質量の部

 最後に残った疑問は、質量、即ち空間配列に必要な引力はどこから来たのか、ということだ。

 宇宙は何故、一方で膨張し、他方で収縮するのか。

 質量はどうして、時空間を歪ませるのか。どうやって時空間に存在するのか。

 空間の量子は、質量と作用し合うのか。

 何もない空間では膨張し、質量の周りでは圧縮される。

 そうではない。

 質量の中で、時空間が収縮している。

 質量は、時空間を持っている。空間の量子を圧縮して持っている。

 質量が時空間を歪ませるのではない。質量そのものが時空間の歪みなのだ。

 空間の量子は斥力的である。引力がほしい。

 空間配列を作り、空間の量子を密集させるための、引力が。

 それは、既存の知識を借りれば、強い力と電弱力によるであろう。

 

 自由に揺らぐ空間の量子が、引力の作用で引斥力零となり、ごく小さな引力圏の中で静止凍結され、幾つも閉じ込められる。これが、質量の最も基本的な構造であると推測する。この際、質量体は外部に対して引斥力を持っていない。質量体の抱える空間の量子が、質量とエネルギーの源になる。空間の量子は、質量として引力圏の中へいないとき、計測されない潜在的質量しか持たず、暗黒質量になりうる。


 時間は情報である、とした。

 情報は取りうる選択肢の集まりであり、配列は決定された選択肢の集まりとした。

 配列には、情報がなく、時間がない。選択肢同士の関係において、時間は止まっている。

 質量体は空間配列であるため、止まった時間を持っている。配列が破壊されると、時間は動き出す。

 時間は、止まったり、動いたりできる。本当か?


 はじめに、時間を「不可逆的な変化」と定義した。

 その定義を覆すときがきた。


 空間の量子が持つ空間座標の選択肢の数をNとする。N=0のとき、空間の量子は空間座標を持たず、時空間が存在できない。N=1のとき、空間の量子は一つの座標だけを与えられ、N≧2になると取りうる選択肢が発生する。

 空間の量子が選択を実行し、顕在化した時間を様相と呼ぶ。様相の個数をTnで表す。一つの時間は、二つの様相と確率の雲を持っていると仮定したので、Tn=1のときは時間変数t=0であり、Tn≧2のとき、t>0となる。

 tを距離に見立て、それを進むための量をTtと仮定する。具体的にTtは様相と様相の間へ潜む、時間のための時間である。時間の速さをTvと置くと、Tv=Δt/ΔTtで例える。

 時間の速さは、空間の量子が持つ空間情報の数に比例して早くなると仮定する。その情報数をiと定めると、任意定数Aをつけて、Tv=Aiと表現できる。

 

 情報の定義に従って、

 

 N=1のとき、i=0

 N≧2のとき、i≧1

 

 変化のない状態は、


 N=0


 このとき、空間の量子は選択を実行できず、様相が顕現しないので、


 Tn=0

 

 時間の速さがないときは、


 Tv=i=0

 N=1 Tn=1 t=0


 空間の量子が選択肢を一つだけ持ち、それにより様相を一つだけ顕現するとき、情報なく、時間は止まっている。ただし、時空間は存在する。

 時間の速さがあるときは、


 Tv>0 i≧1

 N≧2 Tn≧2 t>0


 他の量子との関係性によって、空間の量子が1以上の選択肢数を自由に与えられるならば、時空間が存在する状態Tn≧1で、時間の速さTvは、0にも0以上にもなりうる。時間変数tは、0にも0以上にもなりうる。


 不変なるものは、常に不変であり、変化するものは、常に変化する。

 けれど、時間は、時空間の存在を保ったまま、止まったり、動いたりできる。停止も進行も、有限な選択肢数変化の内側に包まれている。


 空間の量子を取り出してみる。

 質量の中で、引力と斥力が完全に釣り合い、かつ、互いに動けないほど密集していれば、取りうる空間座標が一つだけになってしまうかもしれない。現在座標である。この状態に陥った空間の量子は、全て時間が止まっている。

 外力の影響、例えば熱を受けて、引斥力の均衡が崩れれば、取りうる選択肢、情報が再び現れる。空間の量子が、現在でない空間座標を選択すれば、時間が動き出す。凍結した空間の量子は溶けていく。配列を乱す熱が、空間の量子に選択肢を与え、時間を作り出す。


 時間の定義を、「停止しうる不可逆的な変化」と改めたい。  

 

 生命とは、内と外を分かつものだという。

 質量こそは、宇宙でもっとも基本的な生命ではないか。

 外側では、無数の空間の量子が自由に揺らいでいる。内側では、引力の支配を受けている。選択肢である情報を奪われ、配列となり、時間は止まっている。自己を保存する恒常性を示す。

 質量は生命である。

 岩も、コンクリートも、星も、生命である。

 より広く言えば、配列は生命である。

 時間配列である音楽も、踊りも、言葉も、生命である。

 八百万にいのち宿す神を見た日本人の血が、そう思わせるのかもしれない。

 他者を隔てる境界と、静止した不変なる自己を持つのだ。

 

