灰の街

黎扇

プロローグ

 おや、君もここに来たか。


 ここにはよく旅人が訪れる。ある人は不老不死を求めて。またある人は魔法の根源を求めた。まあ彼らの最後は知らないがね。


 君が何を求めてここにいるか分からないが、ここにあるのは風土病か、古くから伝わる伝説の秘宝だけだ。


 もし前者を望むのであれば、今すぐ立ち去ることだ。これ以上感染者を増やしたくないのでね。


 もし後者を望むのであれば、洗礼をうけるがいい。それがこの街の慣わしの一つだ。


 なるほど、君は後者を選ぶか。よろしい。では左手の甲を出してくれ。少し痛むが、すぐに終わる。


 洗礼は終わりだ。君の左手の甲に刻んでもらったものは、危険なこの街で君の助けになるだろうよ。


 そして君、ようこそ。この街にいる間は、ゆっくり楽しんでいってくれ。


 病と腐敗の街、ラムードをね。

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