第2話 わたしの性格
わたしの名付けのきっかけは、店頭によく並んでいる『ふ菓子のふうちゃん』が始まりでした。
お見かけした方はいらっしゃいますでしょうか?
「ふうちゃんって呼びたい! 可愛い!」
母はそのふ菓子をみてピンときたそうで、それまでわたしは胎児の「たいちゃん」と呼ばれていましたが、いつしかその呼び名は「ふうちゃん」に。
名前に風という字を使う事は始めは躊躇ったそう。けれど小学生で習う漢字であり、たまたまわたしが夏に生まれるのが確定していたので、そこから「夏」を拝借して風夏と名付けられました。
万年お花畑脳の母的には、夏でも暑さに負けず太陽に向かってまっすぐ咲き誇る向日葵を揺らす優しい風、それで風夏と名付けたそうです。なら「向日葵」でよかったんじゃ、とも思いましたが、自分の名前は気に入ってるので今更ツッコミはしません。
話が始めから題名より大きく脱線しましたね。
わたしは二歳を迎えてから父を離婚で失うも母曰く、三日間父が帰宅しなくなるとケロッと父の存在を忘れたかのように「パパ!」と泣かなくなったそうです。
当時、母(二十二歳)、祖母(四十七歳)、叔母(二十歳)で皆がフルで働き、わたしは三歳になる直前で保育園へと入園が決まりました。
始めこそ保育園に行きたくなくて泣いた記憶がうっすらあります。けど気付けば泣かなくなりました。みんなそんなものですよね。
わたしは絵を描くことが好きで、それだけに没頭していました。友達に誘われても「おえかきしたいからやだ」と一蹴。稀にブランコで遊びたいと思い遊びに行けば、他の子に別の遊びに誘われても「ぶらんこしたいからやだ」とまた一蹴。
唯我独尊、猪突猛進、天上天下?
それでも「ふうちゃんと遊ぶ!」と友達に囲まれた人気者で不思議な子でした。
小学校に入学して一年生の間は九九がちょっと苦手な普通の小学生で、二年生に上がった時に現状が大きく変わったのです。
あれです、いじめです。
いじめられた原因は、ありました。けど、わたしは全く悪くありません。語る機会があれば、そこで言えたら嬉しいです。
いじめに先に気が付いたのは家族でした。いじめられてる当事者のわたしは、“いじめられてること”に全く気付いていなかったのです。
主に女子からのいじめ。無視されたり、わざとぶつかられたり、なぜか怒られたり、他にもあったかも知れません。けど自覚がなかった為か、記憶には薄い方です。
「声かけたけど、返事がない。声が小さくて聞こえなかったのかな。次は気を付けよ」「ぶつかっちゃった。ふうちゃんが前見て歩いてなかったからかな」「なんか怒られたけど、なんで怒られたのかな? あ、もうすぐ給食の時間。そっか、お腹空いてて〇〇ちゃんイライラしてたのかな」そんな平和脳なおかげで、まっっったくもっていじめられてもダメージが無かったのです。
今思い出しました。ペンなどを借りパクされても「貸したけど返ってこないな? 返してって言ったのに。いいや、こっち使えば」こんな程度でした。同時に借りパクされた自覚がないため、家族に「〇〇ちゃんにペンを貸したんだけどね、まだ返ってこないんだ。忘れちゃったのかな? ま、いっか」的なことを夕食の時にでもぼやいたのかもしれません。
結果的に母がペンを貸した子の母親へ電話(当時は連絡網が配られ、クラスメイトの電話番号は知ることができました。今は犯罪等に使われてしまうので、連絡網は配布されないと耳にしました)して仲裁に入ってくれた為に、貸したペンが大量に戻ってきました。
え? こんなに貸してたのに気にしてなかったの?
そう母や祖母と叔母が唖然としたそうです。
良い性格してますよね、わたし。
さぞかしいじめ甲斐のないターゲットだったことか。
今思えばこの図太い性格をずーーーーっ保ててたら良かったのにと思います。
ここでひとつ、今になっても変わらないわたしの性格を説明したいと思います。
わたしは相手のことを考える時、自分の価値観でひとつの答えを見つけても、それ以外の答えも模索する癖がありました。
例えば借りパクが分かりやすいかもしれません。
貸したものが返ってこない。返してと催促したのに関わらず。そしたら大方の人は「返してくれない。ひどい!」「奪われた」「盗まれた」と思うのではないでしょうか?
優しく考えたとして、百歩譲っても「忘れられた」とか。しかしわたしの場合は、確かに奪われた、盗まれた、忘れられた、どれも頭にあっても他の理由も考えます。
「もしかして使いすぎて、インクがなくなっちゃって返しにくいのかな」「そういえば〇〇ちゃん、下に妹が居たから、その子に気に入られちゃって返したくても返せないのかな」など、余計なお世話なことまで考える性格をしています。自分では思いつかない理由があるのかもしれない、とそこまで考えてしまいます。
これが後々、わたしはわたしの首を自ら絞めることとなるのです。
こんなわたしだから、先に家族がわたしのいじめに気が付いた理由。それは、我が家の壁にチョークのようなもので「バカ」「ブス」「死ね」(丁寧に「死」はちゃんと漢字)と書かれていたからだそうでした。
家族が気付いた時、急いでそれらは消したそうです。けどわたしは別の日、書き直されていたその現場も目撃してました。なんて思ったか。これも覚えてます。
「近所の悪ガキの仕業かな?」
大人三人に囲まれて成長したので自分のことだと微塵も思わず、軽くマセた頭で気にも止めてませんでした。
けどさすがのわたしでもクラスメイトの女子だけに理不尽な対応を続けられれば、多少は学校に居づらさを感じる事はできたようで、少しずつ学校から逃げるようになりました。
家族も、消しても消して家の壁に書き続けられる悪口に悟っていたのか、わたしが学校に行かなくなっても何も言いませんでした。
振り返れば、それでもわたしは学校に行っておくべきだったのかもしれません。
「学校に行かないから」と、叱られた方がまだマシだったのかもしれない。後になってじわじわと自分を蝕む、そんな出来事が増えてきたのですから。
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