◇第16話◇家族模様

 夏だからいいようなものの……と、何回目かの溜息。


 また、末っ子のカンシャクダマ破裂。

 大暴れの挙句、着ていたTシャツもズボンも脱いで、パンツ一丁で狭い廊下に大の字で転がって不貞腐れてる。


 きっかけなんてのは要するに兄弟ケンカの延長。

 聞けば笑っちゃうような小さなこと。

 でも口が達者な上二人に比べて、思うように言葉で言えないところのある末っ子は、そこで導火線に火がつく。

 そして、この導火線が短いときてる。


 こうなるともう、暫く放っておくしかなくなる。

 泣き寝入りするか、少し落ち着くまで。


 さすがに夏とはいえ、板張り廊下でパンツ一丁は風邪でもひいたら……と、わたしは気が気じゃなくなる。

 でも、下手に近づくと、また刺激して逆効果だし。

 落ち着かないまま、気づかれないように様子を伺って、よし寝たなって時に、そーっと近づく。


 完全に寝てるのを確認。

 まつ毛に涙の粒……ほんとにおバカだよ……。


 しかし重い。

 年齢の割には骨太で大きい方だから。

 特に寝てる時に一人で運ぶには既に、お母ちゃんの力をもってしても無理。

 一番上の子にヘルプする。

 半分抱えてもらって布団へ。


 とりあえず布団に末っ子をおろし、手こずりつつ、パジャマ用Tシャツ&ズボンを着せる。


 ふぅ……。


 明日が見えるようだよ。

 そーっとやってきてモジモジ。

 それから、小さな声で「ゴメン」


 それさ……

 あんたのお父ちゃんとおんなじ。

 アノヒトもそうだったっけ、ねぇ……。


 不器用なんだねぇ……。


 不器用だったんだねぇ…………。



 そんな顔されたら 

「仕方ないねぇ……」って

「今度からしないって約束だよ」って

 言うしかできないじゃない……

 わたしは。



 むにゃむにゃ言ってる寝顔にキス。

 クシャクシャの巻き毛(天然)の髪を撫でる。

 寝てる時は天使なのにねぇ。


 わたしも含めて四人、それぞれ一人一人のニンゲン。


 だから同じ屋根の下、ぶつかったり絡まったり、ムズカシイ。


 も〜知らない!!って何度叫んでも

「ゴメン」って言われると、やっぱり腕を広げる。抱きしめる。

 安心したような顔見て、心からイトシイと思う。


 わたしの大切な

 家族。


 ***


 子供たちはそれぞれに難しい年頃。


 それぞれの個性。

 それぞれの人格。

 一人一人が世界でたった一人。


 わたしも一人の人間。


 親と子であると同時に

 人と人。


 だから当たり前だけど、その度、色々と摩擦やすれ違いも起こる。


 未熟なもの同士。

 親も子も。


 その年頃ならではの世界もある。

 コダワリもある。


 思えば、頑なに前髪の長さに拘ってたのを思い出す。

 あの頃のジブン。

 目に入りそうな前髪は、今見ると大変うっとおしい

 その写真の中のわたし。

 それでも、その頃はとにかく、そうじゃなきゃ嫌だったんだよね。



 正直、何度ももう知らない!と思う。

 理解不能!とか思う。

 それでも、また怒りながらも、仕方ないねぇ……と向き合ってる。


 不思議だけど、それだけは、どうしたってそうで。


 これは、こうして親というものになってみて初めて知ったこと。



 人にはそれぞれいろんな道がある。


 それは本当に千差万別。

 比べられるものじゃないと思う。

 それぞれに嬉しいことも悲しいこともある。

 選ばなかった道のことはわからないから、わかるのは、今歩いているこの道のことだけだけど。


 子供がいる人もいれば、子供がいない人もいる。


 親になって知ったことも確かにあるけれど、もし子供のいない人生だったとしても、そこでしかわからないこと、気づくことが、またあっただろうと思う。


 要は、その人が自分のその道をどう生きるかということなんだろうなぁ。。。


 子供たちにも願うのは、人様に迷惑をかけることなく(これは大前提!)自分らしい道を歩いていってくれればいいなと。

 それだけ。

 その後は、それぞれの子供たちが、自分で知って選んでいくことだろうから。



 夜明けに

 寝相の悪い一人一人のお腹に

 タオルケットかけなおしてまわる。


 いつもの習慣(笑)



 寝顔は、みんなまだまだ無邪気。


 いろんなことあるよね。

 これまでもあって、これからもあるだろうけど。


 もう少しまだ一緒に歩いていこう。

 キミ達がオトナになるまで。


 この手をしっかりと握りなおして。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


*この頃のこと*


末っ子は小学生で学校に行きたがらなかった頃&兄弟喧嘩も激しくて。

どうしたものかと頭を悩ます日々。。。

試行錯誤しては振り出しに戻り……なかなかに難しい時期でした。


あのねぇ、ふふふ、「千と千尋の神隠し」の ” 坊 ” みたいな感じだったの( *´艸`)

この子は、わたしのことを「おかあ」って、ずっと呼んでました。

上の二人は普通に「お母さん」なのにね(笑)


今では末っ子、180cm越えで縦に大きくなってます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る