(三)‐22

 その後、気密ブロックに戻ったシッコが、チッチの命綱を引っ張って無事に彼女を回収した。

「チッチ、君がステーションから遠ざかりつつあるのを見て、俺は失禁するかと思ったよ」

ジョージがインカムに向かって言った。

「俺もオシッコ漏れそうになったよ」

シッコも笑いながら言った。

「何言ってるのよ、あなたたちがいたんだから、何の心配もしていなかったわ」

「ウソつけ」

「……何でわかるのよ。そうよ、もう戻れないかも、って恐怖を感じたわ。でもあなたがケーブルを引っ張ってくれたから、すぐに大丈夫だと思い直したけどね」

 その後、宇宙服のままなのかシッコとチッチが抱き合って無事な帰還を喜びあっていたのであろう、インカムにガサガサとノイズが入った。


(続く)

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