中学校における道徳教育について

 中学校における道徳教育の目標は、新『中学校学習指導要領』(平成20年3月告示・平成27年3月一部改正)の「総則」に、以下のように示されている。「道徳教育は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、人間としての生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とする」。

 これらの目標をひとつひとつ見ていきたい。道徳科を中心として、学校全体で行う道徳教育は、必ず「教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき」行われなければならない。教育基本法では日本の教育の目標が示され、学校教育法では学校内外における社会的活動や自然体験活動を通して道徳性を養うことが示されている。「人間としての生き方を考え」とあるが、生徒たちは、自己を見つめ、人間としての生き方の考えを深めることになる。「主体的な判断の下に行動する」とは、他者を尊重した上で、自ら考え、適切な判断や考えの下で行動できるということを指す。「自立した人間として他者と共によりよく生きる」とは、自己の価値観を確立し、他者との関係を適切にもてるということを示す。「基盤となる道徳性」とは、中学校で養う道徳性は、人間としてよりよく生きるための、人格の基盤となるものであり、その結果として生徒たちが人生や未来を切り拓くことを期待しているのである。

 さて、中学校における道徳教育の内容については、『中学校学習指導要領』の「総則」第1章第2の8に、以下のように示されている。「道徳科を要として学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の内容は、第3特別の教科道徳の第2に示す内容とする」。つまり、学校における道徳教育の全体の内容がそこに示されているということであり、それは道徳科の内容とも一致するということである。

 その内容は、道徳性を養うという目的を達成するために、4つの視点から4種類に分けられ、内容の文言と共に挙げられている。それらの項目を見ていきたい。「A 主として自分自身に関すること」では[自主、自律、自由と責任][節度、節制][向上心、個性の伸長][希望と勇気、克己と強い意志][真理の探究、創造]、「B 主として人との関わりに関すること」では[思いやり、感謝][礼儀][友情、信頼][相互理解、寛容]、「C 主として集団や社会との関わりに関すること」では[遵法精神、公徳心][公正、公平、社会正義][社会参画、公共の精神][勤労][家族愛、家庭生活の充実][よりよい学校生活、集団生活の充実][郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度][我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度][国際理解、国際貢献]の、「D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」では[生命の尊さ][自然愛護][感動、畏敬の念][よりよく生きる喜び]といった、以上22個の道徳的価値が、内容項目となる。

 このような道徳性を養うために、道徳科を中心として、学校全体で道徳教育を行っていくことになるが、その際には全体計画が重要となってくる。

 道徳科の年間計画に入れ込まなければならない内容は、「基本的把握事項」と「具体的計画事項」に分けられる。前者については、「教育関係法規の規定、時代や社会の要請や課題、教育行政の重点施策」「学校や地域の実態と課題、教職員や保護者の願い」「生徒の実態や発達の段階等」が挙げられる。後者については、「学校の教育目標、道徳教育の重点目標、各学年の重点目標」「道徳科の指導の方針」「各教科、総合的な学習の時間及び特別活動などにおける道徳教育の指導の方針、内容及び時期」「特色ある教育活動や豊かな体験活動における指導との関連」「学級、学校の人間関係、環境の整備や生活全般における指導の方針」「家庭、地域社会、関係機関、小学校・高等学校・特別支援学校等との連携の方針」「道徳教育の推進体制「その他」が挙げられる。これらを工夫して年間計画を作り、積極的に公開し、活用しやすいものにしていく必要がある。

 また、全体計画は、理念だけを書いて終わりではなく、具体的に活用できるものでなければいけない。『解説 総則編』によれば、留意点は6つある。「校長の明確な方針の下に道徳教育推進教師を中心として全教師の協力・指導体制を整える」「道徳教育や道徳科の特質を理解し、教師の意識の高揚を図る」「各学校の特色を生かして重点的な道徳教育が展開できるようにする」「学校の教育活動全体を通じた道徳教育の相互の関連性を明確にする」「家庭や地域社会、学校間交流、関係諸機関などとの連携に努める」「計画の実施及び評価・改善のための体制を確立する」ことである。つまり、道徳教育の全体計画では、体制を整え、すべての教師が協力し、創意工夫する必要があるということである。

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