24頁

記憶を探るように

平和だったころの

輝き放つ 思い出を求めて


兵士は 思い出していたに違いない

青年が 淡い恋に抱擁するように

接吻する頬の はにかむ妻の温もり


青年には 未来しかないように

若い夫婦も また 喜びを 待ちわびて

それが 当然であると信じて


全てが 祝福に満ち満ちていた日々

囁くように 促すように

生れるであろうわが子に 呼びかけて


小気味よく揺れる ブランコのように

青年は 何時もよりも 甘く 優しく

兵士を 心地よく 揺すったに違いない


もし 青年が ここで止めておいたら

兵士は 代えがたい幸福な時に酔いしれ

思い出を湛えて 去ったであろうに

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る