m14「寒い4月に思い出す話」


 こんばんは。いやもう朝ですね。今夜も眠らない、第14回。4月半ばなのにこの寒さ! 寒さには耐性がある方ですが、この寒暖差はなかなかキツいものがありますよね。もう若くないことを実感する薮坂です。


 さて、最近サボりがちだったこの散文シリーズですが、なんかいいネタはないものかなぁと考える日々であります。

 新年度も始まって半ヶ月。私の立ち位置は幸か不幸か前年度から1ミリも動いてないので、なんのネタもないんですよねー。

 まぁ、お仕事があるだけ幸せというもの。失くしてからその大切さに気がつくという間抜けなことをしないためにも、クビにならないように頑張ろうと思ってます(でもこの仕事は大嫌い)。


 さて私、前にもどこかで書いたと思うのですが、今の仕事を始める前はカフェの店員だったのですよ。前の仕事は結構楽しくて、自分にも合ってて8年くらい続けてました。

 もともとコーヒーが好きでしたし、凶悪なツラの割には人当たりがいい(ギャップでそう見えるだけ)との評価を受けており、自分でも「コレ天職かなー」なんて思ってたんですよ。


 で、何故その天職(だと錯覚した)カフェの仕事をやめたのかってハナシなんですけどね。当時、私はその店の副責任者でして。いわゆる契約社員だったんですよ。当時は社員に比べて本当にやっすいお給料で働いてたんですけど(ボーナスなし!)、人に感謝して貰えたり、私の作るビバレッジが好きだと仰って、わざわざ私を名指しして作ってくれっていう常連さんがいてくれたりして、なかなかに充実した日々を送っていました。


 しかし。バイトから始めて契約社員になって、そして年数を追うごとに。「これでいいのか?」と自問するようになったのです。

 どんどん若いバイトが入ってきて、社員さんも自分より若い人が来たりして、そしてなかなか正社員の登用にも受からず、悶々とした日々を過ごしていました。


 年に二度、店長よりも偉い人と面談する機会があったのですが、その面談でもですね、偉い人から「薮坂くんはなかなか正社員受からないよねー。なんでかな。やっぱり会社への愛が足りてないのかな?」って言われる始末。


 なんだよ会社への愛って。むしろ会社は契約社員を愛してくれてんのか? 正社員と同じ仕事をして、むしろそれよりも多い残業して、すぐサボる店長よりよっぽど仕事してるのに、年収は正社員より同然に少ない。

 当時付き合ってた彼女(のちに妻にジョブチェンジ)は看護師で、これじゃ結婚できないねーなんて寂しそうに言われる始末で。こりゃそろそろやべぇな、30歳まであと少しだしなーって思った27歳の春だったんですね。


 で、決定機がやってくるのです。正社員登用の試験、珍しく最終まで進んで。これでダメならこの仕事は向いてなかったと思おうと望んだ最後の面接。そこで偉い人たちから来た質問は、「正社員と契約社員の決定的な違いは?」というものでした。


 きっと「責任の多寡」とか答えればよかったと思うんですけど、当時尖ってた私は、「違いは給料だ」とか言っちゃったんですよね。正社員と契約社員は、責任が全然違います。いやこれは私がしてた某カフェチェーンにおいての話で、全てがこれに当てはまる訳ではありませんよ。

 で、いろいろ積もってた私は、お偉方に対していろいろ言っちゃったんですよ。以前、会社への愛が足りてないと言われたが、あなた方はバイトや契約社員を愛してくれてるのか。平等な目線で評価しているのか。自分だけが仕事をしているとは言わないが、ウチの店長の働きぶりを知っての発言なのか、とか。

 あれやこれや。もう止まらない。きっとあの時の自分は、前の仕事をそこで辞めようと思ってたのでしょうね。


 で、試験には同然落ちました。当たり前です。代わりはいくらでもいるのです。それが組織です。

 そのことが引き鉄になって、後に別件で店長とやり合うことになり(長くなるので端折りますが)、結果、その戦いに負けた私はその会社を去ることにしたのです。


 いやぁ、青いですねー。今思い返せばなんであんなに尖ってたのだろうと。勝てる見込みなんてないのに何故、刃向かったのかと。好きだった仕事辞めてまで、噛み付く価値はあったのかと。冷静に考えてみれば、アホなことしたなーなんて思います。


 私がその店を辞める時、当時配属されてた店のバイトの子たちが、涙ながらに私を見送ってくれたのを思い出します。ちょっと遅れた青春時代、でしたねー。その時もう28歳目前だったんですけどね。


 で、そのあと就職活動をして。たまたま今の会社に拾ってもらって、今の薮坂がいます。カフェの仕事とは真逆みたいな仕事ですし楽しくないですけど、曲がりなりにも結婚できるまでにはなりました。

 今でも天職は、あの時のカフェの仕事だと思ってるのですが、人間、望んだ仕事にはなかなか就けません。一度でも就いたことがあるとしたら、それはとても幸せなことなのかも知れませんね。


 前職を辞めた春は、今日みたいに寒い春でした。それをなんとなく思い出したという次第です。



 さて、このハナシのオチですけど。

 そのカフェチェーン、私が辞めて2年ほど経ったあと、ある大々的なニュースが流れることになりました。

 ニュースの見出しはコレ。実際にテレビでも流れてましたよ。



『某カフェチェーン、全ての契約社員を正社員に登用。出店拡大のため、即戦力の契約社員を正社員にすることで待遇を改善し、従業員のやる気を高める考え』



 ……まじかよ! 遅ぇんだよ!!




 このニュースを受けて、今の会社で皆からゲラゲラ笑われました。どこまでもネタまみれの人生、薮坂です。笑


 ではまた。深夜にお会いできれば幸いです。


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