 空間の量子が選択肢として選べるのは、空間座標だけである。

 ひとたび配列が生まれると、配列自身が選択肢となり、組み合わせによって、取りうる選択肢、情報の量が爆発的に増大する。

 質量は、内側に時間を持つ必要はないが、外側で自身が選択肢として配列に組み込まれるとき、時空間の影響を受ける。あるときには水素となり、あるときにはヘリウムとなる。質量の時間は止まっていても、それを選択肢とする配列は、死に至りうる。

 太陽やブラックホールなどで質量がエネルギーに還るとき、それを選択肢とする情報は消えてしまう。


 ブラックホールでもどこでも、配列を由来とする選択肢、情報は消えて、また生まれるであろう。もとになる空間の量子は、残っているはずだから。


 質量体の引力が強いほど、空間の量子は密度を増し、その分、取りうる空間座標の選択肢、情報を減らして、時間の速さが遅くなる。そう考えたい。


 以下は、それをこじつけるための思考遊戯である。

 読み飛ばしを推奨するが、興味のあるお方がいらしたら、一笑に付されたい。

 とにかく素人ゆえ、GPS衛星を百億分の四.四五秒補正できるような緻密さは皆無であるが、何となくこういうの、という感じでやってみた。

 合格点に届かない中高生の自由研究レベルを目指す。

 

 おまけで、時間と情報の関係を簡単な波で表そう。

 空間の量子が選択をして、顕在化した状態を、様相とする。ある様相から次の様相までが、最小の変化単位、時間である。便宜上、様相から様相までにも時間内時間を取り入れる。

 様相から様相までの時間的距離をTx、様相から様相までにかかる時間内時間をTt、空間の量子が持つ情報数と正の相関を示す値である比例情報量Kiを振動数に見立て、時間内時間で時間的距離を進む速度はTvとする。

 時間的距離Txはいわゆる時間変数tに、Tvは時間の進む速さに相当する。

 Ttの単位をs´、Kiの単位をCbitとして、単位系を記す。

 Tx[s=second] Tt[s´=1/Cbit] Ki[Cbit] 

 Tv[s/s´=s・Cbit]


 様相

  時間内時間Tt、振動数=比例情報量Ki

  時間的距離Tx

 様相

  時間内時間Tt、振動数=比例情報量Ki

  時間的距離Tx

 様相

 

 例えば、一秒間に様相がたくさん顕在化するほど、認識できる時間は早く進む。

 それぞれを、波の周期Tt、振動数Ki、速さTv、波長Txに当てはめて、


 Tt=1/Ki (周期=1/振動数)

 Tv=KiTx=Kit (速さ=振動数×波長)


 ここで、比例情報量Kiは、顕在化した時間がどれだけの頻度で現れるかを示した周波数として扱われ、一般的な時間の速さと正の相関を示すと考えたい。

 Tvも時間の速さと捉えたい。情報量が多いほど、また、一回の選択で多くの時間的距離を進むほど、時間の速度が早くなる。


 波を忘れて、Tvの性質を大まかに眺めてみると、


 Tv=ΔTx/ΔTt=Δt/ΔTt

 

 時間の速さTvは、様相から様相までに存在する単位量、時間内時間当たりで進める時間変数tの距離に相当する。


 Ki=0のとき、Tv=0となり、Ttは扱えない。しかし、選択肢数Nが自由に自然数を取れるならば、Kiは0から0以上に進みうる。


 これは、空間の量子を媒質にして、時間が、情報量に従い、顕在化する頻度を増やすという話。比喩みたいなものだけれど、つまり、空間の量子が密集すれば、情報を失い、時間の流れは遅くなると考えたいのだ。


 おまけのおまけで思考遊戯を続けよう。

 本稿では、重力を、質量体に対する斥力と捉えている。

 引斥力が釣り合っていれば、重力で、質量体の引力を代用できる。

 同書によれば、一つの空間の量子は閉じた線で重力力線を描く。個々が同じ強さを示せば、空間にある重力の強さは、量子数に一つ当たりの強さを掛け合わせればよい。

 重力が強いほど、時間の速さが遅くなると表現したい。


 空間の量子の密度を、d [/m^3]。

 空間の量子一つが持つ重力を、p [N]。

 ある場所での重力の強さを、g [N/m^3]。

 比例情報量Kiは、空間の量子の密度が多いほど少なくなると考えて、Ki=1/d [m^3]。


 g=pd [N/m^3] 


 d=g/p [/m^3]


 Ki=1/d=p/g [m^3]


 Tv=Kit=(p/g)t [s・m^3]


 ここで、空間の量子一つが持つ重力pの値が一定であれば、空間の量子の密度、ひいてはその場の重力gから、時間の速さTvを求められる。重力が大きいほど遅くなる仕組みだ。密度と重力が扱えないほど大きくなるときは、Ki=0ゆえにTv=0と置く。Ki=0となる密度で、質量体がシュワルツシルト半径を示すと嬉しい。

 相対性ではなく、情報の数から得られる絶対的な時間の速さである。

 客観性を求めたアインシュタインへの返答になるだろうか。

 時間の速さの単位が四次元空間になってしまった。Tv=0のとき、時空間は消えると考え、矛盾が露呈したか。それとも、時間の速さは、四次元の変化を伴うということだろうか。もしくはやはり、ただの戯れにすぎなかったか。

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