕輪みたいなやつ、お好きな方と言ってた……普通のでいいか。


『テイマーアイテムは町の雑貨屋、自作で用意可能です』

「へーへー、この腕輪をオークにつければ良いのだね、よーし」

『対象の体に当てるだけで大丈夫です』

「あ、うっす」







「ガウ」


『はぐれオークをテイムしました、おめでとうございます』


「……えぇー」

推定身長2メートル、下半身布巻いている以外はほぼ裸の大男。


イノシシと言ってたがあれは訂正しよう。

角とか生えてるこれ、あれだ、ただの半裸の大男だこれ。


「グフ」

石にちょこんとお座り、オークくん。


はてさて………。


「じゃあ……また明日ね」

「ガウ!? 」

ログアウト、と。





★★★


【はぐれオーク】


レベル27

HP 150

MP 0

STR 120

INT 0

DEX 50

AGI 3

DEF 34

VIT 62





★★★




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