第3話 _吾輩は生徒会長である。」

篠宮の講釈が終わり、少し静寂が続いた後、彼女は普通に席に着いた。

「あと8人はどんな人がいいかしら♪」

「そうだね君の面倒を見てくれる人が最低でも8人必要だね」

「あら馬鹿にしないでくれるかしら、自分の面倒は自分で見れるわ♪」

昨日、一昨日の出来事は記憶から消去されてるらしい。

「戦力は多いに越したことはないから即戦力として演劇部、剣道部系は必須だな。」

「そうね、あと遠距離で狙撃できる弓道部とかもありね♪」

「個人的には放送部も欲しいところだけど、今言った中で目ぼしい知り合いいるの?」

彼女は下を見た。どうやらいないようだ。それもそのはず、こんな真っ当じゃない我々に寄って来る人なんて相当な変人だろう。。。彼女は仏頂面で言った。

「あなたの方こそ戦力になりそうな人はいるのかしら!」

彼女も知っているくせに意地が悪いなー。そう思ってた矢先にある事を思い出した。

「残念ながらそもそも知り合いがいないから紹介できないよ。ただ面白そうな人達なら知ってるけど」

ヤンは企み顔で語った。

「ふーん、どんな人達?」

「正体不明で存在してるかも定かではないけど、それぞれのエピソードが伝説になってこの学校の七不思議になってる人達だよ。」

「ふーん、おもしろそうね♪もしかしたら覚醒した人たちかもね♪」

「カクセイ?」

「勝手に私が言ってるだけなんだけど、覚醒っていうのは現実世界リアルでは才能を開花しなかった人たちがこの戦学で才能を開花させる現象よ♪」

「なんで現実世界じゃなくて戦争で才能を開花するんだよ?」

「今の現実世界は平和だから野球選手や可愛いだけのアイドルが覇権を握っているけど、世が世なら戦争の時代において全く役に立たない才能よ。でも平和とは真逆の戦争の時代にあなたのような才能が開花するなんて珍しい話じゃ無いでしょ。例えばヒトラーとかシモヘイヘなんて凡庸な育ちだけど生きるか死ぬかの時代だからこそ才能が開花した訳で逆にあの人達が現実世界に生まれ変わってもあの才能は開花しなかったと思うわ。」

「いや、これはゲームだからそんな必死に生きようなんて…」自嘲気味で答えると彼女は言う

「昔、結構話題になったでしょ。一回死んだら哲学的ゾンビになるって話。」


知ってる。まとめサイトとかで見たけど、誰かが面白がってどこかのスレッドに書き込んだデマらしいけど、今でも誰もそれを証明することも論破することもできないまま忘れ去られた説がある。でもいろんな場面で見たけど同じグループのメンバーが復活リスポーンする時に突然人格が変わった雰囲気なんてないし、いつもと変わらない感じだから哲学的ゾンビなんて話しはそんなに信じていない。

「根拠のない噂でしょ?」

そう言うと彼女は神妙な面持ちで言った。

「絶対哲学的ゾンビにならないとは言い切れないわ。実際、哲学的ゾンビを否定できる証拠がない以上下手に死なない方がいいわ。」

続けて彼女は言った。

「ここから先は私の仮説なんだけど哲学的ゾンビと覚醒、そして才能は密接に関係があると思うの」

ヤンは呆れながら言った。

「ぶっ飛んだ仮説ですね。」

「死ぬ直前に見る走馬灯や火事場の馬鹿力、後天的サヴァン症候群どれも死を直面した時才能を開花させる人は過去に何人もいるわ。哲学的ゾンビも一緒よ。自我がない状態って生きていると思う?自己顕示欲や支配欲なんて皆無のあなたにも無意識にある生存本能が戦術眼という才能を呼び起こしたと思うの。」

