第19話 生は嫌よ!

十九生は嫌よ!



「シュウ! 起きろーー!」


ゼクサスの大声で、目が覚める。

覚めてしまった。と、言った方が適切かな。


「シュウ大丈夫〜?」


ハーツが首をかしげながら言う。


「え? 別に何でもないよ。おはようハーツ、ゼクサス」


本当は、さっきまで見てた花畑にいたい。心が、体があの場所に行きたくて、苦しくて堪らない。


「いやいや、大丈夫じゃねぇだろ。 シュウ、お前泣いてるぞ」


ゼクサスに言われて初めて、俺の頬を涙が流れているのに気がついた。


「あっ、オイラ分かった。怖い夢見て泣いちゃったんだ〜」


ハーツがおちょくってくる。いつもなら俺がハーツに怒って鬼ごっこになるのだが、今日は違った。


本当に夢なのか? 花畑での、あの出来事が夢だとはとても思えない。


「えっ? 図星だった? ごめんね」


何か深刻なことがあったと察したのか、ハーツは、おちょくった事を謝罪をする。


「謝んなよ気持ち悪ぃ。それより、朝飯食おぜ」


俺達男子チームは女子部屋へ行き、ヒナとローズを連れて朝食を食べに食堂へ向かう。


それにしてもさっきのは本当に夢だったのだろうか、いや、きっと違う。あの時感じた、表しようのない気持ち、あれは間違いなく、本物の感情だった。それに、あの場所、あの木を俺は間違いなく知っている。


なんでこんなに気持ちが焦るんだ?


「・・・・・・分かると良いね。その人が誰か」


ヒナが、心に寄り添うように言ってくれたが、


「ただの夢だよ」


俺は笑って誤魔化しかた。ヒナには誤魔化しがきかないことを承知の上で。


「うひょぉぉ! 美味そうだ!」


「嘘だぁぁぁ! 生魚じゃねぇーか!」


豪華な魚料理にゼクサスは目を輝かせる。その横で、俺は生魚に絶望している。なぜなら、生魚嫌いだからだ。


諸君のほとんどは寿司とか大好きだろう。ということは、生魚が好きということだ。なんで生魚嫌いなんだよ、とか言いたいと思うが、俺はあの血なまぐさい生魚が食えねぇんだよ! 仕方ねぇだろ!


そうだよ、俺が回転寿司に行っても、かっぱ巻きとか納豆巻き、玉子しか食べてない系の奴の一人だよ!


俺が、自分が食べれそうなものを探していて、大事件に気が付く。


「おいーー! 魚料理なのになんで焼き魚ないんですかぁ! 唯一許せる魚料理すら無いというのかぁぁぁ!」


諸君、考えてもみたまえ。ホテルやレストランに行って魚料理が出たとする。その料理の一品には焼き魚系の料理があるはずだ。

もしや、

この世界の人々は魚を焼くという行為をしないのか?

俺がそんな事を考えていたら、


「またシュウが諸君とか言ってるし。変なの〜」


くっ、ハートが痛い。

厨二病って言われてるみたいな気分になるぜ。


「ヒナよ、いちいち言わないでおくれ」


俺達が食事を終えようとした時、



「すみません。少しお話しても良いでしょうか?」



男の低い声が俺の後ろで響いた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る