その後

32頁

老人は 椅子から倒れ落ちた

「おじいちゃん」

少年が 老人に駆け寄った


若い娘に付き添われた老夫人が よろめきながら

「坊やのお祖父ちゃんなの?」

少年に 問いかけた


「僕のお祖母ちゃんのお兄ちゃん」

「ホームにも 一緒に来てたわね」

「そばにいてあげなさいって 言われているの」


「そう」 と 老夫人は 少年を見つめた

懐かしそに 愛おしそうに

そして 倒れた老人の傍に依り添った


「奥様 この方 ご存知なのですか?」

「幼馴染なの」

若い娘は 意外な表情を浮かべた


老夫人は 少年の瞳の 遥か向こうを覗き

「本当 そっくりだわ

 同じ灰色の瞳をして」


そして 優しく そっと 老人を 抱き寄せた

「わたしたちは 将来を約束したの

 だけど わたしの親は反対だった」


老夫人は 若い娘に 遠い昔を話して聞かせた

「どうせ 捨てられる って

 お前には 身に余るって」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る