◇第51話◇砂の城

 言い分はヒトの数と同じだけあって、そこには正しいも間違いもない。

 其処にはただ、それぞれの心から見た景色が広がっているだけ。

 だから世界は、どれ一つとして同じものではないのだろう。



 甘えるということの境界線。


 助けてと叫んで助けられるとは思っていないが、助けられないとわかっているヒトにそれを叫ぶことは、そのヒトの重荷を余分に増やすことでしかないのだという、そんな当たり前のことさえ、わたしは。



 配分がわからない。

 距離感が、どうしても掴めない。


 痛いという悲鳴は何処からなら、あげてもいいんだろうか。


 これは痛いと苦しいと言ってもいいことなんだろうか。

 それとも、わたしの弱い精神ゆえの我慢の足りなさで、みんな、ちゃんとできているんだろうか。

 きっと、ちゃんとできているんだろうな。


 どうしたら、みんなみたいに、ちゃんとできるんだろう。

 わたしがダメだから砂の城みたいに、つくる端から壊れていってしまうのかな。


 胃が痛い。

 胃が痛いよ。



 子どもたちから言われたコトバ。

 親から言われたコトバ。

 いろいろなヒトからの 

 いろいろなコトバ。


 割れて飛び散った、ちいさなちいさな透明な破片が、心に刺さって抜けないまま沈んでいく。

 息をするたびに苦しい。


 ゴメンナサイ。

 誰が悪いとかじゃないのわかってる。



 生きることを自ら止めることはしない。

 救いを期待してるわけじゃない


 いや


 嘘です。嘘つきました。


 多分、何処かで救いを待ってる。

 そして、そこに逃げ込んでる。


 だから、そこで困惑された時に、とても寂しくなってしまうんだ。

 ゴメン。

 勝手な思い込みが恥ずかしくてね。


 堰き止めていた分、際限が無くなるのがわかるから。


 馬鹿っ話に、すりかえる。

 取繕とりつくろって流す。


 何やってるんだろうね。



 砂の城は、つくる端からサラサラと崩れていく。

 砂でお城をつくったって決して出来上がりはしないのに。

 わたしは、またそれを繰り返す。

 手から砂の粒をこぼしながら。


 だってここには他にお城を作れるものが無いんだもの。



 それはイイワケ。


 だけど真実。

 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


*この頃のこと*


久しぶりに、この昔の日記を読み返しました。


ああ……同じような様なことで、やっぱり苦しんでいて、過去のわたしが今のわたしに重なる。

それでも、其処から現在いままで、こうして生きている。乗り越えられたかはわからないけど、此処まで歩いてきた。


砂の城は出来上がることは無いかもしれない。

でも、わたしは何度崩れても、つくり直していこう。

其処に砂しかないのなら。

その砂で精一杯のものをつくっていこう。


これは強がり。


だけど真実ほんとう

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