第25話 目

先日、近くのマンションから人が飛び降りた。

私は、それを間近で目撃してしまった。


良く晴れた月曜日の午後だった。

学校帰りに、ふと上を見上げると人がベランダの柵を越えて立っていた。


ふわっと足を浮かせるように飛び降りた。

すぐに、頭が下になり私の目の前の植木の中に落ちたのだった。


落ちきる瞬間、目が合った。

自殺した人は、ハッキリ私を見ていた。

皆は、そんな馬鹿なと信じてくれない。


そんなある日、同じ道を歩いていた。

何故かだか、マンションのあの部屋が気になった。

同じ場所で見上げて見た。

再び柵を越えた人?真っ黒い影が立っていた。

そして、同じように飛び降り私と目が合うのだ。


また次の日も同じ事が繰り返された。

彼が何かを訴えたいのか、私にはわからない。

気持ちの良いものではないので、いつしかその道を通るのをやめた。


しかし、私を見る目だけは忘れられない。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る