第10話 魔人と化せ

 まさかまさか、ウッドマン博士の刀は普通の刀ではなかった。


「この刀は私が最前線で戦っていた際、魔人を無数に狩ったことのある最強の武器」


「盾以外にも変形するのか?」


「ああ。だからな」


 ウッドマン博士は足を踏み込み、僕の正面から刀を振るう。だが、この距離があれば刀は届かな……


「形状変化:槍」


 ウッドマン博士が握る刀は形状を変化させ、刀よりも長い槍に形を変えた。

 長い棒の先についた刃が、僕の右腕をかする。僕は尻尾で槍を弾くが、ウッドマン博士は飛んだ槍をすぐに掴み、形状を変化させて僕に斬りかかる。

 僕も負けじと尻尾を振るう。が、尻尾は呆気なく斬り飛んだ。


「次は……ノコギリか」


 ウッドマン博士が握っていた槍は、ノコギリへと形状を変化させていた。


「木を斬るにはノコギリが最適だ」


 ノコギリと木では相性が悪い。

 たった一振りで僕の尻尾では木っ端微塵に斬り刻まれてしまう。


「神野王。やはりお前にはその力は扱いきれぬか?」


「そんなことないさ」


「既に限界を迎えているように見えるぞ」


「まだ……まだ余裕だ」


 そういえば、僕はどうしてあの男に敗れたんだっけ?

 確か、僕が尻尾であの男の腹を突こうとした瞬間、三方向から攻撃が来たような、そんな感覚を味わった気がする。


「そういうことか」


「どうした?何か閃いたのか?」


「ああ。僕は負けず嫌いでね、だから、本気を見せてやるよ」


 僕は尻尾が生えている腰に力を込める。すると、腰から生えてきた尻尾は一本から二本へと変わる。


「次は僕の攻撃だ」


 僕は二本の尻尾を生やし、ウッドマン博士へと飛び込む。ウッドマン博士はノコギリを構え、僕の攻撃を待ち構えている。


 ーー己とは何だ?戦いとは何だ?敗北とは何だ?その意味が分かるようになれば、お前は一人前だ。


 お爺ちゃん。僕は、強くなるよ。


「うぉおおおおおおおおお」


「かかってこい」


 僕はウッドマン博士の間合いに入る寸前で飛び、二本の尻尾でウッドマン博士を叩く。が、片方の尻尾はノコギリによって斬られた。だが、もう片方の尻尾はまだ動く。

 この間合いでは、ウッドマン博士は僕に傷一つ負わせられない。


「僕の勝ちだ。ウッドマン博士」


「形状変化:銃」


「遠距離!?」


 ウッドマン博士の握るノコギリは、形状を変えて銃へと変化した。

 僕は動揺したが、ここで一撃を与えなければ、この先一生与えられない。


「負けて、たまるかあああああああああ」


 僕は尻尾に力を込め、ウッドマン博士へと振るう。

 対して、ウッドマン博士は僕の額へと銃弾を放った。


 僕は頭部に痺れを感じ、地面に倒れ込んだ。

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