第10話 「学級王」に俺はなる

「あの、実は、あなたの顔が好きで。」

「だと思った。」

「できれば、」

「お付き合いねぇ、忙しいんだけど。」

「だと思った。」

 渡部くんは、調子を合わせて言う。

「あなたの押しも好きじゃないから。」

「嫌い?」

「イエス。でも、もしかしたらルックスは好きかも。」

「高校指定の黒ズボンに、開襟シャツだぜ。」

「じゃあ、休みの日に、私服で会ってみる?」

「デートのお誘いですか?」

 渡部くんは、舞い上がってしまう。

「私の友達と一緒でよかったら、どうぞ。マックにでもいるわ。」

「やっぱ、そうですよね。」

「委員長は面倒見がいいはずだけどな。」

「あなたじゃなく。」

「まあ、いいんじゃない、普通に話してみれば、わかるでしょ。」

「そういうことか。学級王同士、責めたのは俺が先だしなぁ。」

「黙ってる気だったの?陰険ね。」

「ひねくれてるのかな、バカじゃないから。」

「バカより落ちるわ。学級王だけに。」

「真の学級王に俺はなる。」

「そうね。土日通うのもいいアイディアよ。フフ」

「そうら、真の学級王の侵略だ!」

「ガキっぽ。」

「そういうお前は、何が楽しいんだ。」

「友達とかと話す時間。」

「おしゃべりか。」

「いいえ、違うわ。自己を高めるためよ。」

「友達を道具に。」

「そういう言葉は、控えなさい。」

「だって、現に。」

「今度会うんでしょ、聞いてみればいいじゃない。」

「道具ですよってか?」

「学級王は嫌われない。」

「さっきの子らは、俺の味方。」

「で、誰を伴侶に選ぶのかしら?」

「今日のお前はきれいだぜ。」

 こうなりゃやけだとばかり告白する、渡部くん。

「これが呪いというのは、忘れたの?」

「呪いって何?」

「私以外愛せなくなる呪いよ。」

「まさかの、エンゲージですか?」

「私はあなたが嫌いだもの。つくづく残念ね。もう、昼休みも終わりだわ。」

 委員長と、ゆっこが、教室に戻ってくる。

「席はずしてたけど、大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。マックに来たいって。」

「え?急だなぁ。」

「私服チェック!」

 何故か、渡辺さんは、粗探しというわけではなく、趣味を探るようだ。意識高いからな。

「はいはい、そういうことでしたら。」

「渡部くんは、男友達いないの?」

「いないわけじゃないけど、いないか。」

 遊ばれてるのは入れたくなかった、渡部くんである。

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