「じゃあ君も死に直面したことがあるの?」

そう尋ねると彼女は言った。

「実験で何度も死にかけたことあるわよ♪そのおかげでここまでの頭脳を得たんだから♪」

君の才能は九死に一生の体験から得たものじゃなくて、きっと生まれ持った才能で最初から狂ってたに違いないなこの人。。。そして彼女は言った。

「多分、その七不思議の人たちも才能を開花させた人たちだから一緒に探すわよ♪」

意気揚々とはしゃいでいる彼女を尻目にヤンは言いづらそうに言った。

「……自分で言っておいてなんだけど、その人たちが存在してるか分からない眉唾もので、結構、話に尾ひれが付け足されすぎたり、見聞きした人の勘違いの可能性が高いって話なんだよ。」

彼女はまだ意気揚々としていた。

「まあ、煙のないところに火は立たないって言うし、居たら仲間にする方向で行きましょ♪」

「かなりポジティブだな。」

「科学者にとって考え方が否定的だと閃きは訪れないからね♪ポジティブは大事よ♪」

結論、自分達の直近の目標はこの学校の七不思議の人たちを仲間にして、平尾校を攻略することになった。




それから翌朝、生徒会から次の作戦についての通知が来ていた。p.m.8:00鴻巣山の南西側の展望台から約30m東側に電波塔があり、その電波塔付近で待機とのことだった。今回届いた作戦と布陣を見てすぐに違和感を覚えた。その後じっくりマップと照らし合わせて布陣を見たが、全く見当がつかなかった。仕方ないまた図書館行って調べよう。そうして図書館に向かう途中篠宮から通知が来た。

『なんで班会議に参加しないの?』

班会議……?、あーまたハブられたんだな。もう篠宮もなんで連絡したんだ。いや多分確信犯だな……

『班会議なんて聞いてないよ。』

『そうなの。じゃあ今から参加しなよ。下にログインID貼っておくから。』

いやいや篠宮はともかく他のメンバーから歓迎されてないなら行く理由がないな。とりあえず篠宮の通知を無視して図書館に向かおうとした時、班長から通知が来た。

『校舎屋上急いで来い』

多分篠宮が班長にけしかけたんだろう。憂鬱だ。。。




「遅い、3分も遅刻だぞ」

そう言ったFF15の主人公みたいなキャラデザをした人が我々の班長ノクティスだ。その隣に篠宮と他3人もFF15の主人公の仲間のキャラデザしたメンバーだ。ちなみに名前も引用してるみたいらしい。FF15プレイしたことがないから分からないけど…

「急に来いって言うからこっちも急いで来たよ。それで用件は何?」

「今回の作戦、前線より少し後方に配置されたから手柄が立てん。前線に出るからお前もついて来い。」

嫌な予感はしていたが、おそらくそんな用件かもなっと思っていたら当たっていた。

「生徒会から命令だから、それに背いたら隊立違反だよ。あと君には朗報かもしれないけど、もしかしたらだけど自分達の部隊が最前線になるかもしれないよ。」

「え?なんで!」とプロンプト君はオーバーリアクションで反応した。

「今回の布陣が全体的に配置が特殊だから、もしかしたら何か意図があってこういう展開にしたかもしれない。いつもだったら基本に忠実な戦線を組むんだけど、たまに今回のような意図が見えない陣形で相手が作戦にハマることがよくあるんだよ。」

「だったら毎回特殊な陣形組めばいいじゃないか!」

みんなが思うような疑問をグラディオラス君は言ってくれたので回答した。

「多分、何かしらの条件を満たさないと上手くハマらないと思うんだ。もしかするとだけど、七不思議の一人、預言者ギフトマンが絡んでると思うんだ」

預言者ギフトマン?」

今日一度も話さなかった篠宮が反応した。

「そう、噂なんだけど、生徒会に敵の攻撃を予言して、それで対応してるって噂なんだけど、今回もそのパターンのような気がする。」

「そんな噂でこっちが前線になるのか?ならなかったらパーティーから外してやるからな。」

最近の若者はゲームにここまで血気盛んで疲れないのかなって思う。。。そもそも野良の僕が一人でやるのが性に合ってるし、ここのパーティーなんてこっちから願い下げだけど、校則で必ず班行動になっているから仕方なく組んでいる。まあ校則によって1ヶ月に1回席替えがあり、班は最低でも2人で最大12人まで組めるという仕組み。仲間内でやるのはさぞかし楽しいだろうが、野良としてはこのシステムはやめてほしい。。。

