◇第8話◇壊れたラジオの音(次男の退院)

 次男が無事に退院。


 退院が決まって直後、蕁麻疹(薬疹による)が全身に出て退院延期になったりと最後まで心配したけど。

 無事に退院できて本当に良かった。


 最初に、かかりつけ医→総合病院→救急車で大学病院に緊急入院させたときには「正直楽観できません。重症です」と言われて、ものすごくショックを受けたけども。

 乗り切れて良かった。本当に本当に良かった。


 ***


 最近はどうにも気力がなくて

 たとえば数年前なら

 もう少し頑張れたり我慢できたことが

 全然ダメで。


 情けないくらい、踏ん張れない。

 逃げ腰。



 何に対しても

 もうこれ以上、無理って

 諦めて

 手を離しそうになってて。


 身体もきつい。

 あちこちガタがきてるのは、今更だけど。

 ああ……もう本当に若くないのだと、思い知らされてる気がする。


 怖いのは長患いして苦しむこと。

 それだけは嫌。

 痛かったり苦しかったりするのを、少しでも我慢するなんて……もう、できそうにない。

 元々そんな根性とかなかったけど、昔にも増して、駄目。



 毎日が不安と怖いことだらけ。

 なんでこんなに、どんどん景色から色が無くなっていくんだろう。


 人間も元々苦手だけど、年々苦手範囲が狭まる。


 一人が好きというよりも

 対人で気を遣うことには疲れ果てたし

 それで傷つくのも嫌。メンドクサイ。

 身勝手は承知。

 矛盾も沢山。


 本当に、まったくの独りぼっちになりたいわけじゃない。


 だって元々寂しがりだし。

 だから当たり前のように夢も、みた。


 子供の頃、未来の自分が不安だったけど、少なくとも、こんな風に怯えては無かった気がする。


 まだ何かを信じていたから?


 ◆◆◆


 ” 好きやずっとなんて、

 ないことは、

 とっくのむかしから

 知っている。


 だから、わたしは


 毎日、小さなウソばかりついている。”


 ” こどものころから

 夕ぐれを

 ひとりであるくのが

 こわかった。


 だれかに手を

 にぎっていてもらいたかった。”


 ” すきな人を

 忘れてしまったのに


 恋をしているわたしは


 もうだいぶん

 狂っているのかもしれない ”



「パーマネント野ばら」西原理恵子より引用


 ◆◆◆


 またひとつ

 何かを諦めて


 小さく笑って


 壊れたラジオのような

 心の波の音を聴く。


 海にはもう、いけない。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 *この頃のこと*


前回の日記の後、やっと次男が退院して、ホッとして弱音吐きまくってます。

ICU(集中治療室)に入っていた時は、気が気ではありませんでしたから。


西原理恵子さんの「パーマネント野ばら」は大好きな作品です。

心に沁みる言葉が沢山あります。

重なる想いも沢山あります。

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