ムサシノジェネシス

なかならびたろう

プロローグ

 所沢と多摩西部の間にある武蔵野の丘陵には、不思議な現象がある。多摩地域に埼玉の地方テレビ局の電波が届かないのは、武蔵野丘陵を挟むからと言われている。また、南から来る雨雲は武蔵野丘陵で遮られ、埼玉は晴れが多い、とも言われている。


 武蔵野の台地に住む多くの人は、このさほど標高も高くない特別に見えない丘陵が、さほど不思議な力を持っているとは感じずに、日々を暮らしている。


 そんな武蔵野の丘陵について、不思議なわらべ歌が存在するのをご存知であろうか。


 ひ みず ひ みず くるくる

 えんえん みんなで ないてたら 

 おおきな むしが すわった

 ひ みず ひ みず わかれた


 多くの人は恐らく、意味も分からず口ずさんでいただろう。やがて、このわらべ歌を口ずさむ人も廃れていった。ある一家を除いては。


 この一家は、武蔵野の丘陵のふもとで、ひっそりと暮らしている。だが、その一家の歴史は古く、古代からこの地に暮らしてきた。そして代々、このわらべ歌の意味が受け継がれてきた。


 実はわらべ歌の意味は、この一家以外に口外されることは無かった。しかし、この一家も跡取りが途絶えてしまい、現在ご存命の方も高齢になってしまった。そこで今回、後世に残すため、身元を明かさないことを条件に、特別に話して頂いた。

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