ノクティスに脅された自分の後ろに、篠宮が近づいて来た。

「ねっ!その預言者ギフトマンって人に興味が湧いたから実際に会えないかしら♪」

みんなが聞こえないボリュームで話した。

「いや、正体不明って昨日言ったでしょ。誰もその人のこと分からないんだよ。でもまあ、生徒会に指示してるって聞いたことがあるから、おそらく生徒会長あたりが知ってそうだけど」

「おいヤン!何こそこそ話ししてんだ。そもそも自分の立場分かってんのか。」

ノクティスが怪訝そうな顔でこちらを見ている。もうこうなるから嫌になる。

「また後で話そう♪」

そう言って彼女はログアウトした。不快そうなノクティスは舌打ちをし、他の4人もログアウトして僕だけが残った。はぁ…早く席替えしたい…

そう思った矢先通知が来た。

『理科室に来て』

彼女にはきっと自分中心に世界が回ってると思ってる。だが自分自身愚かだと自覚した上で巻き込まれに行った。


理科室に着くと、中で科学部がいろいろアニメやドラマで見たことがあるようなテンプレみたいな実験をしていた。その中に彼女も実験していた。彼女は僕に気付いて空いてる席に案内して座った。

「何の実験してるの?」

「分子間力の実験よ♪」

「ゲンシカンリョク?」

「オツムが足りないヤンに簡単に説明するとヤモリの足に備わってる物体に引っ付く力よ。それを軍事転用してる最中なの♪」

「あっ、それとこの間頼まれてた煙玉作っておいたわよ。あと特別にこの煙玉にオプションも付けといたわよ♪」

余計なお世話である。ただ理科室は来たことなかったからちょっとワクワクするなー。そう感心してると周りにいた化学部は自分達を見てひそひそ話してるのに気づいた。

「ねえ場所変えないか?」

「別にいいでしょう。特に長くなるような話じゃないから。」

うーん、そういう問題じゃないんだけどな……

「ねえ、預言者ギフトマンに会いたいから今から生徒会長に会って預言者ギフトマンを会わせてもらうよう交渉しよう♪あわよくば仲間になってもらおう♪」

「正体不明で信用できるの?」

「信用できるかどうかは会ってみないことには分からないけど、その預言の力が本物であるなら私たちの天下統一に必須の力ね。ぜひ仲間にしましょう♪」

相変わらず、無茶苦茶だな。

「あと七不思議ってほかどんな人たちがいるの?」

「いま分かってるのは預言者ギフトマン狩人ハンター魔法使いウィザード殺人鬼ジョーカー幽霊部員ゴースト狂戦士バーサーカーだよ。」

「ん?あと1人足りないんじゃない?」

ヤンは困った顔で言った。

「あと1人に関しては分からないこと自体が七不思議になってるみたい笑」

「なにその取ってつけたような下らない設定

!」

篠宮は呆れたような様子で続けて言った。

「まっ、とりあえずその預言者ギフトマンに会うためにも、まず生徒会長に会うためにはどうしたらいいのかしら?」

「うーん、生徒会室に行けば会えそうな気がするけど」

「それじゃあ善は急げ。行きましょう」

「急がば回れ!アポ取った方が確実なんじゃないか」

「どうせ私達と同じ暇人でしょ?」

やれやれ、戦争が始まるのに呑気に生徒会室にいるわけないと思うが……

「ちなみに生徒会長はどんな人なのかしら」

「さあ、会ったことないから知らないけど、あの人が副会長に就任してからほとんど戦争が起きてないんだよね。」

「それも預言の能力だとしたらかなり影響力あるわね。」

彼女はそう言っていたが、自分は一抹の疑問があった…生徒会長も才能を開花させた一人かもしれない。

pm.18:00生徒会室に着いた。そこの扉を開けると一人の男が机に腰掛け、そして口を開いた。

「どうも—

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